ミュージアムインタビュー

vol.99取材年月:2014年6月東京都美術館

館内の端末で図書やアーカイブズの情報を公開。
現在はインターネット公開に向けて準備しています。
事業係 水田 有子さん
事業係 松尾 由子さん

-主に図書の管理用にI.B.MUSEUM SaaS をご利用いただいていますよね。弊社の収蔵品管理システムがどのくらい「通用」しているか、以前から気になっていたんですよ。お使いになられて、いかがですか?

水田さん:以前よりはずっと使いやすくなったと思います。

松尾さん:私もそう思います。スタッフは皆「検索しやすくなった」と言ってます。

-ありがとうございます。導入前はどんな管理方法だったのですか?

水田さん:実はExcelを使っていたんです。件数が多く、分類ごとにファイルを分けて管理していたのですが、やはり限界が来まして。そろそろ、きちんとしたシステムを入れないといけないな、と。

-なるほど。その際、図書管理専用のシステムではなくてI.B.MUSEUM SaaSをお選びになった理由は?

水田さん:ちょうど、当館の美術情報室がアーカイブズの機能を加えてリスタートすることになったためです。リニューアル・オープンに合わせて入札を行ったのですが、図書とアーカイブズを両方扱えるシステムは、思ったより少ないんですね。

-確かに、そうかもしれませんね。

水田さん:当館の図書は、1995年に東京都現代美術館ができた際に、そちらに移管されました。今ある図書は、それ以降に収集したり寄贈を受けたりしたものですから、それほど規模が大きいわけでもなくて。

-つまり、ご予算的な問題ですよね。

水田さん:もとはExcelで仕事をしていたわけですし、やはり、クラウドであるということが、費用の面でも有利に働いたと思います。

-なるほど。今日は、「収蔵品管理システムを図書メインで使ったらどうなるか」という観点から詳しくお聞きしますので、よろしくお願いします。

-まず、どんな場面でシステムをよくお使いになりますか?

水田さん:そうですね…資料管理や検索はもちろんですが、職員への貸出の時なんかは、「一般貸出」の機能も使われていますね。

-さすがですね。あの機能、実はお使いになっている館は意外に多くないんですよ。

水田さん:そうなんですか?

-ええ。「ちょっと持って行きますね」という時に情報を登録するのは、やはり面倒なんでしょうね。慌てている時とか。

水田さん:なるほど。でも、来館者の方が図書を探しておられる時に、誰が持って行ったかがパッとわかると、とても便利ですよ。「お客様が見たいと仰っていますので返してください」と、取りに行くこともあるようです。

-それなら必須機能と言えそうですね。あと、バーコード管理機能もお使いとか。

松尾さん:ええ、蔵書点検を正確に短時間で行うことができるのでありがたいです。

-なるほど。ほかに気になる部分は?

水田さん:そうですね…雑誌の管理が少し不便でしょうか? 雑誌を号ごとに登録する時、雑誌名も毎回登録しなければなりませんので。検索の際にも、同じ雑誌名がずらっと並ぶと、見た目の上でも少し煩雑かもしれません。

-上位階層に雑誌タイトル、下位階層に号を登録する方法もあるんですが、それではうまくいかないですか?

松尾さん:その方法だと点数が正しくならなくて。

水田さん:雑誌タイトルも号も同じ1点としてカウントされるので、数が正確にならないんですよね。

-なるほど。図書館向けシステムと違って、1データ1点という考え方で作っていますので、上位に持ってきたものも1点とカウントしてしまうんですね。

水田さん:それで、ご担当の方と相談して、今の運用にしたんです。

-それは確かにご不便ですね。もう少しいい方法を考えてみますね。ほかには?

松尾さん:資料名を入力する際に自動的にふりがなが登録されますが、編集する際に、うまく連動しない場合があるようです。資料名の一部分にスペースを入れたときに、カナではほかの部分にもスペースが入ってしまったり。

水田さん:それから、フリーワード検索と詳細検索で、「あいまいさ」の判断が違いますよね。詳細検索では、大文字小文字の違いでもヒットしないようになっているみたいで。

-(必死でメモ)う〜ん、まだまだな点がありますね…改善しなくちゃ。

水田さん:当館では今年の3月に図書以外のアーカイブズ資料と収蔵品のデータベースも公開を開始しました。利用者の皆さんにもスムーズに検索していただきたいと思いますので、ぜひお願いします。

-頑張ります! ところで、アーカイブズのデータは、具体的にはどんな内容なんですか?

水田さん:当館の歴史に関わるものです。写真、文書、図面や、ポスターやチラシなどの印刷物…。美術館創立の日を記念してちょうどアートラウンジでアーカイブズ資料を展示していますから、ご覧になりますか?

-ぜひぜひ。(場所を移動)

-ずいぶん古い写真がありますね。それにこの「美術館食堂」のパンフレット、昭和11年ですか…(見入る)。

水田さん:当館は日本で最も古い公立美術館で、大正15年(昭和元年)の開館なんです。昭和30〜40年代の資料などは、懐かしそうにご覧になる方も多いようです。

-若い頃から美術館通いをされている方であれば、想い出がよみがえってくるでしょうね。一方、職員の皆さんからご覧になると「先輩方のお仕事を紐解く」という感じでしょうか。

水田さん:そうですね。デザインや関連事業など、見ていても興味深いですし、館の歩みを辿る上でも大変参考になります。

-それは何とも意義深いですね。インターネットで公開したら喜ばれるのでは?

水田さん:私たちも視野に入れています。データ内容の見直しが必要ですが、公開できるものから少しずつ実現できたらいいなと思っています。

-それは凄い!

水田さん:完璧を求め過ぎると難しくなってしまうので、ある程度のところまで整備したら、少しずつでも公開していきたいです。

松尾さん:このラウンジや美術情報室内での公開は実現したので、ぜひインターネットでも。

-個人的にも楽しみです。

水田さん:美術情報室は館内の少し奥まった場所にあるのですが、とても居心地よい空間です。皆さんに知っていただくという意味でも、インターネットでの公開は大切ですからね。

-「充実した美術関連図書と快適な空間」ですね。弊社のフェイスブックでも紹介させていただきます(注:紹介済み)。

水田さん:ぜひ、お願いします。

-今日は前向きなお話とともに、宿題もたくさんいただきました。今後も一生懸命対応していきますので、よろしくお願いします。本日はご多忙の中、本当にありがとうございました。

<取材年月:2014年6月>
Museum Profile
東京都美術館 大正15年、上野恩賜公園内に開館した当館は、日本で最初の公立美術館として全国的に知られています。「アートへの入り口」として注目を集める特別展や、若手発掘の公募団体との連携展をはじめ、魅力的な事業が目白押し。家族連れや子どもも参加しやすいイベントも活発で、ラウンジや美術情報室ではゆっくりと寛ぐ人々の姿も目立ちます。90年近くにわたって「芸術家の晴れ舞台」として歴史を刻み続けてきた「聖地」の輝きは、昔も今も、そして今後も変わりません。
ホームページ : http://www.tobikan.jp/
〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
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