ミュージアムインタビュー

vol.218取材年月:2024年10月白河市歴史民俗資料館

デジタルミュージアムは「情報のオープン化」が目的。
利用率も重要ですが「続けること」が大切だと思います。
副館長  内野 豊大 さん
専門学芸員  小野 英二 さん

-I.B.MUSEUM SaaSのご導入から2年近くが経ちました。まずはご採用のきっかけから教えてください。

内野さん:御社は昔、ニュース記事などを送ってくださっていましたよね。あれ、文化財課の中で回覧していたんですよ。その頃、定額制の利用料方式の話もご案内いただいて、「この金額なら検討できるかも」と考えていました。

-当時は紙の台帳での管理だったのですか?

内野さん:はい。震災後の雇用対策事業でExcelデータを作り始めたのですが、デジタル活用を本格化できたのは、ずっと後のことで。今回のシステムの導入も、庁内でDXを推進する動きが活発になったことが直接的な契機でした。

-なるほど、市全体としての動きだったのですね。

内野さん:入館料のキャッシュレス化なども始まりましたから。リモートワークも含めて、DXは加速していますよ。

-デジタルミュージアムの開設もその一部だったのですね。時代性ですね。

 


-では、デジタルミュージアムができるまでの経緯については。

小野さん:話が具体化したのは令和4年度でした。期間を2年に設定して予算を計上し、1年目はポジフィルムのデジタル化やテキストデータづくりなど優先度の高いものから進めて、2年目に試験公開を行いました。

-すごいスピード感ですね!

内野さん:デジタルミュージアムは情報のオープン化こそが目的ということで、市の情報部門もDX化を庁内で少しでも進めるよう動いており、「とにかく先に進もう」というスタンスだったんです。ですから、館でも優先して進めました。公開後も、はじめは利用率が低くても続けることが大切という意識で頑張っています。

-ポジティブに取り組んでおられますね。現在はどんな状況なのですか?

小野さん:考古遺物はデータ化が難しいので、時間がかかりそうですね。歴史・民俗分野の資料も、登録できているのはまだ一部です。

-となると、登録データの拡充が当面の目標になるかと思いますが、I.B.MUSEUM SaaSの使い勝手はいかがですか? 作業の円滑化に役立っておりますでしょうか。

小野さん:もちろんです。便利に使わせていただいていますよ。

-何かご不便を感じる点などは?

小野さん:強いて言えば、項目が多くてデータがやや複雑になってしまっている点でしょうか。不要な項目は削除して、今はデータが登録されていなくても後で使うかもしれない項目は残す形で整理したのですが、もう少し軽量化できるかな、と。

-よろしければご相談に乗りますので、改めてお聞かせください。画像データの登録はいかがでしょうか。ご導入時の一括登録では弊社もお手伝いさせていただきましたが、その後、問題などはございませんか?

小野さん:はい、大丈夫です、その節はお世話になりました。運用を開始してからは一度に登録する数はそう多くないので、1枚ずつ登録していますよ。

-公開まわりではいかがでしょう。気になる点などは?

小野さん:I.B.MUSEUMは2種類の公開ページを持つことができますよね。試験公開版でいろいろと設定を試していたのですが、「これでいいかな」という段階まで来たので正式公開版となるもう片方の公開ページに適用しようとしたら、設定は引き継ぐことができないとか。あの時は、設定を最初からやり直すことになったので、少し大変でした。

-それは申し訳ございませんでした。でも、設定情報を複製できれば便利そうですね。さっそく検討してみます(メモ)。

小野さん:公開と言えば、アクセス数のデータを取得する機能がもう少し充実していたら便利なのでは。Googleアナリティクスのような複雑なものではなくても、補助金申請などの際には指標が必要となることが多いので。例えば既存のツールと連携させるという手もあるかも知れませんね。

-なるほど、それもよいアイデアですね。こちらも課題とさせていただきます(メモ)。登録データの拡充についてはいかがでしょうか。何か対策はお考えですか?

