- vol.176取材年月:2022年1月高知県立歴史民俗資料館
館内の管理業務から利用者へのサービスまで、
どんどん「活用したいこと」が増えていきます。学芸専門員 中村 淳子 さん
主任学芸員 曽我 満子 さん
-こちらに初めてお邪魔したのは、かれこれ15年くらい前でしたでしょうか。あの時も曽我さんとお話しさせていただきましたね。
曽我さん:そうでしたね、お懐かしいです(笑)。
-その節はありがとうございました(笑)。当時は独自のシステムをお使いでしたよね。
曽我さん:ExcelとSQLサーバで構築した専用システムを使っていた頃ですね。その前は三四郎やExcelの表計算ソフトのみで管理していて、さらに以前、平成2年から12年度までは光ファイル専用機を使用していました。
-平成2年と言えば、今年で32年ですか。弊社が平成4年の創業ですから、情報のデジタル化にかけては先輩にあたるわけですね…。そして、平成30年にI.B.MUSEUM SaaSを導入されたわけですが、きっかけは?
曽我さん:システムはPC1台で運用していたのですが、学芸員が6人、補助職員が4人という体制では順番待ちの列ができる上に、老朽化も進みまして。
-長きにわたって大切に運用してこられたのですね。I.B.MUSEUM SaaSのご利用にあたってはデータ移行をお任せいただきましたが、特に問題は生じませんでしたか?
中村さん:はい、お陰様で無事に移行できました。Excelデータの事前確認では漏れなどもありましたが、概ねスムーズに進めることができたと思います。
-実際にお使いになってみてのご感想は?
中村さん:一元管理の素晴らしさを実感しています。たとえば写真データなら、以前は検索用のExcelがあって、ハイパーリンクで画像ファイルを開くように作ってあったのですが、導入後は文字情報と画像情報を一緒に閲覧できるようになりました。最初は、正直、うまく使えるかどうか不安もあったのですが、杞憂でしたね。
-それは何よりでした。でも、ハイパーリンクで画像を管理する方法も、意外に侮れないですよね。それはそれで便利に使えると思いますが、実用レベルに達するまでは地道な作業を重ねられたはずですから、やはり歴史の重みを感じます。
-さて、導入から3年が経過しましたが、現在はどう運用されていますか? よく使う機能などは?
中村さん:次の企画展の準備に向けて、ちょうど一昨日からクリップリストを使って点検を始めたところなんですよ。その中で、指定文化財ではないのに「指定」となっている資料があることが見つかって、改めて導入の効果を実感しました(笑)。
-え? それって、データが間違っていたということですよね? 弊社の移行作業で手違いが?
中村さん:いえ、お渡ししたデータ自体にミスがあったんです。旧システムを使っていた頃、紙のカードにデータを印刷する作業があったのですが、その時に印刷がずれてしまったようで。こうして使いながらミスを発見できたのも、その場で修正できるのも、とてもありがたいです。
-なるほど、ホッとしました(笑)。ご利用の頻度はいかがですか?
曽我さん:私個人としては、もう使わない日がないという感じですね。2年前はそうでもなかったのですが、今はまさに毎日使っています。
-それは凄い。何かきっかけがあったのですか? 昨年、サポート担当がお邪魔しましたが、何か関係があるのでしょうか。
曽我さん:はい、まさにそれがきっかけです。入出庫の記録を楽にできないかと思って、サポートの方に関連する機能を教えていただきまして。寄託期限の確認とか、他館からの貸出依頼とか、出納管理とか…。今さらですが、こんなに高機能なんですね(笑)。これから館内で上手な使い方を啓蒙しようと考えています。
-それは嬉しいですね、帰社したら担当にお伝えします。管理面での今後の展望などはおありですか?
曽我さん:まずは画像データを増やしていきたいですね。登録枚数の制限がないので、画像ボックスのような感覚で、メモのような写真などもどんどん登録したり。
-実際、資料に気になる箇所があった際に撮影するだけでも、貴重な情報になることもありますからね。保管場所の様子も撮っておけば、あとで探しやすくなったり。
中村さん:私は展覧会の準備としてリストを作る時によく使うのですが、情報を入れれば入れるほど検索にヒットしやすくなっていくのが嬉しいですね。気が付いたことは何でも備考欄に記入して、曖昧な単語からも引っかかりやすくしています。
-お二方とも、効率的に使い込んでおられますね。他館の皆さんにもお知らせしないと(メモ)。あとは、何か不都合などはありませんか? 改善したい部分とか。
中村さん:とても基本的なことですが、データは一度削除したら戻せないですよね。あれ、削除前に戻せたらいいなと思っています。それから一括更新を実行する時、書き換えてしまった後で間違いが見つかったらどうしよう…と、少し怖くなることがあって。何か安心できる方法があるといいのですが。
-怖い、というお気持ちはよくわかります。緊張を強いるような仕様で申し訳ございません。一括処理の前にExcelにデータを出力しておいて、何か間違いがあった場合は「処理前のExcelデータを上書きして元に戻す」という方法で対処できるかと思います。あまりスマートな方法ではありませんが…。
中村さん:それでも、ひとまずは対応できそうですね。頑張ります(笑)。
-この点は、皆さん同じ思いを抱えておられるかもしれませんね。提供側は「気をつけてくださいね」で済ませることもできますが、ユーザ側の視点ではご不安もごもっともです。「怖くない一括処理」は重要な視点だと思いますので、本質的な部分も含めて、社内でディスカッションしてみますね。
-さて、システムだけでなく、ポケット学芸員もご利用いただいています。もうご導入から1年ほど経ちましたよね。
曽我さん:早いものですね。当館が立地している国史跡・岡豊城跡の案内から常設展示へと幅を広げて、現在では企画展ごとにコンテンツを入れ替えながら運用しています。
-デジタルデータの管理では長い歴史をお持ちなのに、新しいシステムやツールにどんどん適応しておられますね。今後が楽しみですが、将来のビジョンなどもお聞かせください。
曽我さん:たとえば、写真貸出の事務への応用なども考えていきたいですね。申請に対して許可書を発行して、画像データをメールで送る…という流れになるかと思いますが、セキュリティの面でもっとよい方法はあるでしょうか?
-ダウンロードボタンを設けた公開用のページをIDとパスワードで管理されてはいかがでしょうか。申請から一期間のみアクセスできる閲覧できる仕組みなら、ご利用の皆様にもご不便をおかけしないと思います。
曽我さん:なるほど。それなら安全な画像データの提供が可能になりそうなので、検討してみますね。
中村さん:あとは、音声や映像データなども蓄積していけるといいなあ、と。インタビューとか、民謡とか。アーカイブ化して管理するだけでなく、一般公開もできたらいいなと思います。
-それは素晴らしい。特に音声データはポケット学芸員と非常に相性がよいので、来館者サービスの充実にもつながりますよ。本日は貴重なヒントをたくさんいただきました。お忙しい中でお時間をお借りいたしまして、ありがとうございました。
- Museum Profile
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高知県立歴史民俗資料館
長宗我部氏の居城跡「国史跡岡豊城跡」に立地する歴史系博物館。長宗我部氏にまつわる充実の資料群のほか、土佐の人々の歴史・文化・くらしを多角的に学ぶことができます。また、桜をはじめ四季折々の草花を楽しめる岡豊山歴史公園は、四万十川上流・津野町の山村民家を移築した登録有形文化財・旧味元家住宅主屋でも有名。「長宗我部フェス」などイベントも活発で、土佐の魅力を満喫できるミュージアムです。
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