2020.01.28
歴史的景観を巡る出張…これって贅沢すぎ?
弊社は、僭越ながら「博物館専業」、即ち専門企業を名乗っております。それゆえに、関連施設を含めて「博物館」と聞けば、全国どこにでも足を運びます。日本国内である限りは、それが山奥でも、離島であっても。外に出るスタッフはそれぞれが年間で延べ200前後の博物館を訪れる計算で、筆者個人も数年で全都道府県を踏破する「旅がらす」的な毎日を送っております。
体調や気分に関係なく出かけますので、できれば「ちょっとした楽しみ」を見つけたいところ。鉄道が好きだったり、現地での昼食にこだわったり…とスタッフそれぞれですが、筆者の場合は、特に写真撮影でひと息つくことにしています。3年ほど前、縁あって手にしたクラシックカメラ。これをきっかけに、1年半ほど前からは並行して「3分間スケッチ」も始めました。
さて、先日、スケッチを見返している時のこと。絵の出来に一喜一憂しているうちに、弊社の出張がいかに美に溢れたものであるか、改めて気付かされました。博物館や関連機関、特に人文系の施設ではその土地の歴史や文化を保存・展示していますし、館の建物そのものからして歴史的建造物であることも少なくありません。日程的には体力的に厳しい強行軍も多いのですが、行く先々で歴史や文化の美に癒されているわけですね。
たとえば、こんな感じです。こちらは、先日訪れた滋賀県草津市の史跡、「草津宿本陣」です。
草津市と言えば、東海道と中山道が分岐・合流する宿場として栄えたまち。「本陣」とは、宿場町で大名や公家などが休泊した施設を指すようです。江戸から京都に向かう旅では、「あと1日」の場所にあたる宿です。旅人たちは「やっとここまで来たか」「もうひと頑張りだ」という想いでこの門をくぐったのだろうなあ。そんな想像を巡らせているうちに、自然に時代劇のワンシーンのような賑わいが、目の前に広がり始めます。
実際に足を運んでいただくと、私が抱いたイメージを共有していただけると思います。このスケッチの史跡草津宿本陣と草津宿街道交流館の情報はこちらをご覧ください。
●草津宿ホームページ https://www.city.kusatsu.shiga.jp/kusatsujuku/index.html
続いては、大阪府富田林市にある寺内町で描いたスケッチです。
この地域は、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されている全国で120か所の歴史的景観地区のひとつです。永禄初年頃(1558~1560年頃)、興正寺門跡証秀上人によって創建された興正寺別院を中心として発展した町で、古くから商売も盛んだったとか。趣に満ちた風景が広がっていて、まるでタイムスリップしたような感覚を味わえるんですよ。実際の街角では、観光と思しき方々と何度もすれ違いました。富田林市寺内町に関心をお持ちになったら、ぜひこちらをご覧ください。
●富田林市魅力発信観光ポータルサイト https://www.city.tondabayashi.lg.jp/site/kirameki/list419-1191.html
せっかくなので、もう一枚。歴史的景観と言えば、京都をあげないわけにはいきません。こちらは東山の小道から見た法観寺 八坂の塔です。
一帯は、観光客で大変な賑わい。漬物や乾物のお店が並んでいる様子も、歴史的景観の一部ですよね。そしてもうひとつ、着物姿の人々を描き込みたかったのですが、残念ながら画力が伴わず。今の私には、ちょっとハードルが高過ぎました。
お寺を通り過ぎて坂を登ると、霊山歴史館という幕末維新関連のミュージアムがありますので、街歩きコースに加えてみてはいかがでしょうか。
●霊山歴史館 http://www.ryozen-museum.or.jp/
撮った写真、描いた絵を並べてみると、さながら日本の素晴らしさを実感できる場所を狙って眺め歩く旅人のよう。もしかして、これほど贅沢な仕事、そうはないのでは? はい、自分でもそう思います。何もする間もなくトンボ帰りの日帰りや、移動に次ぐ移動で投宿直後に泥のように眠ってしまう過密スケジュールさえ何とかなれば…。