新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の話題一色で塗りつぶされてしまったこの春。徐々に落ち着きを見せる日本では、そろそろ「新しい日常」への議論も始まっていますね。そんな中、全国のミュージアムでも、サービス再開へと向かう館が増えてきたようです。まだまだ油断は禁物ながら、まずは「第一歩」といったところでしょうか。
外出自粛期間中は閉館を余儀なくされていたミュージアムですが、インターネット上では多くの館が情報公開に取り組んできました。中には、いままでにない動画コンテンツの配信で注目を集めた館も。いまのところ、引き続き情報発信を行っている館も多いので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
というわけで、今回は、【Twitter編】【YouTube編】【おうちミュージアム編】と3部構成。あっと驚くトリビアから家族で楽しめるコンテンツまで、ミュージアムのネット配信のミニ特集をお届けします。
【Twitter編】
まずは、こちらから。リンク先は、金色の青銅器を紹介したツイートです。青銅器と聞くと、何となく青緑色に錆びた古道具のようなものを思い浮かべませんか? 「え、もとはこんなにピカピカなの?」と驚いてしまいました。こちらの復元青銅器は、大阪府立弥生文化博物館(大阪府和泉市)のとっておきの所蔵品。こうして画像から質感を想像してミュージアムコレクションに親しむのも、また一興ですね。
続いては、開催中止となった展覧会の解説を公開している神奈川県立歴史博物館(神奈川県横浜市)のツイートです。圧巻の情報量に加えて、画像はアップで見ることもできますから、まるで展覧会会場の風景が見えてくるようです。実は、弊社が展開している展示ガイドアプリ「ポケット学芸員」が貢献中。こちらのコンテンツは内容充実ですので、ぜひスマホにアプリをダウンロードしてご覧くださいね。
【YouTube編】
YouTubeのコンテンツからは、今春リニューアルを果たした萩博物館(山口県萩市)の動画をご紹介。館員の「お待ちしておりました」という歓迎から、臨場感たっぷりの映像が楽しめます。全長3mを越える深海魚・リュウグウノツカイの標本は、映像で見ても圧倒的な大きさ! 水にまつわる地理や歴史の紹介は、海に隣接し、三角州に位置する萩ならではの見応えです。動画は現在「その7」まで公開中ですので、飲み物を片手にゆるりとご覧ください。
開催予定だった展覧会『写真展 記憶のふりかえりをふりかえる』を、WEB企画展として再構築…というアイデアを実現したのは、舞鶴引揚記念館(京都府舞鶴市)。シベリア抑留から生還してきた引揚者の方々の記憶がどのように継承されてきたかをじっくりと解説するシリーズ動画が、続々とアップされています。このコンテンツを含めて、休館中は毎日インターネットで情報発信するとのことで、実に精力的な取り組みを展開中。2015年には所蔵資料がユネスコ世界記憶遺産にも登録されたミュージアム、今後の情報にも注目です。
※2020年5月25日より開館
こちらは、開催はされたものの、1カ月に及ぶ停止期間があった高知県立美術館(高知県高知市)の企画展『収集→保存 あつめてのこす』の紹介映像です。地域に由来する作品の収集経緯や、天災で被災し修復された作品、保存が難しい形態の作品などの解説が、10分ほどの動画に収められています。各地で天災が多発する昨今、「コレクションをいかに残して後世に繋いでいくか」については、ミュージアムにとって大きな課題。そうした切実な課題に向き合う企画展ですから、この動画の公開も重要な取り組みの一環と言えるわけです。
【おうちミュージアム編】
最後は、北海道博物館(北海道札幌市)が声をあげる形で始まった「おうちミュージアム」のご紹介。学校休校や外出自粛によって、長期間自宅で過ごし方さなければならない方のためにインターネットを通じて情報を届けようというムーブメントで、6月4日現在、なんと全国187館もが参加しています(※参考:参加館一覧は
こちら)(公開終了館あり)。
というわけで、いくつかの館の注目コンテンツを眺めてみましょう。
まずは企画の主導館となった北海道博物館から。「北海道地名しりとり」や「北海道ふくわらい」といった親子で地理を学べる教材を含み、20を超えるトピックが公開されています。料理好きの方は、アイヌの伝統料理のレシピを見ながら、新しいレパートリーに挑戦してみるのも楽しそうですね。北海道らしいアイデアがぎゅっと詰まったコンテンツ群は、「自宅で学ぶ」というコンセプトにふさわしい充実度です。
続いては、市民ミュージアム大野城心のふるさと館(福岡県大野城市)です。こちらはシェードの作り方を学べるのですが、難易度にバリエーションが設定されているので、子どもと一緒に親も本気で頑張れるのがGOOD。そのほか、手軽に楽しめる塗り絵やパズルや、館内を描いたイラストから違いを見つけ出す「まちがいさがし」など、楽しい取り組みも。閲覧者だけでなく、館側でも新しいアイデアをどんどん試すことができるのも、「おうちミュージアム」の魅力のひとつなのです。
島根県松江市の松江歴史館では、「おうちミュージアム」内でデータベースを公開中。気軽にテーマを選べば多様な収蔵品に出会えるのですが、実はこちらでも弊社のクラウド型収蔵品管理システムI.B.MUSEUM SaaSが貢献しています。歴史ある城下町らしいコレクションが画像付きで多数公開されていますので、ゆっくりとお楽しみください。ほかにも、展示解説シートや研究紀要といった館の魅力を深く知ることができるPDF資料も用意されていますので、地元にお住まいの方、松江付近にご縁をお持ちの方は、ぜひどうぞ。
イサム・ノグチの遊具彫刻「オクテトラ」の展開図! 思わず「これは見逃せない」と色めき立つような資料を公開しているのが、香川県立ミュージアム(香川県高松市)です。プリントアウトして組み立てるだけで、巨匠直伝(?)のミニオブジェが完成。作品の仕組みを理解できるだけでなく、そのまま部屋に飾りたくなるオシャレな仕上がりも嬉しいところです。そのほか、香川にまつわる歴史やアートを紹介した動画も充実。ミュージアムとしての活気が伝わってくるようなコンテンツ、おすすめです。
最後はこちら、熊本県立装飾古墳館(熊本県山鹿市)です。先ほどは自分で作れる展開図でしたが、こちらもさまざまな角度から古墳や発掘品を体験できる3Dデータが公開されています。ポイントを指定して古墳の中に入ったり、マウスをスクロールして外観を俯瞰したり…と、実物では不可能なIT時代ならではの楽しみを惜しみなく提供。ゲームのような操作性も楽しいので、子どもと一緒に思わず夢中になることウケアイです。
さて、いかがでしたでしょうか。各ミュージアムが自信を持って送り出す無料コンテンツの数々、ぜひご自宅からチェックしてみてくださいね。開放的な気分で自由に出歩くにはもう少し時間がかかりそうな気配ですので、皆様、どうぞご安全にお過ごしくださいね。