ミュージアムリサーチャー

ミュージアムレポート

「八戸三社大祭」は、300年近い歴史を持つお祭りです。青森と言えば「ねぶた祭り」を思い浮かべる人が多いかと思いますが、情熱と迫力ではこちらも引けを取りません。「三社大祭デジタルアーカイブ」の構築をお手伝いした立場としては、ぜひ本物のお祭りを見ておかねば、ということで行ってきました。

三社大祭の山車は、とにかく豪華絢爛です。7月31日の前夜祭では、街中に設置された山車がライトアップされ、まばゆいくらいの華やかさでした。翌日の「お通り」では、神明宮・龗(おがみ)神社・新羅神社の三神社の神輿の行列と各町内で製作した山車が市内を練り歩きます。山車は全部で27台。武者物、民話、歌舞伎、縁起物などを題材に、この日のために数か月も前から各町内で準備してきたものです。「となり町に負けてなるものか」と沿道の地元の人の声援に力が入るのも納得です。

私の席の周りには、「吹上」地区の方々が多かったようです。山車が近づいてくると「ふきあげー!」と大声援が聞こえ、圧倒されました。
ちなみに、今年は118万人もの人出だったとか。前夜祭とお通りの2日間の見学は、本当によい経験になりました。
これに先立つこと約半年。「八戸三社大祭デジタルアーカイブ」というウェブサイトがオープンしました。写真を中心に、三社大祭にまつわる資料12,000件が公開されています。

時代から、山車組から、行列絵図からといったさまざまな検索方法がありますが、試しに「山車組から検索」で「吹上山車組」を検索してみると、昭和5年の「優勝旗」や昭和10年の山車の雄姿が出てきます。これこそが、地元の歴史の誇り。デジタルアーカイブの本質を見たような気がします。

また、今年2月21日には、「八戸三社大祭アーカイブシステム公開に向けて 地域活性と三社大祭」というシンポジウムが開かれました。データベースシステムのお披露目にしては珍しいくらいほどの熱気だったのですが、半年後に実際のお祭りを体験してみると、その理由がよく分かりました。人生の一部を捧げるほどの思いを抱えて参加される方、先祖代々山車づくりに関わっておられる方。こうした皆さんが、日本が誇る伝統を守り続けておられるのです。データベースは、その記録を担うツールですので、熱意をお持ちになるのも当然です。

八戸三社大祭は、ユネスコの無形文化遺産への登録されました。今後とも、できる限り応援していきたいものです。


(URL)
八戸三社大祭デジタルアーカイブ
www.hachinohe-bunkaisan.jp/sansha/