小野さん:たとえば、企画展に展示した際に登録も行うなど、少しずつ充実させていくように心がけています。収蔵品の全点を登録するのは、弊館の場合あまり現実的ではないと思いますが、登録数増加については地道に頑張っていくしかないですね。

-ミュージアムにデータ入力のお話を伺うといつも同じことを思うのですが、大変な作業ですね。本当に頭が下がる思いです。

 


-デジタルミュージアムでは、リンクバナーが並ぶとても見やすいトップページを作っておられますね。あれ、I.B.MUSEUM SaaSのページ設定機能だけで作ったものですよね?

小野さん:はい、御社の担当の方に事例を教えていただきました。

-あ、やっぱり。あの欄は、もともとはデータベースについての注意事項などを明記するための機能でして。それを資料データへの入り口とするという発想は、実は弊社ではなくご利用館のアイデアなんですよ。

小野さん:教えていただいて助かりました。データベースの検索機能だけではなく、クリックすればすぐに検索結果を得られるような仕様にしたかったので。

内野さん:たとえば、一般の方々に昔の白河の光景をご覧いただくには絵葉書がぴったりなのですが、あの方法なら当館が充実した絵葉書のコレクションを所蔵していることをご存じない方にもスムーズに楽しんでいただけますからね。

-デジタルアーカイブの利活用の促進という点でも、使う方々に寄り添った見せ方はとても大切だと思いますので、理想的な仕上がりではないでしょうか。

内野さん:ありがとうございます。絵葉書に関しては、市内の管理しているもう一つの館である小峰城歴史館の企画展で一部を展示した際、QRコードをパネルに表示して当館のデータベースに誘導するという動線も確保しているんですよ。

-逆に、リアルの展示をご覧になった方々をデジタルへと誘導するわけですね。

内野さん:利用者の方々には実際に役立てていただいているようです。SNSで、地元の方が昔の写真と今を比べてどこを写しているのかを推理して楽しんでいた投稿を見ました。

-それは嬉しいですね、データベースの利用者の裾野が広がります。

小野さん:画像を利用したいというご要望は以前からあったので、デジタルミュージアムでは館蔵品については自由にダウンロードできるようにしました。利用実績が把握できなくなるので評価の指標がひとつ減ることはありますが、広報や学術研究への活用といった効果に繋がると考えたので。

-先ほどお話に出た市の情報部門の「とにかく先に進もう」という積極姿勢にも通じるものがあるように感じます。ほかにご要望などはありませんか?

内野さん:では最後に、利用者側の視点からの要望でもよいですか?

-ぜひご指摘ください。

内野さん:MAPPS Gatewayに除外検索があるといいなと思いました。他館の所蔵資料を探す時、図書が大量にヒットする場合がありますので。

-仰る通りだと思いますので、これも課題とさせていただきます。それにしても、短期間でしっかり目標を達成しておられるのは素晴らしいと思います。弊社もサポートいたしますので、今後ともよろしくお願いいたします。本日はお忙しいところありがとうございました。

Museum Profile
白河市歴史民俗資料館 古代より奥州への玄関口の役割を果たす福島県白河市の歴史と文化を伝えるミュージアム。常設展示では縄文土器をはじめとする考古資料や、古文書など中世の資料、近世の小峰城と城下町、松平定信に関する資料、戊辰戦争に関する資料など、悠久の歴史を分かりやすく紹介。小峰城跡地内にある小峰城歴史館は史跡小峰城跡のガイダンス施設であり、歴史・美術資料の展示も行っている。VRシアターやジオラマをVR望遠鏡で眺める設備もあり、併せて訪れれば楽しみも倍増。たっぷり時間を取って訪ねたいミュージアムです。

〒961-0053 福島県白河市中田7-1
電話:0248-27-2310
ホームページ:https://www.city.shirakawa.fukushima.jp/page/dir000315.html