- vol.213取材年月:2024年5月高知県立高知城歴史博物館
「博覧会が終わっても、この連携体制を維持すべき」。
県立・市町村立の枠を超えて、地域を盛り上げていきたい。地域企画課 調査員 岡本 麻衣 さん
-弊社がクラウドサービスを準備していた頃ですから、もう十年以上も前でしょうか。開館前からご提案の機会をいただきましたね。
岡本さん:お懐かしいですね。いただいた資料に雲の絵が描かれていたことを覚えています。
-よくご記憶ですね! 当時にお邪魔していたのは前身の施設でしたが、すでに資料のデータベースはお持ちだったのですか?
岡本さん:はい。ただ、従来のシステムではインターネット公開ができませんので、別に公開専用のシステムを検討していたところに、御社のクラウドサービスの公開機能を知りました。とても斬新で、「こんなに便利な時代に来るのか」とワクワクしました。
-ありがとうございます。その後、結果的に資料管理とは別の部分でご導入いただきましたね。
岡本さん:そうですね。現在は、閲覧室で土佐藩の「歴代公紀データベース」を検索できるサービスを提供しています。これまでは、お電話いただくと職員用のデータベースを検索してお答えしていたのですが、ご来館いただけば自由にお探しいただける環境が整いました。
-インターネット公開機能を館内限定サービスとしてご利用いただいている形ですが、使い勝手はいかがですか?
岡本さん:Excelデータさえしっかり整理しておけばインポートもエクスポートも簡単ですし、導入当初から「これなら使えるぞ」という手応えはありました。工夫次第でいろいろな見せ方ができるので、あれこれ試しながら活用しています。
-うまくお使いいただいているようで安心しました。
-I.B.MUSEUM SaaSの公開機能は2系統の検索サービスを構築できますが、来館者向けとは別にインターネット上でも公開ページを開設されていますね。
岡本さん:令和3年度に公開した「高知に関する研究・文献目録データベース」ですね。高知の歴史や民俗、考古についての明治以降の逐次刊行物、研究論文、報告書などの文献情報を公開しています。県内外の主要なデータベースや高知県内の史談会や研究会の逐次刊行物など多種多様な情報が対象です。
-とても興味深いのですが、こちらで公開されているのは博物館の所蔵資料ではないのですね。どんな位置づけで運営されているのですか?
岡本さん:たとえば長宗我部氏について調べたい時、国立国会図書館などの全国規模のデータベースではローカルな刊行物などがヒットしないことがよくあるんです。地域の歴史や文化に関する情報はさまざまな媒体で紹介されますし、大学の先生方の論文や学芸員の研究資料などもあります。そこで、とにかくあらゆる情報を集約しよう、と。
-なるほど。高知の歴史や文化について調べたい人のための水先案内役を担っているわけですね。ところで、岡本さんがご所属の地域企画課では、地域の博物館の活動を正式にサポートしておられるそうですね。
岡本さん:はい、仰る通りです。
-いま、多くの博物館が人員不足に苦しんでいますが、各館を支えるための部署を置く都道府県は少ないと思います。どんな経緯で設置されたのでしょうか。
岡本さん:平成29年度から翌年にかけて開催された「志国高知 幕末維新博」がきっかけでした。当館は博覧会のメイン会場のひとつだったのですが、その際に県が期限付き支援員2名を配置して地域会場の支援に当たりました。これが好評をいただきましてね。
-それがそのまま根付いたということでしょうか。
岡本さん:ええ。博覧会の終了後も継続を求める声を受けて、令和元年度に県からの委託事業として地域歴史文化調査支援室が開設し、文献目録データベースや地域学芸員養成講座、目録編成支援などを開始しました。その後、令和3年度に地域企画課に再編されて、現在は地域連携と施設支援を2本柱に展開しているというわけなんです。
-まさに「幕末維新博」のレガシーなのですね! こうした取り組みは一過性のものと思われがちですから、ぜひ全国に広がってほしいですね。
-支援事業と言えば、実は昨日お邪魔した民間施設でも「城博の方が手伝ってくださった」というお話をお聞きしたところでして。
岡本さん:あ、そうでしたか。たとえば、収蔵資料調査を行って資料把握したい地域の文化施設にそのノウハウがない場合は目録作成を支援したり、その後も地元で調査を継続できるように地域学芸員の養成講座を開いたり。支援事業は、「とにかく何でも気軽に相談してくださいね」というスタンスで取り組んでいます。
-情報提供だけでなく学芸業務から人材育成までサポートするとは、本当にすごいですね。特に学芸員や担当職員がひとりきりの小規模館にとっては、支援事業は本当に心強いでしょうね。
岡本さん:人と繋がるきっかけにもなると思いますので、その方面でもお役立ていただければ嬉しいですね。
-養成講座は一般の方が対象なのですか?
岡本さん:そうですね。あとは、市町村の文化部門の方も多いですよ。異動で担当になったけれど予備知識が少ないので、これを機にしっかりと学びたい…とか。
-なるほど。研究・文献目録データベースは、そうした方々の学びの手がかりにもなりそうですよね。
岡本さん:高知の歴史・考古・民俗の文献情報を調べるならまずはこのデータベースということで、まさにそういう用途を想定しています。そんなわけで、これからはさらに情報を追加するとともに、データの精度を上げていきたいと考えています。十万件以上の情報から精査して3万件ほどを公開しているのですが、重複などもありまして。
-多種多様な情報を集めているわけですから、ルールの統一からして難しそうです。
岡本さん:そうなんです。媒体によって紹介のされ方が違っていて、それが同一のものか別のものかの判別がつかないケースも多くて。あとは単純な表記の揺れもありますので、ひとつひとつを解決していかなければなりません。
-大変な作業ですね。公開面だけでなく、データの管理面でシステムがお役に立てばよいのですが。
岡本さん:こうした作業ではソート機能が役立っていますよ。検索機能とうまく組み合わせて使えば、Excelで検索するよりずっと速く重複データを探すことができますので。
-恐れ入ります。そのシステムで気になる部分などはありませんか?
岡本さん:ひとつあります。データを更新すると「保存しますか?」という確認のメッセージが表示されますよね。あれがもう少し減るといいなと思います。
-なるほど、大量の更新が必要な時には、マウスのクリック数はひとつでも少ない方がよいですよね。細かい部分のご指摘をありがとうございます、検討課題とさせていただきます(メモ)。
岡本さん:「できれば」で結構ですので、よろしくお願いします。
-小規模館の支援は弊社も目標とするところですので、何かお手伝いできることがあればお申し付けください。本日はお忙しいところありがとうございました。
- Museum Profile
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高知県立高知城歴史博物館
2017年3月、高知城近くの立地に開館。土佐山内家伝来の約6万7千点にも及ぶ土佐藩・高知県ゆかりの資料を有し、実物展示のほか楽しみながら地域を学べる映像や体験コーナーも充実しています。また、中核的な博物館として歴史と文化を活かした地域づくりにも積極的に関わっている点も特徴のひとつで、展望ロビーから望む高知城とともに一気に見て回れる共通入場券も大人気。観光面でも重要な位置を占める高知県のランドマークです。
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