- vol.217取材年月:2024年10月名取市歴史民俗資料館
地元の方が地元の言葉で検索しても
しっかりヒットするデータベースを実現したい。歴史民俗資料館補助員 安孫子 礼美 さん
-こちらにはシステムのご導入前に一度お邪魔したことがあるのですが、その時は図書館だったように記憶しています。
安孫子さん:はい、震災後に建設された図書館が移転したことを受けて、歴史民俗資料館として再出発しまして。当館は、2020年の5月に開館しました。
-なるほど。安孫子さんご自身は、どんな経緯でこちらに?
安孫子さん:開館の6〜7年前から前身の施設に所属して、土器の修復などの仕事を担当していました。システムは開館準備の期間に導入し、開館に合わせてデータを公開した…という流れでした。
-ミュージアムの開館準備と言えばとにかく多忙で、システム導入からデータ公開までをきっちり間に合わせられるケースは、実は少数派なんです。すごいですね。
安孫子さん:いえいえ、ほかの博物館に比べれば点数が少ないですし、比較的データが揃っていた考古資料からのスタートでしたから。
-点数は決して少なくないと思いますよ。実際はかなりご苦労もおありだったのでは?
安孫子さん:そうですね、大変なこともあるにはありました。
-ぜひお聞かせください。
-では、ご苦労されたエピソードなどを、具体的にお願いします。
安孫子さん:特に大変だったのは、Excelデータの見直しですね。ほかの職員が作成していたファイルなのですが、数値のセルに文字列が入っていたり、西暦と和暦が混ざっていたり。表記の揺れも多かったですし、「壺」「壷」や「椀」「碗」など複数の漢字が使われる資料もありますし。
-表記揺れは仕方のないところですね。漢字については、そのまま残して異体字検索に対応させる方法もあります。
安孫子さん:はい、あの機能がなかったらもっと大変だったかも。当館でも民具の「地方名」などの管理で便利に使っています。
-地方名、ですか?
安孫子さん:漁網に使う「浮き」ってありますよね。あれは「浮子」とも書かれますが、地域によっては「アバ」とも呼ばれています。
-なるほど、準備がない状態で「浮き」で検索しても「アバ」はヒットしませんね。農作業の際に赤ちゃんを寝かせておく籠のことを「エジコ」と言ったり「エンツコ」と言ったり…という話はよく耳にしますので、地元の言葉で検索しても正確にヒットするデータベースは理想的です。
安孫子さん:そうなんです。たとえば、当館のデータベースをほかの地方にお住まいの方が検索することもあると思いますので、できる限りは頑張ろう、と。
-本当に素晴らしい試みだと思います。ところで、新しく増えた資料のデータ登録作業はどうされていますか?
安孫子さん:まずExcelでデータを整理して、年度末にまとめてシステムに一括登録しています。個別に登録しようとするとどうしてもクリック数が多くなるので、この方法が最もスピーディに作業できるかなと思いまして。
-システムではどうしても確認・保存を挟んで次に進むことになりますので、その方法がベストだと思います。ただ、先日実施したリニューアルで手順を少し短縮化できるかも知れませんので、よい方法が見つかったら改めてご案内しますね。では、ほかに大変だった点は?
安孫子さん:大分類を新たに作って、項目を設定していく作業でしょうか。元々のサンプル項目とは別の項目を使っているため、考古資料では一から作ったので大変でした。
-まったく新しい分野の資料が加わるケースがあるということですか?
安孫子さん:そういうこともあります。そうそう、個別の資料を登録して関連番号を振っているのですが、これをもとにサイト上でも「関連資料」として公開することは可能ですか?
-はい、可能です。(スマホでサンプル画面を開いて)イメージはこんな感じですか?
安孫子さん:なるほど、いい感じですね。「この資料を見せてください」とご来館になる方も少なくないですし、資料情報を公開するとやはり効果が感じられますから、これからも力を入れていきたくて。
-利用者の皆様に情報が届いたことを実感すると、ご苦労の甲斐がありますよね。
-さて、無事にデータ公開を実現して、その成果も見えてきて…と順風満帆のご様子ですが、今後についてはいかがですか?
安孫子さん:まずは引き続きデータ登録ですね。特に発掘のたびに増えていく考古資料は、うっかりしているとどんどん溜まってしまいますから。発掘調査報告書に掲載されるデータでもありますので、怠ることなく進めなければなりません。
-画像データはどうされているのですか?
安孫子さん:手が空いた時に自分で写真を撮影しています。データづくりはExcelで、年度末に画像と一緒にシステムにアップしたら、すぐに公開することになっていまして。こうしたデータが年間で千点単位でありますから、今後もしっかり対応していきます。
-それに加えて、先ほどの「地方名」にまつわる調査・登録もあるわけですよね…。もしかして、これらの作業を安孫子さんお一人でこなしておられるのですか?
安孫子さん:はい、私が担当しています。
-それはすごい。でも、ご負担が大きくありませんか?
安孫子さん:表記の揺れが発生しないようにするには、登録は一人で行なうのがベストかな、と。それに、地方名を調べて別名として登録する作業も、当面は私がまとめて行った方が効率的なように思うんです。
-確かに仰る通りですが、I.B.MUSEUM SaaSの機能で何かお役に立つものがないか、改めて考えてみますね。併せて、新インターフェイスへの切り替えのタイミングで、館の皆様にご参加いただいての説明会などはいかがですか?
安孫子さん:それはありがたいですね。ぜひお願いしたいです。
-では、弊社の担当にもお伝えしますね(メモ)。ほかにご要望などはございませんか?
安孫子さん:「インタレストマッチ」と言うのでしょうか、ホームページの閲覧者の方に対してご関心がありそうなほかの資料のページをおすすめできればと考えているのですが、難しいでしょうか。
-広告とは別のレコメンド機能ですね。現在のところは、先ほどの関連資料を予めご登録いただいて、画面下に並べることはできます。ただ、手動の作業で、スマートとは言えませんね。確かにシステム内でそういう工夫ができたら面白いと思いますので、研究課題とさせてください。
安孫子さん:あとは、新しいインターフェイスでの項目設定まわりの機能が気になっています。今後は考古・民俗以外の分野、甲冑など武具をはじめとする歴史資料などについてもデータ整備も進めていきたいので。
-すみません、項目設定につきましては、実装が少し先になる予定でして。お待たせいたしまして申し訳ございません。
安孫子さん:いえいえ。もちろん「将来の話」で大丈夫です。
-では、新インターフェイスへの切り替えとは別に、項目設定機能に実装などについて折に触れてお知らせしますね。本日はご多忙の中、本当にありがとうございました。
- Museum Profile
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名取市歴史民俗資料館
落ち着いた低層の建物が印象的なミュージアムで、ゆとりの敷地内ではあの雷神山古墳を10分の1ほどのサイズで再現した「古墳ふれあい広場」が目を引きます。館内の考古展示室では、その雷神山古墳を始め旧石器時代から平安時代までの資料を展示。歴史・民俗の展示室では、熊野三社や平安時代以降の歴史や暮らしの資料を紹介しています。文化財巡りや体験イベント、各種講座も活発で、親子揃って楽しめる地域のランドマークです。
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