2018.12.02
上手なスケッチに必要なのは、数学のセンス?
先日、このコーナーで「30分スケッチを始めた」とご報告しました。少しペースを落としてはいるものの、その後もちょこちょこと続けています。いまやすっかり「癒しの時間」となりました。
きれいな風景、かっこいい建物を描いて気分転換。いつも軽い気持ちで臨んでいたのですが、ある日、「これ、結構疲れるな」と気付きました。と言うか、描きあがる頃にはドッと疲れを感じることもあります。
リフレッシュになっていることは確かなのに、どうして疲れるのだろう…と疑問だったのですが、とある風景を描いていて、ふと思い当たりました。もしかしたら原因は自分の「文系脳」にあるのではないか、と。
こちらは、その時に描いたスケッチです。
ご存知の方も多いと思いますが、これは神奈川県立歴史博物館の建物です。1904年に建てられた旧横浜正金銀行本店で、ネオ・バロック様式とのこと。柱にある石の境目の線、何本目に隣の窓が来る…といった配置を正確に描かなければ、あとでつじつまが合わなくなるんですよね。
実は、このスケッチは失敗作となりました。中央下の窓を、実際より下に描いてしまったのです。間違ったことに気づいた私は、窓の下の石の高さを実際より極端に縮めてごまかしてしまいました。時間がないから仕方がない…と自分を説得しましたが、失敗はやはり失敗です。
リフレッシュのための個人的なレジャーである「30分スケッチ」ですら、ほんの少しのズレが全体の失敗につながってしまうわけです。これが本当の作品づくりだったとすれば、どれほどの集中力が、そして論理的思考が必要となるのでしょうか…。
次のスケッチも同様です。こちらは、兵庫県西宮市の武庫川に架かる橋。私の故郷の風景です。
ちょっと広重を気取ってみよう…ということで、手前の松の木を実際より大きく描いて、遠景と近景の対比を強調してみました。そこまでは良かったのですが、右の松が大きすぎて「バランスが悪いかな」と思った私は、左の端に架空の建物を描いたのです。
位置関係としては、左の建物は、松の木の奥に見える建物よりはるか遠くにあるはず。だとしたら、1フロアあたりの高さもずっと小さく見えることになります。間違いに気付いた私は、側面を黒く塗りつぶして、何階建てなのか判別できないようにする…という姑息な手段に出てしまいました。
この2点をスケッチを眺めるほどに、私が好きな作品群との埋めがたい差を思い知らされます。ヨーロッパの街並みを描いた昔の洋画家の作品も、宿場町などを描いた浮世絵や日本画も。作品の完成までには、美的センスとは別に、想像を絶するほどの計算作業も必要だったのではないだろうか…。次の訪問先の学芸員さんに訊いてみようと思います。
気楽に始めたスケッチですが、1枚描くと、肩も背中も少し張りを感じます。それよりも、苦手な理系的な思考で、作業を終える時に「疲れた〜」と声が出てしまうこともしばしば。でも、この小さな達成感が楽しかったりするんですよね。
「次こそはもっと上手に」という向上心も癒しの種になるんだな…と改めて気付いた今日この頃です。