ミュージアムインタビュー

vol.214取材年月:2024年5月対馬博物館

地域住人の皆様、観光客の方々、そして研究者にとっても
価値ある交流の拠点へと成長してきたいですね。
学芸員(主任)  小栗栖 まり子 さん
学芸員(主事)  谷尾 崇 さん

-I.B.MUSEUM SaaSをご導入いただいたのは、2022年4月の開館直前でしたね。それ以前の資料データはどんな状態だったのでしょうか。

小栗栖さん:私は2019年3月に着任したのですが、当時は紙の台帳といくつかのExcelのファイルが混在していました。と言うのも、対馬市には文化財課で管理していた資料のほか、2017年3月に閉館した旧・長崎県立対馬歴史民俗資料館から譲渡された資料がありまして。それらを新博物館で管理することになったんです。

-なるほど。組織が違うと、書式もデータ項目も違いますよね。

小栗栖さん:そうなんです。システム導入以前は大変で、バラバラの情報を集約する作業だけで2年近くかかりました。それも、細部まで確認していると終わらなくなってしまうので、ひとまず全体像と所在だけでも把握するところまでだったのですが。

-小栗栖さんは以前の職場でもI.B.MUSEUM SaaSをお使いいただいていたそうですね。

小栗栖さん:ええ。それもあって、本当は情報集約の段階からシステムを導入できればよかったんですけどね。当館は総合博物館ということで、分野ごとの項目のサンプルも参考になりますし。

-小栗栖さんは美術館にお勤めでしたので、美術がご専門ですよね。ほかに歴史、考古、自然史とある中で、谷尾さんのご担当は?

谷尾さん:私は自然史担当です。2022年の1月に着任しましたので、ちょうどシステムが導入された時期ですね。

小栗栖さん:開館にあたりデジタルアーカイブをホームページに一本化しようということになって、システム導入が予算化されたんです。

-なるほど。開設されたホームページの収蔵資料検索で早速I.B.MUSEUM SaaSのWeb APIをお使いになったのは、そういう背景だったのですね。

 


-谷尾さんのご着任はI.B.MUSEUM SaaSの導入とほぼ同時とのことですので、自然史のデータ項目はすでに固まっていたのでしょうか。

谷尾さん:はい、それをもとに少し意見を出させていただきました。もともと自然史の資料はさほど多くなくて、当館の開館が決まってから集まってきたんです。ただ、資料が日常的に増えやすい分野ですので、開館後は管理を任せていただいています。

-谷尾さんはI.B.MUSEUM SaaSの画面を初めてご覧になったわけですよね。第一印象はいかがでしたか?

谷尾さん:正直に申し上げてもいいですか?(笑)

-どうぞご忌憚なく(笑)。

谷尾さん:ちょっと昔の図書館の検索システムに似ていると思いました。でも、最近インターフェイスをリニューアルされたんですよね。送っていただいている案内を拝見して、切り替わるのを楽しみにしているんですよ。

-若い方が旧画面をご覧になると、少し古くお感じになりますよね(笑)。では、機能面はいかがでしょうか。自然史であれば、学名辞書として入力コードをお使いになることも多いのでは。

谷尾さん:はい、使い始めています。とは言え、登録されている資料は全体のごく一部に過ぎませんので、まずはデータの整備からですね。

-でも、ホームページではかなりの数が検索できるようになっていますよね? あれでもまだごく一部なのですか。

谷尾さん:植物はかなり登録が進んでいますが、あれは別部署でデータを作ってくれていたんです。地域おこし協力隊で来られた方が担当してくださったのですが、研究者として高い専門知識をお持ちで、とても助かりました。

-それはすごい、協力隊の方がたまたま専門家だったということですか。谷尾さんがそう仰るということは、大学や自然史博物館の学芸員のような人材ですよね。

谷尾さん:対馬は日本の豊かな生物相がどう成立したのかを知る手がかりとなる場所でもありますので、もとより多くの自然史研究者が訪れてくださるんです。当館は、そんな方々の交流拠点の役割も果たしていきたいと思っています。

-素晴らしいですね。小栗栖さんは前職から続いてのご利用となりますが、何かお気付きの点はおありですか?

