ミュージアムインタビュー

vol.211取材年月:2024年1月パルテノン多摩ミュージアム

活動の成果がすぐにネットで公開される仕組みは
市民学芸員の皆さんからも喜ばれています。
学芸担当係長(学芸員)  橋場 万里子 さん
学芸員  仙仁 径 さん

-2021年度からI.B.MUSEUM SaaSをご利用いただいていますが、まずはご導入のきっかけからお聞かせください。

橋場さん:当館は、多摩ニュータウンを撮影した膨大な数の写真を収蔵しています。東京都やUR都市機構から寄贈いただいたもの、当館の職員やボランティアが定点撮影したものなどさまざまです。以前にもWEBでの公開はおこなっていましたが、プラットフォームやサーバの問題があり、移転に高額な費用がかかることが課題でした。そんな中で、2022年のリニューアルで「地域まるごと博物館」のコンセプトのミュージアムを作ることになったことから、導入を決めました。

-ご導入では、どんな点を重視されましたか。

橋場さん:特に、自分たちでデータベースの更新ができる機能が重要でした。当館は、多摩市の地域まるごと博物館の起点となる立場にありますので、市民学芸員が調べた情報を素早くアップできることがポイントになります。また、ポケット学芸員などのアプリも、地域まるごと博物館をつくっていくうえで活用できると思いました。

-市民学芸員とは素晴らしい制度ですね。

橋場さん:地域まるごと博物館は、街全体をミュージアムに見立てて地域をつないでいく構想ですが、それをつなげるのが市民学芸員です。2019年に養成講座が発足して、現在は3年任期で活動していただいています。

-どんな活動をなさっているのですか。

橋場さん:館の企画へのご協力をお願いするほか、市民学芸員ご自身にご提案いただくこともあります。たとえば街角のパブリックアートを調査してリスト化していただき、その成果をもとに鑑賞ツアーや展示をおこなったほか、データは写真と一緒にシステムに登録しています。他にも、多摩市内に多数ある橋や、村絵図、多摩ニュータウンの団地の外壁の色彩調査、地域の魅力ある場所を描いた子どもたちの絵を使ったトレーディングカードなど、多様なプロジェクトで活躍されています。

-それは本格的ですね。でも、続々と情報が集まってくると、館の職員の皆さんもチェックが大変になりますね。

橋場さん:そうですね。当館の学芸員は私と仙仁の二人体制なので、何とかついていけるよう頑張っています。

-えっ! 総合博物館の規模で、デジタルミュージアムを運営中で、しかも市民学芸員との協働までお二人で切り盛りされているのですか! よくシステムの導入まで手が回りましたね。

 


-では、その導入時のお話をお聞かせください。

仙仁さん:当時の資料データベースはFileMakerやITに詳しいボランティアが作ったマクロを組んだExcelが中心で、今も使っています。I.B.MUSEUM SaaSはそれらの入れ替えではなく、デジタルミュージアムのためのシステムという位置づけで導入しました。

-ということは、データ移行も含めて弊社にご相談くださったのでしょうか。

仙仁さん:いえ、そこは自力でクリアできました。データ自体はExcelやFileMakerから移行したのですが、項目設定の方法などは御社のご担当の方に教えていただきながら、一括登録から公開ページの設定、ポケット学芸員の公開までを館内で行いました。

-それをすべて仙仁さんが? 一括登録は初見では難しいと評判なのですが(笑)。展示リニューアルのための休館時期を利用されたのですか?

橋場さん:いえ、大規模改修で、引っ越しも含めてむしろ休館時期の方が多忙で。アウトリーチ活動のほか、市政施行50周年記念誌の編集事務局も担っていましたから。

-それを全部お二人で…?

橋場さん:はい。その時期は、システムの立ち上げは仙仁が中心で、記念誌は私が中心という役割分担でした。オープン後は私もシステムの使用を始めて、ホームページと連携させたりしました。

-いまホームページで公開されている「地域資源データベース」では、I.B.MUSEUM SaaSの機能をベースにしつつ独自に工夫されていますが、それも?

