- vol.7取材年月:2005年12月京都国立博物館
「システム会社に丸投げ」は、やめたほうがいい。
館側も「知る努力」を費やせば、 システムの完成度は向上しますから。文化資料課 主任研究官 宮川 禎一さん
文化資料課 文化資料情報室 西浦 嘉博さん
-100年以上の歴史のあるこちらの館だけに、今日は特に緊張しています。ふだん当社が偉そうに講釈を垂れている「収蔵品管理」についても、100年の歴史をお持ちだと思うと……(笑)。
宮川さん:なるほど(笑)。確かにそういうことになりますね。
-昔も今も管理体制は盤石と思いますが、コンピュータシステム化以前のことを少し教えていただけますか?
宮川さん:昔の台帳は「調査書」という感じでした。調査の内容や履歴を書き足していくと、ファイルが何百冊にもなって。それはすごい量でした。いやあ、懐かしいですね(笑)。
-いつ頃、コンピュータシステムを導入されたのでしょうか。
宮川さん:96年か97年頃だったと思います。紙を切って貼って台帳を更新していくような作業は、やはり非効率ですから。時代の流れに即すべきだということで。
-最初に導入されたのは他社製のシステムだったとお聞きしていますが、I.B.MUSEUMに切り替えられた理由は?
西浦さん:2000年頃の時点で、Windows3.1がベースだったんです(笑)。処理能力も速度も限界で、業務に支障を来し始めていましたからね。
-なるほど。でも、それなら同じ業者がOSのバージョンアップに対応した方がスムーズですよね? それを敢えて全面リニューアルとされたのは?
西浦さん:最初のシステムを大手企業さんにお任せしたので、次は小回りの聞く業者さんかな、と漠然と考えていたんです。慎重に比較検討した結果、早稲田さんのシステムは機能は十分でしたし、実績もお持ちだったし、何より価格もリーズナブルでしたしね(笑)。
-恐縮です。リニューアル作業の現場では、何か不都合は生じませんでしたか?
西浦さん:特に大きな問題はなかったかな。使い勝手の部分では前システムを引き継いでもらいましたので、一般職員にもすんなり溶け込んだみたいですよ。ただ、深く使いこなす職員の目から見ると、いろいろと調整が必要でしたね。
-と仰いますと?
西浦さん:前システム時代にオラクルで作ったデータベース形式の細部を把握しきれていなかったんです。半ば推測でデータを移し替えてもらったんですが、案の定、細かいところで若干の不具合が出てしまいました。
-それは、申し訳ございませんでした。当社の対応に問題はありませんでしたか?
西浦さん:ご心配なく(笑)。きちんと解決できました。小回りがきく会社さんでよかったですよ。それに、データ形式が把握できていなかったのはこちらの問題でもありますしね。
宮川さん:そうそう、こちらも職員の異動などがありましたから。でも、「文書で残す」ことの大切さが改めて身に染みました(笑)。
-リニューアルにあたっては、I.B.MUSEUMにご期待をいただいたと思うのですが、実際はいかがでしたか? 100点満点では?
西浦さん:そうですね、85点くらいですかね。
-足りない15点は、データ移行の問題でしょうか?
西浦さん:う~ん。それだけではないですね……。
-……他にも何か?(汗)
西浦さん:さらに高速化、高機能化を目指していきたいので、その部分です。クライアント&サーバのシステムではこれが限界かな、ということですね。
-(胸を撫で下ろしながら)ということは、次のステップはWebの活用ということでしょうか。
西浦さん:その通りです。言語をどうするかなど、これから考えていかなければならないこともありますが、基本路線はそうなるでしょうね。
-機能面はいかがですか? 改善をお考えの部分はありますか?
西浦さん:もっと自由度を持たせたいですね。海外の博物館では、市販のデータベースソフトで管理して、自分で使いやすいように加工するのが主流だと聞きますし。
-なるほど。日本の博物館でもお使いのところは多いと聞いています。ただ、使いこなすのにソフトの知識が必要で、なかなか全員が使えるようにはならないというお話もありますが。
宮川さん:そうそう。西浦は理系出身で、特別に詳しいんです(笑)。業種柄、ITとは対極にある職員の方が、比率的にはずっと多いはずですよ。私もそうですし。
西浦さん:確かにそうですね(笑)。一般的な入力や検索機能を使う仕事であれば、決まったカタチで十分だと思いますよ。
-でも、当社に寄せられるお声でも、確かにそういうニーズは増えていますよ。実際にその手始めとして、今年パッケージソフトとして発売したI.B.MUSEUM2005では、項目を自由に追加できるようにしたんですけど。
西浦さん:当館にも、もっと深く使いこなしたいと考えている職員がいますよ。より効率の良い仕事ができるような環境を提供したいですよね。
-最後に、これからシステム導入を目指される館の方へのアドバイスをお願いします。
西浦さん:そうですね……システム会社さんに「丸投げ」しないことが重要かな。館の側もある程度は情報システムを知って、徹底的に打合せを重ねたほうが、最終的に納得のゆくシステムに仕上がるよ、と。
-リニューアルが完成するまで、かなり議論を交わしたと報告を受けています。
西浦さん:あの時は、仕様を決めるまでに、少なくとも6~7回は打合せをしましたよ。早稲田さんには、そのたびに京都まで来ていただいて……。
宮川さん:お詫びするのは私の仕事かな?(笑) 申し訳ありませんでしたね。
-とんでもないですよ。その「小回り」で選んでいただいたわけですし。
西浦さん:ありがたく思っていますよ。出来上がったシステムの完成度は、その努力に比例するものですからね。お陰様で、いまは問題なく仕事をこなせていますよ。
-そのお言葉がいちばん嬉しいです。本日はご多忙中にありがとうございました。
<取材年月:2005年12月>
- Museum Profile
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京都国立博物館
荘厳な明治の欧風建築が印象的な博物館。特別展示室は明治28年の竣工で、外観の鑑賞も楽しめます。一方で対照的な風情の茶室「堪庵(たんあん)」では、茶会などにも利用できるなど、「京都らしさ」もたっぷり。イベントは専門的な「土曜講座」から「少年少女博物館くらぶ」まで幅広く行われ、国際都市・京都に相応しく、毎年秋には国際シンポジウムが開かれています。コレクションはホームページで検索できるものだけで5,000点以上。さすが、日本を代表する博物館です。
ホームページ : http://www.kyohaku.go.jp/
〒605-0931 京都府京都市東山区茶屋町527
TEL:075-525-2473