- vol.95取材年月:2014年2月江別市郷土資料館
一度データを整えておけば、どんなに時代が変わっても
館の情報を継承していける。それがデジタルの利点です。業務係 係長 渡辺 英彰さん
学芸員 園部 真幸さん
-今年度からI.B.MUSEUM SaaS をご利用いただいていますが、その前はI.B.MUSEUMを長くお使いくださっていたんですよね。
園部さん:ええ、私が以前にここにいた頃、導入に携わりましたよ。当館の開館が平成3年4月で、その翌年だったかな?
-えっ! 弊社の創立が平成4年7月ですから、ほぼ同時期ですね。たぶん最古参ユーザのひとつということになります。大変失礼いたしました!
園部さん:いえいえ(笑)。当時は北海道に常駐の方がいらして、熱心に提案に来られていましたよ。懐かしいですねえ。
-20年以上前のことですから、当時は博物館のシステムに精通する業者はほとんどなかったのでは…。
園部さん:御社だけだったでしょうね(笑)。おかげで導入はすんなりと進みました。
-実際のシステムはいかがでしたか?
園部さん:確かデータ容量は100MBくらいで、画像データはほとんど入りませんでした。当時のデータ件数は1万7千点ほどで、7割方は画像データもありましたから、外付けのディスクに入れていたんですよ。検索して資料のありかを特定したら、盤を入れ替えて画像を呼び出す…という感じで。
-「盤を入れ替えて」って、昔のカラオケみたいですね(笑)。
園部さん:そうそう(笑)。不便でしたが、なにぶんワープロが主流の時代ですからね。
-その時代にデジタルデータを揃えておられたのは凄いですね。
園部さん:ワープロで作った表を保存したフロッピーディスクが何十枚もあって、丸ごと御社のSEの方にお渡ししてシステムに入れていただいたんです。フロッピーの山がひとつのデータベースになったわけですから、大変な進歩でしたよ。
-ということは、最新のシステムに入っているデータの中には、当時作ったものがあるということですよね。デジタル化しておけば、時代が変わっても礎として根付くのですね。
渡辺さん:実際、こうして受け継がれていますからね。
-それに加えて、20年以上もシステムを維持してくださったのは、開発元として感無量です…。
-開館時から現在まで、システムにかかる予算を継続的に確保するのは大変だったのでは?
渡辺さん:リース契約のおかげでしょうね。5年ごとにハードと一緒にシステムを更新できたのですが、平成17年に買い取り契約になってしまって。
-更新が新規事業扱いになると、コスト的に厳しくなりますよね。
渡辺さん:ええ。老朽化でまた更新を考えるタイミングで、御社のクラウドサービスが始まったんです。月額3万円というのは、以前のシステム投資額と比較すると、とても安いですからね。
園部さん:サーバも要らないですしね。
-弊社もデータ継承を重視してきたのですが、お役に立ったのですね…。新旧のシステムを比較されて、使い勝手はいかがですか?
園部さん:旧システムでは、キーワード検索ができないのが不便でした。検索条件もかなり正確に入力しないとヒットしてくれないので、登録した本人でなければうまく探せなくて。
渡辺さん:当館は学芸員不在の時期がありましたから、なおさら「使いこなすのは難しい」というイメージでしたね。
-なるほど…。
園部さん:私は導入に関わりましたが、その後すぐに異動で当館を離れて、昨年戻ってきたんですよ。その間、何度かシステム更新がありましたが、それほど大きな改善はなかったみたいで。久々に使った時は「あれ? こんなに扱いづらかったっけ?」と思いました(笑)。
-それは申し訳ありませんでした…。
渡辺さん:私は図書館にいた経験もあるんですが、あちらほどシステムを常に使う状態ではなかったこともあってか、機能改善のリクエストがあまり多くなかったのかもしれませんね。
-そこは弊社が提案すべきでした…。それで、現在のシステムはいかがですか?
園部さん:とにかく検索しやすくて「ずいぶん進化したな」という印象ですね。たとえば、いま展示している雛人形を探す時も、ひな祭りに関係する資料をすぐに呼び出せますしね。展示を考える用途にも本当に役立っています。
-それをお聞きしてホッとしました…。
園部さん:それから、データの見直しや収蔵庫での作業にも便利ですよ。学芸員不在の期間のデータや実物の状況などを見るのに、必要なデータをサッと取り出せますから。
渡辺さん:当館の収蔵庫は5~6キロ離れた場所にあるので、なおさらですね。
-それは大変ですね。I.B.MUSEUM SaaS なら、タブレット端末があれば収蔵庫の中からシステムのデータにアクセスできますよ。
園部さん:それはいいですね。当館も1台導入しなきゃ。
-逆に、新しいシステムでお困りのことはありませんか?
園部さん:データの中身で苦労しましたね。当館の昔の資料カードは、年代の欄に「使用年代」または「作成年代」を書く仕様になっていましてね。システムではこれを別の項目にしたんですが、そうすると作成年代が使用年代のあとになってしまったり。
-見直し作業が大変そうですね。
園部さん:そうなんです。でも、新システムへの移行を機に、担当の方とやり取りしながら、思い切って余計な項目を削りましてね。一括登録機能なども使いながら、何とか進めてますよ。
-さすがです。長くお使いいただいているだけに、勘所を押さえておられますね。
園部さん:いえいえ、貸出や名簿などはまだ使っていませんから、これからです。
-実務の必要に応じて拡充されることをおすすめいたします。ご無理のない範囲でお進めくださいね。
-I.B.MUSEUM SaaSの機能面でのリクエストはございますか?
園部さん:集計機能があるといいなと思っています。
-ほう? 具体的に教えていただけますか。
園部さん:年報などに、資料点数の一覧表を表示していましてね。マトリックス表の形式なのですが、記載されている数字をひとつずつ検索して表を作成しているんです。これをシステムでサッと出せると助かるなあ、と。
-なるほど。年報はどの館でも発行していらっしゃいますから、確かにこの機能は有効そうですね。検討してみますね。
園部さん:ぜひお願いします。
-これだけしっかり使っていただいて、2万件近くのデータが整っていますから、あとは外部公開ですね。
園部さん:そうですね。公開するならデータの中身を精査したいですし、写真も高画質なものに差し替えたいので、もうちょっとかかりますね。
-少しずつ公開する方法もありますから、ぜひご検討ください。それにしても、そのデータがもとは20年以上前にワープロで作られたものだと思うと、感慨深いですね。
園部さん:そう言っていただけると、頑張った甲斐があります。
-デジタルデータを調えておけば、形式が変遷しても乗り換えていくことができるという生きた証拠だと思います。弊社でも、事例として研究させていただきます。本日はご多忙の中、本当にありがとうございました。
<取材年月:2014年2月>
- Museum Profile
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江別市郷土資料館
平成3年、地元の公民館を改築する形で開館した、縄文時代から北海道の開拓期、そして現在までの江別の歴史と文化を保存する資料館です。特に、重要文化財に指定されている江別太遺跡の土器や木製品など、先史時代の出土品は大変貴重。時代とともに変遷する地域の様子とともに、大量に並んだ土器を見比べられる迫力たっぷりの展示は圧巻です。地元の小学校に隣接し、地元に溶け込む学びの場として、四半世紀にわたって住民に愛され続けている地域ミュージアムです。
ホームページ : https://www.city.ebetsu.hokkaido.jp/site/kyouiku/3022.html
〒067-0002 江別市緑町西1丁目38
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