- vol.194取材年月:2022年12月山梨県立美術館
多言語による展示解説に、データベースの充実。
今後も、新しいことには積極的に挑戦していきたいです。学芸員 下東 佳那 さん
-まずI.B.MUSEUM SaaS を初めてご覧になった時の印象からお聞かせいただけますか?
下東さん:初めて触れたのは当館ではなくて、実は前の職場なんですよ。
-あ、そうでしたか! 前職でのお話に遡っていただくことになって恐縮ですが、当時のことは覚えていらっしゃいますか?
下東さん:ええ、よく覚えています。新しいシステムということで、試しに検索してみたらたくさんヒットしてしまったり、最初は少し「難しいかな」という印象でしたね。
-も、申し訳ございません…(汗)。
下東さん:いえいえ、すぐ慣れましたから。そんな経緯で、御社のサポート担当の方とは当時からのお付き合いなんですよ。
-ありがとうございます。その後、こちらに着任された時には、I.B.MUSEUM SaaSは導入済みだったわけですね。
下東さん:はい。使い方は知っていましたので、特に不安も不明点もなく。データも登録されていて公開もできているということで、運用する立場として使い始めました。
-ふだんはどんな場面でご利用ですか?
下東さん:当館では常設展示室の展示替えが年に4回あるのですが、ここでの作品選びには欠かせない存在ですね。下調べにいろんなテーマで検索してみると、思わぬ発見があったり。
-データベースのいいところですよね。プロの学芸員でも見入ってしまうと言うか(笑)。
下東さん:そうなんですよね(笑)。当館の紙の目録は収蔵年ごとに作られていて、同じ作家でも収録される巻が分かれることがあるんです。そんな時、紙の目録だとあちこちに目を通さないと全体がつかめませんが、データベースは一気に確認できるので助かります。
-展示替えが年4回、つまり季節ごとに1回となると、かなりお忙しいかと思います。館に学芸員は何名いらっしゃるんですか?
下東さん:7名ですので、年に1回担当するかしないかというペースですね。あ、出品作品の検討ではクリップリスト機能をよく使っていますよ。
-ありがとうございます。展示する際にはコンディションレポートなども作られると思いますが、システム上から帳票を出力されていますか?
下東さん:そこはまだ紙ベースですね。
-全国美術館会議で示されている標準的な雛形とほぼ同じ書式をサンプル帳票としてセットしてありますので、よろしければぜひご検討ください。
-データが揃って、公開もされていて、活発にご利用中となると言うことナシですね。何か課題とされていることはございますか?
下東さん:実は、作品の画像については、完全に登録が終わっているわけではなくて。コツコツと登録を進めてはいますので、まずは著作権をクリアしているものから順次公開していこう…と。データも修正が必要な個所が見つかることもありますし、さらなる整備が必要ですね。
-点検、見直し、また点検といったところですね。作品は全部でどれくらいあるのですか?
下東さん:1万点以上はあります。もっと時間をかけてデータをメンテナンスしていきたいのは山々なのですが、日常業務の中では、なかなかそうもいかなくて。
-専任の担当者がおられればよいのですが、難しい問題ですよね。見直しだけではなく、新収蔵品などもおありでしょうし。
下東さん:そうなんですよね。全部で数点という年もあれば、ご寄贈などでまとまった数が入る年もありますので、一括登録が必要になる場面もあります。
-一括登録はとてもニーズが高いのですが、一気にたくさんのデータを扱うので不安を感じる方もいらっしゃいます。操作に関してはいかがですか?
下東さん:確かに、マニュアルがやや難しく感じることがありますね。もう少しでいいので、平易にならないかな、と(笑)。
-大変申し訳ございません(笑)。現在、ユーザインターフェイスのリニューアルが進行しておりますので、マニュアルの記述も課題とさせていただきますね(メモ)。
-さて、I.B.MUSEUM SaaS はアプリをはじめとして情報発信まわりの機能を強化してきましたが、そちらの方面でのご利用状況はいかがでしょうか。
下東さん:ちょうど次の展示替えから展示解説をポケット学芸員で配信するところなんですよ。日本語版のほかに、英語版とフランス語版、中国語の簡体字・繁体字版、韓国語版を準備しています。
-それはよいタイミングでした。日本語を含めて一気に6言語での配信となると、翻訳が大変ですね。
下東さん:配信内容は、ミレーとバルビゾン派の作品を中心に紹介する「ミレー館」の作品が中心なのですが、もともと用意されていた原稿を利用する予定です。
-なるほど。ナレーションはどうなさいますか?
下東さん:まずはテキストの解説ですので、今回はありません。当館にはボランティアさんに解説をお願いしていますので、現状ではアプリでの音声解説は必要ではないんです。
-専門の解説員が確保できるのでしたら、もちろん直に聞けた方が楽しいですよね。
下東さん:ポケット学芸員と言えば、ひとつ、うかがいたいことが。ベトナム語を追加したいのですが、可能でしょうか?
-はい。ご要望が多ければアプリの改修で対応できますので、検討させていただきます。過去にも、タイ語を追加したことがありますので。ご来館の方にベトナムの方が多いのですか?
下東さん:県の統計で、山梨県には多くお住まいになっているというデータがありまして。インバウンドと言うより県民サービスの一環として検討したいんです。
-先日、別の館では、ブラジルの方のご来館が多いというお話をうかがったところなんですよ。それぞれ土地柄もおありでしょうから、検討課題とさせていただきます(メモ)。
下東さん:ぜひお願いします。
-ほかに、これからチャレンジしていきたいことなどはありますか?
下東さん:チャレンジと言えば、文化庁のアートプラットフォーム事業にデータを提供することにしたんですよ。いま、準備を進めているところです。
-はい、その件はスタッフから報告を受けております。アートプラットフォームに必要なデータはI.B.MUSEUM SaaS から抽出できますので、操作については改めてご説明させていただきますね。
下東さん:助かります、ぜひお願いします。
-インターネット活用は今後も加速していくはずですので、引き続きサポートさせていただきますね。本日はご多忙の中、本当にありがとうございました。
- Museum Profile
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山梨県立美術館
1978年の開館以来、「ミレーの美術館」として親しまれてきた美術館。《種をまく人》などお馴染みの代表作のほか、バルビゾン派の作家やヨーロッパの主要な風景画家、それに山梨ゆかりの作家や日本の近現代作家など、1万点以上にも及ぶ充実したコレクションを誇ります。美術館が立地するのは富士山を望める「芸術の森公園」は、岡本太郎やロダンなどの彫刻も随所に展示。丸一日、心豊かにゆったり過ごせる人気のアートスポットです。
〒400-0065 山梨県甲府市貢川1-4-27
TEL:055-228-3322
ホームページ:https://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/