代表ブログ

わせだマンのよりみち日記

2021.03.31

人々が動き出すいま、ミュージアムが考えるべきこと

#私的考察

今月21日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた2回目の緊急事態宣言が解除されました。ワクチンへの期待と第4波の懸念が交錯するさなかですが、元銀行員としての経験に照らしてみると、この後の経済の行方についても大いに気がかりなところ。というのも、社会が大きく揺れ動いた時、どれほど厳しい状況に直面しているのかについては、事後に明らかになるのが常だからです。

日々報道されている観光業や飲食業などの窮状には心が痛むばかりですが、本日3月31日は多くの企業が決算を迎えます。来年度の法人税収の落ち込みがどの程度の規模になるのか、根拠となる数字がこの後順次出そろい始めることになります。また、今年度はコロナ関連の支援策ですでに莫大な金額が使われており、公共部門の収支のバランスはかつてないほど崩れるはずですから、国や地方公共団体の財政が「史上稀に見るほどの悪化」となってもまったく不思議はありません。消費税・所得税・法人税とあらゆる税収がダウンすれば、支出を抑える方向へと舵を切らざるを得なくなります。1年後、2年後に公共事業に携わる産業が改めてダメージを受け、それが周辺分野へと拡散していくことになれば、もちろんミュージアムも無風では済まないことでしょう。

いま多くの中小企業が経営に頭を悩ませていますが、企業にとって最悪の事態と言えば、やはり倒産です。その後の道筋にはいくつかの種類がありますが、大まかに言えば、会社がなくなってしまうのが清算、経営陣を一新して債権者の債権放棄のもとで出直すのが会社更生、現経営陣を残しながら債権放棄を受けて再出発を図るのが民事再生となります。事業が立ち行かなくなってしまった企業にとっては、多くの場合、民事再生法の適用を受けるのが最も穏便な生き残り方となるのですが、申立の可否を決めるのは裁判所。では、その判断基準はどこにあるのでしょうか。

経営改善への姿勢や再建計画の実現性などさまざまな要素がありますが、そのひとつに「その会社及び経営陣を必要としている人々がどのくらいいるのか」という視点があります。資金の問題がクリアになりさえすれば、引き続き顧客と良好な関係を築き、社会に役立つ存在であり続けられる……と判断されれば、事業継続の道を模索することも可能となるわけです。

残念なことに、これからの日本経済は、経験したことのない嵐の中に突入することになる公算が大きいと思います。地方公共団体の予算も厳しい見直しに晒され、厳しい局面を迎えるミュージアムも出てくるでしょう。考えたくはありませんが、場合によっては存廃の議論が生じる事態も起こり得ます。

民事再生を申請する中小企業の再生支援では、地域社会及び経済とのつながりが判断に影響することもあります。公的施設であるミュージアムは、一般企業以上に地域への貢献度が問われるもの。ひとりでも多くのファンを作ることはミュージアム運営における最大の課題のひとつですが、今後はさらにクローズアップされることになるかもしれません。

では、どうやってファンを作るのか。緊急事態宣言が解除され、人々が動き出す今こそ真剣に考えたいものです。