ミュージアムIT ケーススタディ

ミュージアムレポート


提供機関 | 公益財団法人東京動物園協会
URL  | https://www.tokyo-zoo.net/event/designyare/
構築方式 | I.B.MUSEUM SaaS 機能


特別展のためのWebサイト

右の画像は、JR「吉祥寺」駅に近い井の頭恩賜公園の一角に佇む都立動物園、井の頭自然文化園の特別展を紹介する期間限定の特設サイトです。パンフレットやポスター、解説サインをはじめ、動物園にはたくさんの配布物や展示物がありますが、それらはいずれも動物の魅力を伝え、引き立たせるために工夫を凝らしたデザインで制作されます。この特別展では、4つの都立動物園・水族園(上野動物園・多摩動物公園・葛西臨海水族園・井の頭自然文化園)でのデザインワークにスポットを当て、4園の過去の制作物のほか作業用のデスクや試作品、デザイナーが参考にした図書などを展示するという試みとなっています。

サイトに描かれた動物たちの仕事場は、通称「デザニャーレ」と呼ばれる未来のデザイン室…という設定。この特別展は、ふだんホームページで展開している動物たちの凛々しさや愛らしさの紹介とはちょっと視点を変えて、それを伝える人々の奮闘の跡を紹介する展覧会なのです。

その様子はVRコンテンツ化されていて、下のURLから閲覧可能。一般的なWebブラウザ上でも「館内を歩き回る」ことが可能となっています。
https://my.matterport.com/show/?m=oKJej5kqCQM

 

 

デザインアーカイブは館内資料としても最適

さて、デザニャーレのサイトでは、上記のVRコンテンツのほかインスタグラムへのリンクとデジタルアーカイブ(MAPPSアーカイブと書かれています)へのリンクボタンが設置されています。クリックするとPICK UP5点の資料が表示されますが、デジタルアーカイブ全体では572点のデザイン資料を公開。ポスターやチラシ、ワークシート・冊子やはがきといった紙の印刷物から、ノベルティグッズやバッジ、各種パネルや園内装飾、各種教材、ギフト商品、そして外部に提供した作品まで、ひとことでデザインと言ってもジャンルは極めて多岐にわたります。

特別展で展示されているものを含む資料を眺めていると、動物園や水族園にどう興味を持ってもらうかという課題に対して膨大なアイデアを捻出し、採用されてきたことがよく伝わってきます。ポスターやチラシはとにかく分かりやすく、インパクトを強く、親しみやすく。また、ノベルティやギフトなどのグッズ類では、団扇やトートバッグといった形態をさらに楽しく彩ろうとする工夫の数々が偲ばれます。

最後にもうひとつ。こうしたデザイン関係のアーカイブは外部の方々にも楽しんでもらえますが、施設内のクリエイティブワークの参考資料としても非常に役立ちます。同種のものを制作する際は、すでに使用済みのネタの確認に、あるいは新たなアイデアを案出するヒントにも使えますし、ビジュアルアイデンティティの理解や後進の指導にも活用できます。ミュージアムはもちろん民間企業の広報宣伝部署でも参考にできる、実用的な側面も持つデザインアーカイブです。