ミュージアムインタビュー

vol.199取材年月:2023年2月高志の国文学館

資料情報は、データの管理もさることながら
公開ニーズにお応えしていくのも館の重要な役割です。
事業課長 永井 清 さん
主任 林 優美子 さん

-I.B.MUSEUM SaaSをご導入いただいて2年と少しが経ちますが、それ以前は資料データをどう管理しておられたのでしょうか。

林さん:当館には、直筆原稿などの文学資料をはじめ写真や美術品など幅広い資料がありますが、当時はExcelで管理していました。当時、点数にして7万点くらいでしょうか。

-それはかなり大変ですね…。画像データも?

林さん:はい。資料の写真も撮影していましたが、Excelデータとは別の管理になりますから、せっかくの画像データが資料情報と紐づいていませんでした。情報共有、業務の効率化のためにシステム導入を検討したと聞いています。

-お二方とも導入決定後に着任されたんですよね。現在は一部データの公開も始められるなど、とても順調なご様子で。

永井さん:お陰様で、データベースを導入することで資料情報の検索もしやすくなり、今後は県立の施設として調査研究に貢献できると思います。当館のような施設では、データ管理もさることながら資料情報の公開ニーズにお応えするのも重要な役割のひとつですからね。

-I.B.MUSEUM SaaSをお選びくださった理由はお聞きになっていますか?

林さん:やはり費用面が大きかったようですね。この予算でここまでできるシステムは、ほかにないようですから。

-ありがとうございます、励みになるお言葉です。

 


-データ移行では弊社もお手伝いいたしましたが、Excel上での準備は大変だったのでは。

林さん:正直、苦労しました。導入は4月に決定していたのですが、データをお渡しできたのは12月くらいでしたからね。3〜4人がかりでも時間がかかってしまって、御社の担当の方にも心配をおかけしてしまいました。

-とんでもないです。特にどんな点に苦戦されたのですか?

林さん:まずは、Excelの資料情報と画像データの紐付けですね。写真の撮影時はシステム導入を想定していたわけではなかったので、撮影時に自動で振られるファイル名のまま保存していたんです。そのため、画像をひとつずつ確認して、Excelのデータに合わせなければならなくて…。

-あ~、それは大変ですね…。何しろ数が膨大ですし。

永井さん:とは言え、導入後に少しずつ画像を追加していくとなると何年もかかってしまいますので、一気にやることにしたんです。

林さん: Excel側のデータの整備も大変でした。ファイルが数種類あって、それぞれ使い分けていたため項目も少しずつ違っていました。そこで、データベース導入を契機に、学芸員の皆さんと各分類に必要な項目などについて何度も協議を重ねました。こうしてお話しするだけでも、あの作業の記憶が蘇ってきます(笑)。

-さらに深く思い出していただきますが(笑)、具体的にはどんな作業だったのですか?

林さん:たとえば、Excelデータの資料番号は、それぞれのファイルごとに振られていたため、それぞれのファイルで資料番号が重複して存在していたんです。これをどう振り直すかを決めるだけでも、大変な議論がありました。これまで複数のExcelで管理していたものを一つにまとめつつ、学芸員の皆さんが使いやすいものにしなければなりませんから。

-学芸員の皆様のご反応はいかがですか?

林さん:いまでは、資料の管理はデータベースに完全に移行したので、活用いただけていると思います。操作などの不明点は、私から御社のご担当に問い合わせています。

-そうなると、ご負担が大きいのでは。学芸員の皆様向けの説明会を開催してはいかがでしょうか。

林さん:それはありがたいですね。できれば、その内容をQ&Aやマニュアルにまとめていただいて、オンラインでいつでも取り出せるような仕組みもあると嬉しいですね。まだ活用しきれていない、学芸員さんが使ったら便利な機能もあると思うので、そういう観点で説明会をしていただけるとありがたいですね。

-なるほど。ちょうどインターフェイスのリニューアルが進行中ですので、検討してみますね(メモ)。

 


