ミュージアムインタビュー

vol.195取材年月:2023年1月市川市文学ミュージアム

一元管理された情報を、フロアの全員が快適に使える環境。
それだけでも、システム導入の価値はあると思います。
資料室 司書  皆川 ひろみ さん
資料室 司書  鵜沢 織絵 さん

-前身の市川市文学プラザからリニューアルオープンして、今年で10周年ですね。皆川さんは、当時からご在籍だったのですか?

皆川さん:はい、文学プラザの立ち上げの頃から資料整理の業務に携わっていました。企画展と資料整理を4~5人のスタッフで回していたのですが、その全員が司書と学芸員の両方の資格を持っていたんですよ。

-へえ〜、それはかなり珍しいのでは。初めて聞きました。

皆川さん:それでも企画展の業務との両立は難しくて、資料整理はなかなか進まなかったんですけどね。リニューアルの際に専門の学芸員が入ってくださって、私たちは資料班として今の仕事に落ち着くことができました。しかし文学ミュージアムになって映像や写真などが新たに入ってきて、なかなか追いつきません。

-こちらは文学系のミュージアムですが、そんなに写真資料を受け容れているのですか?

皆川さん:ええ、市が所蔵する地域に関する写真を当館で管理していますので。全部で5万7千点くらいあります。ほかの資料も5万点ほどあったので、Excelのリストでは管理が追い付きませんでした。その頃、御社にも提案いただいたのですが、コスト面の問題で導入には至らなくて。

-弊社がクラウドサービスを始める前のことですね。当時はどうされていたのですか?

皆川さん:しばらくAccessを使っていました。でも、複数の職員が同時に使えませんし、データが増えてファイルを分けると一元管理ができなくて不便でした。困っていたところに御社がクラウドサービスを開始されて、同じ市川市の東山魁夷記念館が導入されたと聞いて。

-近隣館の事例をもとにご検討いただいたのですね。そこからはすんなりと?

皆川さん:いえ、導入の直後が本当に大変でした。

-そのあたり、ぜひ詳しくお聞かせください。

 


-導入直後の問題とは、データの移行がうまくいかなかったとか?

皆川さん:いえ、その前のデータ整理の問題です。Accessから書き出したデータをI.B.MUSEUM SaaSにアップできるよう準備したのですが、それが思いのほか大変で。全角半角や年月日の表記の扱いなど、御社のご担当にもご指導いただきながら、数か月かけて整備しました。

-それまでしっかりデータを作ってこられた証ですよね。大仕事を終えられて、移行されてからの使い勝手はいかがですか?

皆川さん:それはもう、Access時代のようにいろんなファイルを開いてデータを探すことがなくなっただけでも快適で(笑)。みんなで同時に使えて、ストレスもなくなりました。

-それは何よりです。鵜沢さんは、導入後のご着任ですよね。業務ではご活用いただいていますか?

鵜沢さん:はい。先ほど話に出た写真データの登録の入力作業もありますので、日常的に使っています。

-既存資料のデータ整備はどのくらい進んでいるのですか。

鵜沢さん:約5万7千点のうち、タイトルや撮影日などの基本情報を登録し終えているのは半数くらいでしょうか。画像データもあるのがそのうち半分ほど、データを公開できているのは約1万点ですね。

-その規模の件数が画像登録を終えているということは、まとめてアップロードする機能もご利用だったのでしょうか。

鵜沢さん:はい、頑張って勉強しました。でも、あれ、手順が難しくないですか(笑)。

-ちょうど先日、私も手順を細かく確認する機会があったのですが、難しかったです(笑)。でも、実は今年に予定しているリニューアルでグッと分かりやすくなるんですよ。間もなくお知らせをお送りできると思います。

皆川さん:毎月届けてくださっているニュースレターですよね。読んでますよ。

-ありがとうございます。ご感想は…。

皆川さん:あちこち「変わるらしい」ということは分かるんですけどね(笑)。実際に新しい画面に触れてみれば、もっと実感できるでしょう。

鵜沢さん:リニューアルの時には操作説明などをお願いできるのでしょうか。

-もちろんです。ぜひ館内の皆様にご同席いただければと思います。

鵜沢さん:でも、市の規定で、今後は画像の一括アップロードが難しいかもしれません。現在も、仮想環境に移行した後は1枚ずつ登録していますので。

-では、弊社でも他の自治体の事例を調べて、効率的な方法を検討してみますね(メモ)。

 


-写真以外の資料についてはいかがですか? やはり数が多いのでしょうか。

皆川さん:たとえば、ご遺族から土地・家屋をまるごとご寄贈いただくこともありますからね。図書・原稿・書簡だけでなくて、着物から日用品まであるんですよ。

-分類からして大変そうですね。

皆川さん:全て分類は、図書分類のような発想で体系を作ってあるんです。こんな感じで…。

-(表を見ながら)なるほど、しっかり作ってありますね。

鵜沢さん:「記念切手はどの分類だっけ?」となることはありますが、フリーワードで検索すれば大抵は見つかりますよ。ただ、映像分野だけは、根本的な見直しが必要だと思っています。

-ほう? それはなぜですか?

鵜沢さん:少し市川愛が強すぎるかなあ、と。大分類の先頭に「市川市に関わりがある映像か否か」があるような感じで(笑)。

皆川さん:それはそれで共感はできるんですけどね(笑)。でも、映像を管理するのに最適なデータ項目がどんなものなのか、いまひとつ確信が持てる状態になくて。

-では、弊社でも調べておきます。映像資料の管理に長けている館の事例もあると思いますので、探してみますね(メモ)。

皆川さん:ぜひお願いします。あと、いくつか質問があるのですが。まず、バーコードを印刷できる機能はありますか?

-資料に貼られるんですよね。ちょうどリニューアルでも議論中ですので、今後の課題とさせていただきますね。

皆川さん:あとは、指定の日付のバックアップデータが取り出せるといいなと思っています。いまは月に一度、全データをダウンロードしているのですが。

-災害時に対応できるようバックアップデータは毎日遠隔地に保存しているのですが、任意に取り出すとなるとかなり大掛かりな仕組みづくりが必要となりますので、今は搭載しておりません。こちらも検討課題とさせていただきます。

鵜沢さん:それから、画像の不正利用に対応する方法はあるでしょうか。半透明の文字を画像に載せる機能とか…。

-いわゆる「見える透かし」は画像そのものに手を加えることになることから、正直、賛否の分かれるところです。現在は、拡大画像には目に見えないタイプの電子透かしを埋め込んでありますので、不正取得を見つけたら自館の画像であると示すことはできます。それをホームページ上で警告文として載せて対策とする館は多いようですね。

鵜沢さん:なるほど、参考にさせていただきます。

-ほかにもご質問などがございましたら、どうぞご遠慮なくお問い合わせくださいね。本日はお忙しい中、誠にありがとうございました。

Museum Profile
市川市文学ミュージアム 多くの作品を生み出した地である千葉県市川市の文学館。映画、演劇、小説、詩歌、文芸の5部門に分けて資料が展示されており、タッチパネルでは映画や文学の情報が沢山盛り込まれています。資料室では、所蔵する永井荷風、水木洋子や小島貞二、宗左近をはじめ、市川ゆかりの文学に関する多様な資料が閲覧可能。多彩な企画展が人気を集めるほか、同じ建物内に中央図書館や中央子ども館、教育センターを併設し、いつも活気に包まれたミュージアムです。

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