橋場さん:はい、I.B.MUSEUM SaaSを活用しているのは、まさにこのデータベースなんです。入口ページはホームページの編集機能を使って自作しました。

-市民学芸員のプロジェクトが増えると、データベースのジャンルも増えるということですよね。システム任せでは検索トップがどんどん複雑になるはずですので、この入り口ページだけでも力のいれ具合が分かります。

 


-よくぞここまでと言いたくなるほど使いこんでくださっていますが、その分、当然ながら気になる点もおありですよね?

橋場さん:そうですね、管理システムにある除外検索は公開機能でも使いたいですね。それから画像の見せ方ですが、拡大・縮小の動きがもう少し滑らかだと嬉しいです。あとはブックページャーですね。最初は少し小さめにポップアップしますが、せっかくなので大きく開くと迫力があるのでは。

-拡大画像ビューアは改善の余地がありますね。ブックページャーはブラウザの設定など環境要因がありそうですので、少し調べてみます(メモ)。

仙仁さん:解説文の途中にURLが出てきた時に、それがリンクになると使いやすいと思います。それから、私が担当する自然史分野はサイエンスミュージアムネットにデータを提供しているのですが、データの作成作業がスムーズになるとありがたいです。

-サイエンスミュージアムネットに向けたデータの出力は、項目のプリセット化など工夫できると思いますので、担当とも相談してみます(メモ)。

橋場さん:そうそう。公開側の検索結果で3種類の表示の切替ボタンをオンにした時、画像のタイル表示を初期設定にできたらいいなと思っていたんです。あとは、利用者の方が気に入ったものを登録できるマイページのような機能が欲しいかな。チェックしたものでそのまま閲覧申請書を作れる…とか。

仙仁さん:それと、標本ラベルの出力機能もカスタマイズして使っていきたいと考えています。

橋場さん:もうひとつ、ポケット学芸員の言語選択はトップページから行いますが、どのページからでも切り替えられるとありがたいです。

-(全力でメモしながら)外国人の方がご利用になる時は、最初に母国語になっていないと館を選びにくいと考えてトップに置いたのですが、それではご不便な場面がおありなのでしょうか。

橋場さん:ええ、当館ではiPadを設置したキャスター付きの台を押しながら展示をご覧いただけるサービスを採り入れていまして。最初から当館が選択された状態の画面を準備していますので、言語選択はその後になるんです。

-なるほど、そうしたケースもあるのですね。勉強になります(メモ)。

橋場さん:でも、市民学芸員の活動成果がすぐに公開できる仕組みを実現できたのは、本当にありがたく思っているんですよ。皆さん喜んでくださっていますし、つい先日はクラウドファンディングの資金調達で撮影した航空斜め写真もすぐに公開できましたし。

-ありがとうございます。それにしても、本当に使いこなしてくださっていますね。

仙仁さん:今後は収蔵品管理システムとしての利用も考えていて、ジャパンサーチとの連携などにも力を入れたいと思っていますので、まだまだこれからです。

-市民学芸員といい、クラウドファンディングといい、たくさんの人々と繋がっての成果を公開するツールとしてお役立ていただいていることは本当に嬉しく思います。本日はご多忙の中、本当にありがとうございました。

Museum Profile
パルテノン多摩ミュージアム ニュータウンで有名な一方で、古い寺社や里山などの歴史や文化にも恵まれた多摩市。周辺では「地域まるごと博物館」として多様な活動が展開中で、その中核的な拠点として親しまれているミュージアムです。この地の歴史や文化、自然が分かりやすく展示する総合博物館である一方で、地域の情報を得たり発信したりできるステーションの役割も。また、市民学芸員による展示や情報発信も活発で、市民文化の中心に位置する重要施設です。

〒206-0033
東京都多摩市落合2丁目35番地
電話番号:042-375-1414(代)
ホームページ:https://www.parthenon.or.jp/museum