- vol.166取材年月:2020年9月横浜市民ギャラリーあざみ野
ちょこちょこ公開データを追加して、1,800点ほど公開完了。
ゴールが近づくと、意欲がさらに増してきます。学芸員 日比谷 安希子 さん
データベース担当 小島 明美 さん
-カメラのコレクション管理と公開にI.B.MUSEUM SaaSをご利用いただいています。公開ページを見ていると、カメラに詳しくない私でもワクワクしてきます。
日比谷さん:ありがとうございます。横浜は日本における写真発祥の地のひとつということで、アメリカの収集家サーマン・F・ネイラー氏のコレクションを平成5・6年に受け入れたんです。
-これほどのコレクションのデータベースを短期間で公開まで持っていかれたということは、もともとカメラにお詳しかったんですか?
日比谷さん:いえ、大学では油絵を専攻して、平成17年の着任当初は教育普及担当として主に展覧会に携わっていました。コレクションは着任後に当館に入ってきて、平成20年から私が担当することになりました。
-畑違いだったなんて信じられませんね。では、どんな流れであのデータベースを作り上げられたのですか?
日比谷さん:最初は、当時のデータベースに棚番号やIDを登録しながらコレクションを棚に収めていく作業から始まったと思います。私は、そのデータベースに既にあった資料カードの文字情報を入力する作業から携わりました。
-当時はどんなデータベースだったのでしょうか。
日比谷さん:Accessで作ったもので、随時マイナーチェンジしていました。コレクションの写真は棚に収める作業中に撮影したもので、もともとは照合用でした。事業をやるごとに広報用や展示用の写真も増えてきたので、公開用としてデータベースを一気に見直すことにしたんです。
-なるほど。そこでI.B.MUSEUM SaaSの出番となるわけですね。
-公開を念頭にI.B.MUSEUM SaaSを導入いただいたわけですが、現在、館内ではどのようにお使いですか?
日比谷さん:特によく使うのは、展示を組む時ですね。クリップリストを使ったり、Excelで出力したりします。あとは、データを確認しながら、ちょこちょことアップしたり、修正したり。こうした作業がやりやすいことが、I.B.MUSEUM SaaSを選んだ一番のポイントですね。
-「ちょこちょこ」がポイントですか。詳しくお聞かせいただけますか?
日比谷さん:長い年月をかけて整えてきたデータには、どうしても表記の揺れや抜けが発生します。そんなデータを見直して修正し、公開データを少しずつ増やしています。ちょこちょこ行っているのは、そんな作業です。
-なるほど! ほかの館でもよく耳にしますが、全部チェックし終わってから公開しようとすると、いつになるか分からない状態に陥りがちですよね。
日比谷さん:当館はカメラだけで2,500点以上あって、あとは写真、カメラに付属のアクセサリ類、レンズや文献などもあります。現在はカメラを1,800点ほど公開できたので、ゴールに少しずつ近づいていくごとにモチベーションが上がっているんです(笑)。
-素晴らしいですね、ぜひ頑張ってください。ところで、日々お使いになっていて、何か気になることはありませんか?
日比谷さん:気になることですか…。そう言えば、帳票のことが話題になったことがありましたね。
-どんなことでしょう?
日比谷さん:ちょっと担当者を呼んできますね。…(小島さんご到着&ご挨拶)…彼女は前の職場の横浜美術館でもI.B.MUSEUMを使っていたんですよ。
小島さん:そうなんです。御社のサポート担当の方とも、とても長いお付き合いで(笑)。では早速、帳票の話なんですけど。
-はい、ぜひご指摘をお願いいたします。
小島さん:カメラの作品カードを作ったのですが、項目設定や項目数の調整が難しくて。もう少し柔軟性があるとよいのですが。
-仰る通りだと思います。いま、改善方法を模索しておりますので、ひとまず下敷きとしてご利用いただけるサンプルを増やして少しでもご負担を軽減できればと考えています。
小島さん:それから、一括での修正がまだちょっと怖いです。以前、ご担当の方にお越しいただいて教わったので操作は理解できたのですが、「失敗したら一気に書き換わってしまう」と思うと踏み切れなくて。
-いったん全データをExcelで出して、万一の時には修正前のExcelをもう一度アップロードする方法をお願いしていますが、それでもご不安なものはご不安ですよね。
日比谷さん:ひとつ前のデータに戻せるような機能があると、ユーザの皆さんもお喜びになるのでは。
-データの大きさや、どのタイミングのものに戻すかの指定などがかなり難しいのですが、社内で議論してみますね(メモ)。
小島さん:最近、出品歴も残していけるように入出庫の管理でも使っているのですが、出庫したらその時の展覧会情報が出品歴に自動的に転記されますよね。後で展覧会の情報を修正したい場合、作品側を上書きしても転記された出品歴側は書き換わりません。こうしたケースでも自動的に反映できる機能は難しいでしょうか。
-なるほど。転記がよいのか参照がよいのか、意見が分かれるところだと思いますので、これも調査させてください(メモ)。
日比谷さん:そうだ、思い出しました。私からもひとつ、よろしいですか?
-もちろんです。ぜひお願いします。
日比谷さん:先ほどお話ししました通りクリップリストをよく使いますが、展覧会を考える時には、実際の展示数よりはずっと多い候補を登録することになりますよね。それなら、リスト上であれこれ頭を捻るために、自由に並び替えられると助かります。
-なるほど、それは必要かも(メモ)。実際の業務シーンを細かく追うと、やはりまだまだ改善する余地がたくさんありますね。勉強になります。
-今後に向けて何か目指しておられることはありますか?
日比谷さん:公開ページをバイリンガルにします。できれば、今年度中に。
-即答ですね。しかも期限まで。
日比谷さん:そうやって自分にプレッシャーをかける方がうまくいく気がするので(笑)。あとは、ホームページからもう少し入りやすくしたいです。
-これだけのコレクションですから、I.B.MUSEUM SaaSの「作家から探す」の機能を使って、メーカー名から検索できるようにしてはいかがでしょうか。
日比谷さん:実は、当館もそれをやりたいと考えていました。でも、それを実現するには、少し課題がありまして…。ね?
小島さん:そうなんです。カメラメーカーは、長い歴史の中で社名が変わったり、合併したりすることがあるんです。ひとつの名前で固定するとカメラが製造された時の社名と違ってしまいますし、社名ごとに個別のデータを作ると同一メーカーが作ったカメラが検索できなくなってしまいますし…。
-難しい問題ですね。おそらく、メーカー名の情報としては統一しつつ詳細情報として社名変更の沿革を記載して、カメラの詳細情報側にも紐付けながら「製造時メーカー名」という項目を用意すると、整理できるかも知れません。他館の事例などを持ち寄って、社内で協議してみます。
日比谷さん:ぜひお願いします。
-本日は実に興味深いヒントをたくさんお聞きすることができました。お忙しいところ、本当にありがとうございました。
- Museum Profile
-
横浜市民ギャラリーあざみ野
ジャンルを超えた「表現」の新たな動向を紹介しつつ、表現活動を通じて人と人が交流する「出会いの場」となることを目的に、平成17年に開館。展示室やアトリエを市民利用の場として提供するほか、年に3回の企画展、アトリエ講座、コンサートなどを幅広く企画。また、日本の写真発祥の地の一角とされる横浜の地に相応しく、充実したカメラコレクションを所蔵。ミュージアムの枠を超えてチャレンジを続ける人気アートスポットです。
ホームページ : https://artazamino.jp/
〒225-0012 横浜市青葉区あざみ野南1-17-3
TEL 045-910-5656