小栗栖さん:継続的な機能改善で不便だった点が少しずつ減って、すっかり便利になりましたよね。今年度からはデータ整備やシステム運用を谷尾に引き継いでいますので、これから彼が利用の幅を広げてくれると思います。

谷尾さん:差し当たって、分野ごとに年間の登録件数の目標を設定したんですよ。私も含めてみんな忙しくてなかなか資料に当たる時間がないので、「週に1時間は収蔵庫に入りましょう」と。

-それは全国のミュージアムにもお知らせしたい取り組みですね! でも、システムのご利用が深まると、気になることも出てくるのでは?

谷尾さん:図書の分類や項目については、十進分類法も参照しながら見直しを始めました。分類ごとに異なる項目を設定できるのは嬉しいのですが、ひとつの項目をたくさんの分類に設定する時に一括処理のようなことできると便利かなと思います。

-なるほど、作業量を減らしたい場面ですよね。社内で検討してみますね(メモ)。

 


-先ほど「対馬の魅力」というお話がありましたが、やはり観光や地域とのつながりを博物館としても意識されているのでしょうか。

小栗栖さん:そうですね、市としては観光に力を入れています。I.B.MUSEUM SaaSは所蔵資料の情報を多言語で外部に公開できますが、この利用料金で収蔵品管理に加えて観光面にまで貢献してくれるという点で、市の評価も高いんですよ。

-恐れ入ります。I.B.MUSEUM SaaSは離島のミュージアムも多数ご利用くださっているのですが、観光と同じくらい、地元の方々との絆づくりにお役立ていただいているんですよ。

小栗栖さん:あ、まさに当館も同じです。特に調査については地域の皆様にご協力いただいていて、本当に助かっています。いま開催中の対馬の画家についての展覧会も、準備段階から地元の方々に情報をお寄せいただいたんですよ。

-地域の皆様としても、地元の博物館の展覧会に貢献できたとなれば愛着もひとしおですよね。

小栗栖さん:先ほど自然史研究者の話が出ましたが、他の分野の専門家も協力に来てくださるんですよ。対馬は美術に携わる者にとっても「一度は訪れたい地」なので、地域の皆様と一緒に美を見つけて、その魅力を発信していければと考えています。

-観光客のおもなしに加えて地域内の交流にもご活用いただけるのは、本当に嬉しく思います。

谷尾さん:データベースはこれからですけどね。資料はどんどん増えますし、収集しながら入力するわけですから、100%を登録できたとなることは今後もないかも知れません。

-総合博物館の宿命ですよね。

谷尾さん:資料の継承とともに、収蔵品を増やして展示を充実させていくことも重要な役割ですからね。当館でも積極的に収集していこうという方針ですので、何とかついていけるよう登録を頑張ります。

-お二方のお話をうかがっていると、よい博物館にしようというお気持ちが伝わってきて、元気が出ます。今日はお忙しい中にお時間をいただきまして、本当にありがとうございました。

Museum Profile
対馬博物館 独特の自然や歴史が育まれてきた対馬の地で2022年春にオープンした総合博物館。敷地のすぐそばには対馬の大名家である宗家の本城であった金石城の城壁が残る一方で櫓門が復元されるなど、新しい建物と往時の面影が調和的に共存する風景が観光客からも人気の的に。子ども向けやファミリー向け、高齢者向けなど、地域住人が気軽に参加できる多種多様なプログラムを提供し、早くも対馬の人々の暮らしに溶け込む地域に根ざしたミュージアムです。

〒817-0021 長崎県対馬市厳原町今屋敷668-2
TEL : 0920-53-5100
ホームページ:https://tsushimamuseum.jp/