ミュージアムインタビュー

vol.187取材年月:2022年8月高橋まゆみ人形館

データベースに登録するために収集した作品データが
新しい保管方法の開発へとつながりました。
データベース担当   小林 芽久莉 さん

-I.B.MUSEUM SaaSをご導入いただいてから、もう6年半ほどになりますね。

小林さん:私は2015年に着任したのですが、その頃には導入がほぼ決まっていました。前々支配人がしっかりしたデータベースを作りたいと考えていたようで、体験版を使って研究していましたね。

-小林さんご自身は、初めてI.B.MUSEUM SaaSをご覧になった時、どんな印象をお持ちになりましたか?

小林さん:データベースシステムを扱うこと自体が初めてでしたので、分からないことだらけでした。はじめは資料利用のデータを削除する方法が分からなくて、やむを得ず御社の方にお願いして登録済みのデータをすべて消去してから登録をやり直したこともあります。

-初期化されたわけですね。初めての操作する方には少し紛らわしい部分があったようで、申し訳ございませんでした。間もなくリニューアルを予定していますので、もしもご不明な点が出ましたらご遠慮なくお声掛けくださいね。

小林さん:ありがとうございます。よろしくお願いします。

-さて、こちらのミュージアムは人形作品に特化した全国でも珍しい施設ですよね。データはどんな方法で管理されているのですか?

小林さん:メインは作品群と人形、それに小道具を加えて3種類のデータで構成されています。その他に写真パネルか文字キャプション等を登録しています。小道具は作品に付随するものですので、必然的に数が多くなります。作品群は、展示する際にセットとして扱うものですね。

-以前、ブログで展示をご紹介させていただいたことがあるのですが、たとえば家族とか、お爺ちゃんお婆ちゃんとか。

小林さん:はい。すべての作品は、すでにデータの登録を完了しています。

-順調なご様子ですね。システムの導入前はどうなさっていたのですか?

小林さん:当館は2010年に開館したのですが、その当時はExcelのリストのみだったそうです。寸法など細かい情報がなかったので、システムの導入に併せてスタッフ総出で採寸したデータを私がシステムに登録しました。

©高橋まゆみ人形館

-館をあげての作業ですね。数はどのくらいでしたか?

小林さん:当時は400体ほどでしたね。この時に正確な寸法を把握できたことから、それぞれ専用の箱を用意することができましたので、作品の管理状態も向上したと思います。

-それは素晴らしい。システムの導入は作品に関する付帯情報の充実に直結しますが、作品そのものの保管方法の改善にまで貢献できたのであれば、なお嬉しく思います。

 


-ホームページでは画像を閲覧できますが、図録などは写真も素晴らしいですよね。あれはどなたが撮影されているのですか?

小林さん:小道具は当館のスタッフで撮影していますが、作品群や人形の写真は写真家にお願いして、それをI.B.MUSEUM SaaSに登録しています。

-ということは、システムの管理画面を開くたびに癒されそうですね。構図も色味も、作品世界を際立てるものばかりですものね。

小林さん:ありがとうございます。企画展の立案時や他館への貸出時に写真があると、バランスを考えるのに役立つんです。たとえば、現在開催中の企画展(※)は「ネコ」がテーマなのですが、データベースの導入で作品を絞り込むのが本当に便利になりました。

-検索でうまく絞り込めるのは、データがしっかり登録されているからこそですね。クリップリスト機能はお使いになっていますか?

小林さん:もちろんです。検索結果から抽出したり、除外したりしながら煮詰める時には、クリップリストを多用していますよ。

-ありがとうございます。ほかにはどんな機能をお使いになっていますか?

小林さん:帳票関連の機能はよく使いますね。番号と名称、画像、それに一緒に入れる小道具を表示した状態でシールに印刷して、ラベルとして箱に貼るようにしています。実は、タイミングよく帳票作成機能がI.B.MUSEUM SaaSに搭載されたと知って、使ってみたんですよ。

-それはよかったです。でも、帳票の作成は、慣れるまで難しかったのでは?

小林さん:はい(笑)。実は調整が難しくて、サポートの方にずいぶん助けていただきました。

-微調整は、少しコツが要りますからね。将来的には、もっと楽に作業できるよう改善できればと考えています。

 


©高橋まゆみ人形館

-ところで、展示ガイドアプリの『ポケット学芸員』もご利用いただいていますよね。確か、英語の案内からスタートされたように記憶しています。

小林さん:はい、その通りです。スキー場や野沢温泉が近い立地で、最近は「温泉に浸かるニホンザル」でも有名になりましたので、観光客が増えていたんです。コロナ禍の前は、それこそ冬期になると毎日のように外国の方が来られていましたので、ご案内用のガイドを作ることにしたんです。

-何か工夫された点などはありますか?

小林さん:日本の生活様式や習慣をもとにした作品が多いので、文化的な背景をできるだけ丁寧に解説することを心がけました。たとえば「だるま」や「餅つき」にしても、作品の本質に触れていただくにはそれぞれ詳しい説明が必要になりますから。

-なるほど、それは原稿の準備が大変そうですね。

小林さん:ええ、準備には想像以上に時間がかかりました。でも、ナレーションは前々支配人の知り合いの方が引き受けてくださったので、とても助かりました。

-せっかく用意された直後に外国人観光客が減ってしまったのは不運でしたね。

小林さん:そうですね。その後に日本語のナレーションを作成しましたが、こちらは私たちスタッフだけで対応できました。

-ご来館の皆さんもお喜びでしょうね。

小林さん:はい。当館は作品をゆっくりご覧になる方が多いのですが、特に展示ガイドをご利用になる方はその傾向が顕著なようですので、とても有意義だと思います。

-何かご苦労された点などは?

小林さん:やはり外国の方へのご案内ですね。アプリでは、以前は利用館を地方から選ぶ仕様でしたが、「中部地方」からしてご説明がちょっと大変で。

-お手数をおかけいたしまして…。

小林さん:いえいえ、今は現在地から選ぶことができて、とても楽になりました。ただ、ダウンロードしていただくには、QRコードなどでダイレクトに画面が開くといいなとは思います。

-ほかのご利用館からもご指摘いただいておりますので、検討いたしますね。さて、作品データの公開についてはいかがですか?

小林さん:まだ館内で議論すべきことが多くて、具体的な検討はこれからという段階ですね。でも、一般の皆様に加えて他館の学芸員の方にもご覧いただければ、当館以外での企画展にもつながっていきますよね。

-つながると思います。事実、私が高橋まゆみさんの作品を初めて拝見したのも、首都圏の博物館の企画展でしたから。

小林さん:そんな広がりも目指していければと思いますので、私個人としては情報公開を準備していければいいなと考えています。

-弊社もお手伝いしていければと存じます。本日は前向きな話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました。

 


※ 企画展「ねこ 猫 ネコ!~気ままな遊び猫~」は2022年9月27日までです。

Museum Profile
高橋まゆみ人形館 菜の花咲く春、緑まぶしい夏、実りと紅葉の秋、一面銀世界の冬。人形作家・高橋まゆみさんが見た信州の原風景の中、人々の日常をイキイキと描く独特の作品世界を堪能できる長野県飯山市の人気ミュージアムです。館内には3つのギャラリーがあり、常時100体前後の作品を展示するほか、春と秋には新作人形のお披露目も。お爺ちゃんお婆ちゃんの豊かな表情、賑やかで温かな家族の食卓…忘れかけたものが心の中に蘇ることウケアイです。

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