ミュージアムインタビュー

vol.203取材年月:2023年5月武庫川女子大学附属総合ミュージアム

登録文化財の情報公開という責任を果たしながら、
データをより広くご活用いただける環境づくりを。
館長         横川 公子さん
資料データ化担当   櫻谷 かおりさん
学芸員        平 法子さん
助手         並木 晴香さん
学芸員/非常勤講師  森 ゆかりさん
嘱託研究員      小林 政子さん

-開館前の2019年からI.B.MUSEUM SaaSをご利用いただいていますね。まずは導入前のご様子からお聞かせください。

櫻谷さん:当時の担当者から聞いた話ですが、収蔵品のデータはExcelで整理していました。寄贈されたコレクションごとに20枚以上のファイルに分かれていました。

-それはすごい。ひとつのデータベースにまとめるだけでも難作業になるはずですから、よく統合されましたね。と言うか、それだけのファイルを日常的にお使いだったのですか?

櫻谷さん:そのように聞いています。たとえば特定の着物の写真なら、ひとつずつExcelを開いてデータを探して、見つけたらそこに記載されている番号から今度は写真を探す…という作業を強いられていて。まずはこの状態を何とかしたかった、というのが導入の大きな理由です。

横川館長:それから、データを一般公開することも大きな目標でした。お陰様で、そちらは順調に進んでいるのですが…。

-公開側は順調ということは、やはり管理側で何かおありですか?

横川館長:最初に御社のご説明をうかがった時は使いやすそうだなと思ったのですが、思うように使いこなせていなくて。

-それは申し訳ございません。どんなことにお困りですか?

横川館長:探したいデータをうまく検索できなかったり。たとえば着物の情報が見たい時、項目を指定して検索しても、登録されているはずの資料がヒットしないことがあるんです。

-多数のExcelデータを統合すると項目が増えやすく、使用する検索用語が別の項目に登録されていると、項目指定検索でヒットしない…といったケースが発生しがちなんです。弊社側でも、その可能性を予測してお手伝いすべきでした。大変失礼いたしました。

櫻谷さん:いえいえ、項目設定は館内で検討して決めたことですから。Excelの数が多く、資料の種類も多いのでミュージアム資料と学院資料が混在していて、もともと項目体系が複雑です。

横川館長:実物資料のほか関連資料や教育資料もありますし、生活財は民俗資料としての情報も必要になります。そもそも、着物は名称からして独特ですから。

-なるほど。とすると、ほかの分野とは情報の粒度がかなり違いそうですね。

櫻谷さん:そうですね。寸法ひとつを取っても、尺だけのもの、袖の寸法まで登録されているものなど、ほかの分野とはデータの内容が異なりますし。言われてみれば、Excelの時代から着物類は項目が多かったですね。

-他館では着物に特化したデータベースを構築された例もあるくらいですから、専門性の高さが伝わってきます。項目の見直しを実施されるなら、今度こそしっかりサポートさせていただきますので、ぜひお声かけくださいね。

 


-ほかには、どんなシーンでご利用でしょうか。

平さん:展示を考える際によく使います。私も目的の情報にうまくヒットしないことがあります。たとえば「花柄の振袖」を探したいときに「花柄」「振袖」と入れると大量に表示されてしまって。

-ちょっと操作が分かりにくくて申し訳ないのですが、おそらく「or」の条件で検索なさっているのでは。「花柄、または振袖」でなく「花柄で、かつ振袖」なので、「and」で検索すると目的の資料がヒットすると思います。

平さん:なるほど、確認してみます。あとは、曖昧なキーワードで検索できると助かります。

-類義語辞書で対応可能です。自由に登録できますので、改めてご説明しますね。ほかに気になるところは?

櫻谷さん:クラウドサービスなのでインターネットの接続が必要なのはわかるのですが、オフラインでも利用することはできますか?

-どんな使い方を想定されていますか?

櫻谷さん:当館は離れた場所に収蔵庫があるのですが、インターネット環境が十分ではないんです。収蔵庫内でデータを見られると便利かな、と。

-なるほど、フル機能ではなく、資料情報を閲覧したいということですね。現在開発中の新しいインターフェイスではスマホでの使い勝手も向上しますので、そうしたニーズは高まるかも知れません。さっそく社内で議論してみます。(メモ)

並木さん:私は着任して日が浅いのですが、印刷が思うようにいかなくて。出力したい項目がプリントアウトされないんです。

-分かりづらくてすみません。「印刷」ボタンで帳票の名前を選ぶと、その帳票に設定されている項目内容で出力されるんです。「ページ印刷」を選べば、画面に表示されている状態のままプリントアウトできます。

並木さん:なるほど、さっそく確認してみます。

-そのあたりもリニューアルで分かりやすくなると思います。ところで、データ登録のほうはいかがでしょう?

櫻谷さん:新規登録はかなり進んでいます。ミュージアム資料は、この2年ほどで3万6千点を超えるくらいにまで増えています。学院資料は、昨年1月から今年4月までの間に約9千点から2万1千点になりました。

-ご多忙の中でも順調そのものですね。画像も登録していますか?

櫻谷さん:ええ、まだまだこれからの段階ではありますが、目で確認しながら1点ずつアップしています。リニューアルでは画像の一括登録機能が使いやすくなるようなので、楽しみにしています。そうそう、あとはデータの更新履歴があれば便利かな、と。

-更新作業そのものの履歴ですか?

櫻谷さん:ええ。誰かがデータを更新して、そのデータを別の人が見直す時に、更新されていることが分かると安心ですよね。どの部分を更新したのか確認してから作業することもできますし。

-なるほど、それは便利かも知れませんね。これも議論してみますね。(メモ)

 


-ところで、システム導入からデータ公開までの期間が短かったですよね。

横川館長:はい、2020年12月に公開スタートしています。主に展覧会目録に掲載したものから順に公開を進めています。コロナ禍で展覧会の開催が不安定になったこともあって、せめてデータの公開だけでも行いたいと。また、登録有形民俗文化財を管理する責任として公開を求められる側面もあります。

-利用者の皆様の反応などはいかがでしょうか。

横川館長:上々だと思います。学生や研究者の方々のご利用のほか、たとえばアメリカの大学院生が論文に画像を使いたいという問い合わせもありました。訪日経験がない方のようですので、オンラインで公開したデータベースをご覧になったのだと思います。

-素晴らしいですね、専門性の高いデータベースらしい効果だと思います。では最後に、今後の展開などについてお聞かせください。

櫻谷さん:項目体系の改善を除くと、当面の目標は画像をさらに登録して公開データを増やすことですね。登録文化財の公開情報も深めていきたいですし、個人的には3Dデータなどにも挑戦したいと思っています。

横川館長:登録したものから順次公開というスタイルで、スピードアップしていきたいですね。

-項目の見直しを開始される際には、ぜひご一報くださいね。本日はお忙しいところありがとうございました。

Museum Profile
武庫川女子大学附属総合ミュージアム 1939年の創設以降、女子教育分野に足跡を築く武庫川学院の80周年事業の一環として2020年にオープン。学院資料・調査研究・保存修復研究・地域社会連携研究・教育の5部門から成り、開館と前後して登録有形民俗文化財に指定された「武庫川女子大学近代衣生活資料」9,092点をはじめとする約36,000点に及ぶ生活文化財のほか、学院史資料から美術工芸品まで豊富に所蔵。生活文化研究のランドマークとして、展示や講演会なども活発な注目施設です。

〒663-8558
兵庫県西宮市池開町6-46
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