2012.02.02
公共施設の被災地 “応援”
先日、長野県小布施町の小布施町立図書館まちとしょテラソ様を訪ねました。
こちらは、Library of the Year 2011の大賞を受賞された図書館です。受賞理由として、「交流と創造を楽しむ文化の拠点」として、各種イベントの実施や地元の方100人のインタビューの電子書籍化を行うなど、小布施文化や地域活性化の拠点としての活動が評価された、とのことですが、司書さんが特技を活かして太極拳教室を開いているのにはビックリ。ほかにも、楽しいイベントが盛りだくさんです。そんな活動の積み重ねで、いつ行っても地元の人たちでいっぱい。特に子供たちは、「近所の自習室」という感じで来ているようです。地元住民の交流拠点としてしっかり根を張る姿は、地域博物館にもきっと参考になることがたくさんあると思いますので、また回を改めて特集させていただこうと思います。
そこで、ダンボールでできた本棚があったので、ちょっとわけを訊いてみました。
図書館長の話では、この本棚を作ったのは学生ボランティアだそうです。彼らは、震災から1か月もたたない2011年4月7日、宮城県気仙沼市で被災地支援活動を目的としてできた、house publishingという気仙沼出身の学生の団体で、避難所の間仕切りを作って設置する活動を行っていました。そのノウハウを活かして、本棚やいすも制作したら多くの人に喜ばれ、それが広がって長野県の図書館にも置かれるようになったようです。フリーペーパーを発行したり、本棚に広告を掲載したりと、ビジネスとして育ち始めているようで、館長は「今後、できれば購入したい」と仰ってました。
震災後、「義援金」「復興支援」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。それはとても大切なことだと思います。でも、個人的にはなんとなく違和感を感じていました。この話を聞いて、自分が感じた違和感の理由がわかった気がします。被災地の人たちは、「転んでもただでは起きない」と、こうして新しいビジネスを見出し、自力で立ち上がろうとしています。長野県の図書館がダンボールの本棚を被災地から購入する、というこの話は、一方通行の支援ではなく、立ち上がろうとする人に少しだけ手を貸すという行為で、そのあと、自分の足で歩いて行けるように「応援」するようなことだと思います。「支援」は未来永劫続けられるものではありません。いつかは終わり、そのあとは自力で進んでもらわなければならないのです。だから、立ち上がろうとしている人には、「支援」ではなくて「応援」することが大切。
被災地の若者の活動を耳にしてすぐに「応援」という行動に出る。館長のこの心意気が、地域に愛される図書館の姿とつながって見えました。インターネットを活用したプロモーションが花盛りの現在ですが、人を動かすのは結局は「心」なんだよな~。と、ITを生業にしている者としては少しだけ複雑な、でもあったかい思いに満たされる出張でした。