-さて、資料データの公開と並行して、展示ガイドアプリのポケット学芸員もご利用いただいています。

永井さん:企画展示でポケット学芸員とブックページャーを活用することになったのは、学芸員の発案なんです。藤子不二雄Ⓐさんの漫画『少年時代』の原作となった小説『長い道』の作者である柏原兵三の企画展でした。

-学芸員の皆様も機能をよくご理解いただいているのですね。

永井さん:今まではギャラリートークを実施していたのですが、コロナ禍で対面型のサービスが提供できなくなったこともありまして。御社の方から「コストをかけずに情報発信の幅を広げる方法」としてお聞きしていましたしね。

林さん:解説もパネルと同じ内容では意味がないので、ポケット学芸員専用の原稿を作成しているんですよ。たとえば、柏原兵三の企画展だと、ポケット学芸員の解説文で作品の一節を紹介して、朗読音声もつけました。朗読は永井課長の担当でしたね。

永井さん:私も担当しました。そうそう、ひとつ質問があるのですが、ポケット学芸員のWeb版はないのですか?

-申し訳ございません、今はアプリのみとなります。これは他館でもお聞きしたことがあるのですが、「アプリはダウンロードしないと使えない」という問題ですか?

永井さん:そうなんです。たとえば、ポケット学芸員を教育現場でも使ってもらおうとすると、今は学校で子どもたちにタブレットが支給されていますが、インストールできるアプリが限定されているんですよ。Web版ならブラウザで使えるのですが。

-ご来館の方々に使用方法をご案内するのに苦労されているという話もありますし、活用の幅を広げる意味でも、ポケット学芸員もあり方をアップデートする時期が来ているのかもしれません。これは検討課題とさせていただきますね(メモ)。

永井さん:ぜひ。文学館の魅力を広く伝える方法のひとつとして、ポケット学芸員を気軽にお使いいただける環境が整えば嬉しいです。

林さん:あとは、アクセス数を分析できるとありがたいです。アプリ全体のダウンロード数だけではなく、どの資料がよく見られているのかまで分析できれば、展示の企画やマーケティングにとても役立つツールになると思うんです。

-なるほど。先ほどお話に出たWeb版ならアクセス解析も容易になりますので、一緒に社内で議論を進めてみます(メモ)。

林さん:もうひとつ、ブックページャーについても、よろしいですか?

-もちろんです。ぜひお聞かせください。

林さん:ページをめくる動作が、タブレットの機種によって少し変わりますよね。拡大表示したいときは、ビューアが別画面で立ち上がりますが、倍率を操作するバーをつかみにくかったり、ブックページャー画面に戻るボタンが隠れて戻れなくなることがあるんです。ブックページャー画面で直接拡大できる方が使いやすいと思います。

-ご不便をおかけいたしまして申し訳ございません。至急、社内で確認いたします。

永井さん:当館に限らず、文学館系のミュージアムではとても有効な情報発信手段だと思いますので、ぜひ改善をお願いしたいです。

-かしこまりました。では、今後の展望などをお聞かせください。

永井さん:まずは、公開データの点数を増やしたいですね。今はまだ柏原兵三の資料などに限られていますが、今後は、権利関係が確認できたもの、当館にしかないものを中心に、ご利用の皆様のお声も参考にしながらサービスを拡充していきたいと考えています。

-弊社もお役に立てるように改善を進めていきたいと思います。本日は、たくさんのヒントをいただきました。お忙しい中、誠にありがとうございました。

Museum Profile
高志の国文学館 富山市中心部の閑静な文教地区に立地、万葉歌人大伴家持から現代に至るまでの富山県ゆかりの文学を紹介する文学館。作家のほか、藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄らの漫画家、滝田洋二郎や本木克英、細田守といった映画監督の資料も展示されています。緑豊かな庭園を望む「ライブラリーコーナー」や、絵本が揃う「おやこスペース」もあり、家族でのお出かけに最適。文学に親しみながら一日たっぷり過ごせる、地域文化の中心地です。

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