- vol.132取材年月:2017年11月高知県立文学館
「無理」で終わらず、一緒に方法を考えてくれるかどうか。
パートナー選びでは、そんな姿勢も重視すべきと思います。学芸課長 津田 加須子 さん
学芸課 小松 路代 さん
学芸課 檜垣 佳甫 さん
-開館20周年を迎えられたとのこと、おめでとうございます。
津田さん:ありがとうございます。当館は1997年11月2日に開館したのですが、御社とのお付き合いも開館以来ですね。
-開館当日に立ち会わせていただいた古株の担当から伺っております。いつもありがとうございます。まずは当時のシステムについてお聞かせ願えますか?
津田さん:展示会社さんのご紹介で、ブックページャーのようなシステムを御社に作っていただいたんです。当時は先端の技術だったそうですね。
-まだWindows95の時代でしたからね。当時の来館者向けシステムとしては、確かに画期的だったと思います。
小松さん:あのシステムは、私が2009年に着任した頃も、まだ使っていたと思います。
-ということは、実に10年以上にわたってお使いいただいたことになりますね。内部の管理システムはどうなさっていたんですか?
小松さん:初期のシステムについてはわからないのですが、私が着任した当時は、確か、ハードの納入業者さんが推薦してくださったパッケージのデータベースソフトを使っていました。資料整理班用のものですが。
-と仰いますと?
小松さん:システムを使えるのは整理班の部屋にある端末2台だけで、学芸員室の端末からはアクセスできなかったんです。
-なるほど。ということは、学芸員の方々が資料データを見る時は、そのお部屋まで足を運ばれていたということでしょうか。
津田さん:いえ、整理班が定期的にシステムから資料データを出力し、共有端末に保存したExcelのデータを使っていました。それより前、初代のシステムの頃は紙の台帳を使っていて、今も当時の台帳が残っています。
檜垣さん:ご覧になりますか? これなんですけど…署名目録と著者名目録になっています。
-(拝見しながら)こ、これは? 表がものすごく細かいですね! 作るのも大変そうですが、ここから必要な情報を探すだけでも、これは職人技ですよね。しかも、データもよくできているように思います。それに、この点数を入力されたのはすごい…。
津田さん:元大学教授とか、知識をお持ちの方が整理してくださいました。
-なるほど。いや、本当に頭が下がります。
-そして今回、I.B.MUSEUM SaaS を導入されました。資料情報の運用方法を変更されたわけですが、何かご事情がおありだったのでしょうか。
小松さん:端末のOSが新しくなってもサーバのOSが古いままだったので、バージョンアップしないと使えないという事態になったんです。システムの買い替えはコストがかかりますし、定期的に大きな支出を強いられるのは、どうにかならないものかと考えまして。
-ミュージアム共通のお悩みですね。
小松さん:そこに、県立美術館さんが御社のクラウドに切り替えたという話を聞きつけまして、見せていただいたんです。
津田さん:導入時だけではなく、長期的に考えてもクラウドの方がコストが安いと分かって、導入に踏み切ったわけです。
-そうだったのですか。県立美術館さんにはずっとI.B.MUSEUM シリーズをご利用いただいているのですが、見に行かれたという話は存じませんでした。
小松さん:あちらでもなかなか評判が良かったですよ、お世辞じゃなくて(笑)。
-お気遣い、ありがとうございます(笑)。
小松さん:でも、やはりクラウドという仕組み自体には、心配もありました。インターネットのリスクがそのまま付いてくるわけですから。一方で、メンテナンスの負担が格段に減りますし、スタッフ全員が自席から直接システムにアクセスできるのが魅力でした。
津田さん:御社は博物館に特化しておられますから、私たちの業務のことをよくご存じですよね。それに、担当の方もたびたび足を運んでくださって、熱心に説明してくださいましたし、何より実績も安心材料でしたね。
-ありがとうございます。
津田さん:これだけ多数の館が導入しているのであれば、アフターサービス面でも心配なさそうですし。
小松さん:I.B.MUSEUM SaaS の導入を内部で検討する文書に、そういう御社やシステムの特徴をいろいろ書き出したんですよ(笑)。
-本当に恐縮です(笑)。ご期待いただいていたようですので、それだけに運用開始後のご感想が気になるところですが…。
小松さん:問題ないですよ。
檜垣さん:わからないことは御社に電話やメールでお問い合わせして、スタッフの方にサポートしていただいていますし。
-ありがとうございます。でも、満点ということはないですよね(笑)。
-クラウドシステムである以上は、個別の館でご要望になる機能すべては実現できません。そのあたり、気になることがおありなのでは?
小松さん:確かに、細かいことはいろいろと相談しました。でも、無理なお願いでも、何とかしようとしてくださいますよね。ただ「無理!」と答えるのではなく、「どうにかして実現する方法はないか」と考えてくださるんです。
檜垣さん:仕様外のことはあっさり無理だと言われてしまうだろうなと思っていたので、とても意外でした。
-ありがとうございます。
檜垣さん:そうそう、当館にも検討中の館が訪ねて来られましたよ。
小松さん:「大丈夫ですよ」と言っておきました(笑)。
-伺っております、ありがとうございます(笑)。それにしても、高知県内のミュージアムは、横のつながりが強いですよね。ここ数年で立て続けに導入館が増えたのですが、どの館もしっかり情報交換をしておられて。素晴らしいと思います。
津田さん:ありがとうございます。県内の館のネットワークでも、システムはときどき話題になりますよ。
小松さん:導入前は、みんな不安なんですよね。自分たちにちゃんと使えるだろうか、お願いした会社は後々までサポートしてくださるだろうか…と。それで、必然的に、先に導入した館に話を聞きに行くことになるわけです。
津田さん:御社の場合は、その点も安心でした。「ミュージアムと一蓮托生」という感じですもの(笑)。
-仰る通りです(笑)。
津田さん:今回I.B.MUSEUM SaaS を導入して、自分の席から使えるようになったこと自体に、とても満足しています。
小松さん:ハードウェアのメンテナンスなどの面倒もなくなりましたしね。おかげさまで、とても効率的になりました。
-使い勝手はいかがですか?
小松さん:リストの印刷などは「もう少し自由になったらいいな」とは思いますね。でも、当館専用に開発されたシステムではないので、私たちが工夫すれば何とかなることは次善の策で対応しています。
-印刷の形式ですね。これはよく耳にするお話ですので、改善を検討します(メモ)。あと、データ公開についてはいかがですか?
津田さん:近いうちに実施しようと思っています。当館の場合、画像は公開できるものが少ないので、まずは雑誌などから始められれば…。
-資料ごとではなく、画像ごとに公開・非公開を設定できますから、一部でも出していかれるとよいと思いますよ。
小松さん:あとは、内部で勉強会を実施して、「実はこんなこともできる」というノウハウを共有していければと思っています。
-その際は、弊社スタッフもお手伝いできればと思います。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
<取材年月:2017年11月>
- Museum Profile
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高知県立文学館
紀貫之の『土佐日記』から現在の作品まで、高知ゆかりのたくさんの作家と作品を紹介する文学館。高知城の麓に映える個性的な外観の建物でも有名です。常設展示では、50人を超える多士済々の「高知の文学者」たちを、時代やテーマごとにじっくり紹介。大人から子どもまで楽しめる数々の企画展やイベントも活気にあふれ、今年で開館20周年を迎えたことでさらに注目度を増した、地元期待のミュージアムです。
ホームページ : http://www.kochi-bungaku.com/
〒780- 0850 高知県高知市丸ノ内1-1-20
TEL:088-822-0231