- vol.47取材年月:2007年11月米子市美術館
「システムが館に何をしてくれるか」ではなく、
「館がシステムで何をするか」を考えることが重要ですね。主任学芸員 今 香さん
-米子市美術館さんは、最近システムをリニューアルされましたね。これで3代目のI.B.MUSEUMですが、今さんは初代システムからお使いいただいているとか。
今さん:そうなんです。もう12年目に入りましたよ。私は学生時代からMacを使っていたんですが、着任当時はまだ「ワープロ」環境でしたからね。懐かしいです。
-ということは、今さんがシステム導入の推進役をお務めだったのですか?
今さん:そんなに大げさなものでもなかったですけどね。当時は、周りの先輩方が各々に美術品や作家についての知識を蓄えておられていて、私のような新人には情報が共有できていたほうが仕事がしやすいですし。
-当時の学芸員さんは大変でしたもんね。
今さん:本人が筆記するしか方法がありませんでしたからね。他の人が書いたメモを読解するのも大変でしたし(笑)。そうそう、データベースを構築して公開するという方向性が市の情報公開の方針に合致していたことも、大きな理由のひとつですね。
-「情報の共有」がシステム導入のきっかけになっているケースは多いですよ。
今さん:そうみたいですね。共有できる情報のストックができると、それを基礎にして、研究や調査が進みますからね。今の時代はもう必需品でしょうね。
-導入の方向性が決まった後、I.B.MUSEUMに決めていただくにあたっては、いろいろと比較検討されたんでしょうか。
今さん:もちろん、比較検討はしましたよ。ただ、Macで使えるシステムで、美術館の実績があって、それから私たちのような小規模な館でも手が届くような価格のものとなると、選択肢はI.B.MUSEUMだけでしたね。
-競争が緩やかな時代があったんですねえ(しみじみ…)。
-では、3世代のシステムについて、それぞれお話をお聞かせください。まずは初代ですが、当時は機能もまだ発展途中で、さぞお手数をおかけしたのではないか、と…。
今さん:いえいえ。あの時代のMacのシステムは本当に使いやすかったですよ。むしろ、2代目に移った時に落差を感じたくらいです。
-Windows版に代わったタイミングのことですね。
今さん:はい。業務ではもうMacが中心でしたので、データベースを見たい時はWindowsの端末に移動しなければならなくなって。登録作業では、一旦Excel上に移して、それをまた戻すという手順がとても煩雑になりました。
-ただでさえWindowsに慣れておられなかった頃ですもんね。
今さん:そうなんです。Mac版は、もっと直感的に扱うことができて、ワンクリックで済ませられることも多かった気がします。
-第1世代から第2世代への転換は、逆に使いにくくなってしまったわけですね。
今さん:ええ。しかも、あの頃はMacとWindowsが混在した形になって、共用の周辺機器もずいぶんゴチャゴチャしてしまいましたからね(笑)。
-では、現行の第3世代はいかがでしょう。名誉は挽回できましたか?
今さん:ええ、かなり良くなりましたね。ブラウザベースなので、WindowsとMacを問わず使えますし。入力文字数の制限がなくなった点なども含めて、ずいぶん柔軟なイメージになりましたよね。
-ありがとうございます、ホッとしました。ご不満な点は?
今さん:一度にたくさんのデータを修正する時のことなのですが、一度データを吐き出してExcel上で作業を行っている間に、他の職員がI.B.MUSEUM上のデータを更新していることがあります。その後でExcelでの修正が終わったデータを一括入力すると、他の人の更新が元に戻ってしまいますよね。これはちょっと不便かな。
-仰る通りですね。根本的な部分なので、持ち帰って検討いたします。
今さん:それと、第3世代にする時にデータ移行も手伝っていただいたんですが、細かいミスが少しあったようで。今でも時々見つかりますよ。第2世代と第3世代で、データ入力のルールが違っていたりするからでしょうね。
-申し訳ありません。他には…?
今さん:あとは、細かい要望みたいなものですが、名簿管理で局面に応じて敬称を使い分けるような機能が欲しいですね。例えば、他の美術館さんへの送付物ですが、招待状は「館長 ○○様」という宛名になりますが、ポスターは「館 御中」で出しますよね。このあたり、ほんの少しの工夫でずいぶん違うのになあ、と思います。
-本当に、お返しする言葉がありません…。
今さん:いえ、問題点をお訊ねだったので敢えてお答えしただけで、文句を言ってるわけじゃないですよ(笑)。SEさんは本当に親切にしてくださって、私の無茶な質問にも一生懸命に対応してくださいますから、とても感謝しているんですよ。
-ありがとうございます。そう言えば、ロビーに置いてある来館者用の検索端末も、新しくなりましたね。評判はいかがですか?
今さん:とても早くなって使いやすくなったという話は聞きますよ。欲を言えば、もう少しこだわってもよかったかな、と思っています。子どもが触りたくなるような画面デザインとか。
-インターフェイスのお話は最近よく耳にします。今後の課題ですよね。
-では、心してお聞きします。I.B.MUSEUMは、100点満点で何点でしょう…?
今さん: ここまでの11年間の採点としては、80点くらいでしょうかね。
-ありがとうございます。20点の内容も明確ですし、これから挽回を目指して頑張ります。では、全国でも指折りの「I.B.MUSEUM歴」をお持ちの今さんから、これからシステムをお考えの館の皆様へ、アドバイスをお願いします。
今さん:「I.B.MUSEUMが何をしてくれるか」ではなくて、「I.B.MUSEUMで何をするか」を考えることが重要ですね。目的は館によって異なるはずですから、ここをしっかり考えれば、基本的な仕様は自然と固まるでしょうね。
-なるほど。それは弊社にとっても参考になります。さて、今後のお話ですが。今さんは、システムについて、何か将来的な展望をお持ちですか?
今さん: 次はインターネットの公開ですね。ただ単にデータをホームページに掲載するだけではなく、収蔵品の魅力やポイントがしっかり伝わるような発信方法を考えたいです。機能や演出の部分について、他館さんの事例を参考にじっくり検討していきたいと思います。そのためにも、データベースをもっとしっかり固めないと。
-情報発信の部分も、ぜひお手伝いさせていただきたいですね。本日はお忙しい中勉強になるお話をたくさんいただきまして、ありがとうございました。
<取材年月:2007年11月>
- Museum Profile
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米子市美術館
山陰地方初の公立美術館として昭和58年6月に開館。米子市民の創作活動発表の場として、市展・県展・米子市秋の文化祭や自主企画展を含め年に1~2回の特別展を開催。市役所、図書館が隣接するため、周囲もいつもにぎやかな美術館です。また、教育普及活動として、ミュージアムスクールや美術講演会・土曜講座・ワークショップなどを行って子どもから大人まで幅広く芸術に親しめる機会を作っています。地元ゆかりの作家を中心に、市町村合併でさらに収蔵品も充実。幅広い地元の人たちに愛される文化スポットです。
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