- vol.152取材年月:2019年9月新潟県立歴史博物館
データ登録数・公開数は、博物館の評価基準のひとつ。
地域の方々へのサービスでも優先度が高いはずです。学芸課課長 浅井 勝利 さん
-I.B.MUSEUM SaaSのご導入前は、独自に作り込んだシステムをご利用だったとか。まずは当時のお話からお聞かせいただけますでしょうか。
浅井さん:当館は準備担当部署の開設が1993年で、2000年の夏に開館したのですが、作り始めたのは1996年から97年のことです。私もこの頃に赴任しました。
-Windows 95 のブームの直後ですね。
浅井さん:懐かしいですね。設計に2年、開発に1年…と、完成した時点で陳腐化が心配になるほど時間がかかって(笑)。実際、その後の数年で世間の様子が大きく変わりました。
-でも、そこまで丁寧に進めたのであれば、きっとよいシステムだったのでしょうね。
浅井さん:ええ、よくできていたと思います。でも、学芸員はもうWindowsやMac OSを使い始めていましたから、専用画面は少し取っ付きにくかったかもしれませんね。
-浅井さんもお使いだったのですか?
浅井さん:私はよく使いましたね。でも、当時は「電子的な情報」そのものに馴染みがない時代でしたので、全館を挙げてデータ入力が習慣化したのはもっと後のことです。
-いわゆる「早すぎた」システムだったのですね。
浅井さん:データベースシステムは時期尚早だという意見はありました。個人的には「いずれインフラ整備が必要になる」と思っていましたので、ネットワーク構築を建築の設計に入れるよう進言したんです。
-まさに先見の明ですね…。
浅井さん:そう言われると、取り組みとしては確かに早かったのかもしれないですね。ホームページも96年に公開しましたし、英語版もありましたから。
-え、開館前から開設していたのですか?
浅井さん:ええ、準備の進捗をお知らせしていました。海外からのアクセスもありましたよ。
-恐れ入りました。掛け値なしの「超・先進館」です。
-ということは、I.B.MUSEUM SaaSに乗り換えるまで、開館時に開発されたシステムをずっとお使いだったのですか? 十数年という計算になりますが。
浅井さん:ええ、ずっと使ってきました。
-維持コストが大変だったのでは?
浅井さん:更新は本当に大変でしたね。規模を縮小してコストダウンを図ってきましたが、これはそろそろ限界か…と思っていた時に、御社からクラウドの案内をいただいて。「月額3万円」という料金にビックリしました(笑)。
-これぞまさしくベストタイミングだったわけですね。
浅井さん:新規事業として予算化しなくても、やりくりで何とか捻出できる範囲内の金額ですからね。「これだけの機能をこんな金額で大丈夫なのか」と思ったくらいで。
-御眼鏡に適ったと思うと感無量です…。でも、先代のシステムが作り込まれていた分、汎用的なI.B.MUSEUM SaaSだと物足りなかったのでは?
浅井さん:そうですね、さすがに完璧にはいきませんよね。
-ご不満点がおありなのですね? 詳しくお聞かせください(メモを構えて)。
浅井さん:不満というほどのものではないのですが、たとえば資料群から個々の資料を開くことは容易ですが、その逆は少し難しいですよね。
-個々の資料から資料群の情報を辿っていく…という動線ですか?
浅井さん:はい。歴史資料などをお預かりする際は、事前にどんなものがあるかが分からないことが多いんです。開けてみて、初めて「文書があり」「お茶碗があり」ということが分かるわけです。そうなると、まず資料群に関する情報をしっかり残して、それにぶら下げる形で資料情報を記述していくことになります。
-(メモしながら)受入時の資料整理は大変ですよね。階層がどんどん深くなっていくこともある…とも聞きます。
浅井さん:そうなんです。「○○家文書」のような資料群の情報は小分類に置いたとしても、その資料群についての詳しい情報を記述する欄がないと、そもそも「この資料群が何なのか」という情報を辿るのが難しくなるわけです。
-なるほど…(メモ)。資料群についての情報も記したいところですよね。
浅井さん:よくあるのが「受入の経緯」の情報です。1点の資料情報から受入時の事情などを調べるのは、現在のデータでは構造的に難しいのかな…と。
-資料を個別に受け入れるわけではないですもんね。
浅井さん:まとまった「一式」として受け入れて、整理してリスト化する段階で「1点の資料」の情報に分かれていくので、「まとまったときの情報」を必要とする機会は意外に多いんです。
-仰る通り、データの構造を再考した方がよいかもしれません。たとえば「刊行物」に使用する階層構造を資料群向けのものと置き換えて運用されている館もあるようですので、少し社内で議論してみますね。
浅井さん:ぜひお願いしたいですね。あとは、システム上で簡単な画像の編集ができるとありがたいです。機械的に作ったデータは向きが不揃いになってしまうこともあるので、システム内で修正できればいいな、と。
-確かに便利そうです。こちらも課題とさせてください。
-ところで、旧システムからのデータ移行はどう対処されたのですか?
浅井さん:画像データも含めて私が行いましたよ。一括登録機能を使って。
-え? ご自身で、ですか…?
浅井さん:ええ、3万点ありましたから少し大変でしたけど。特に数字の表記のところでエラーがたくさん出て、Excelで一括置換を何度も行いました。
-さすが超・先進館…。どれくらいかかりました?
浅井さん:仕事の合間に行ったこともあって、1か月以上はかかりましたかね。おかげで、一括登録もすっかり慣れましたよ(笑)。
-たぶん私よりお上手かと(笑)。データ公開も早かったですよね。
浅井さん:前のシステムでも公開していましたし、県民サービスとしての優先度は高いですからね。博物館の外部評価でも、データ登録数、公開数は評価基準になっているんです。
-いまはどのくらい公開されていますか?
浅井さん:システムには約46,000点のデータが登録済みで、そのうち約35,000点を公開しています。
-ほかの皆さんのご利用状況は?
浅井さん:おかげさまで、こまめに登録する人が増えました。自分の担当分野以外の情報が充実してくると、分野をまたいだ組み合わせも生まれてきますしね。
-ほう? たとえばどんなことですか?
浅井さん:私は古代史を担当していますが、民俗資料のデータが充実してくると、古代と現代で同じテーマの資料情報を探すことができますよね。わざわざ収蔵庫に行く必要もなくなりますし。
-そう言えば、「温泉番付」を公開しておられますよね。弊社の横断検索サービスに載せるコラムを書く時に見つけて紹介させていただいたのですが、使い方は同じですよね。
浅井さん:目的を持たずに漠然と探して、たまたま面白いものに行き当たるのも楽しいですよね。館内業務でもよくあるシーンです。
-情報が充実すれば新しいアイデアとの出会いも増えるということですね。今日はヒントをたくさんいただきました。ご期待に違わぬよう、弊社も頑張ります。お忙しい中、本当にありがとうございました。
- Museum Profile
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新潟県立歴史博物館
長岡市関原の丘陵に広がる約5万㎡の広大な敷地の一角に建つ博物館。常設展示は歴史展示と縄文展示で構成され、雪国であり米どころでもある新潟らしさを存分に表現。縄文展示では、当時の生活の様子が実物大で再現された体感型の「縄文人の世界」と、多様なテーマで追求する「縄文文化を探る」の二刀流で、楽しみながら知的探求を深められる工夫も。毎週末には研究員による常設展示ワンポイント解説も人気の歴史ミュージアムです。
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