- vol.156取材年月:2019年10月鹿児島県歴史資料センター黎明館
「ポケット学芸員」の導入以降、外国人来館者が増加。
多言語ガイドは、インバウンド対策に有効だと思います。主任学芸専門員兼学芸課企画資料係長 吉井 秀一郎 さん
学芸専門員 吉村 晃一 さん
-お二方とも、ご着任時点ですでにI.B.MUSEUMが稼働中でしたよね。初めて画面をご覧になった時のことを覚えておられますか?
吉井さん:覚えています。約8年前の着任当時は、「便利だなあ」と素直に感心しました(笑)。当館は十数万点に及ぶ資料がありますが、検索結果で目安を付けてから収蔵庫に入ることができますので、とても助かっていますよ。
吉村さん:私は2年ほど前ですが、やはり同様の感想でした。でも、入力をお願いしているスタッフは、いくつか要望があるようでして。
-事前にお聞きくださったのですね。ご遠慮なくご指摘ください。
吉村さん:まず、「過去に検索した履歴を残しておく機能が欲しい」そうです。何かを検索して別の画面に移ったあと、もう一度続きを行おうとすると、検索条件の入力からやらなければなりませんので、そこを効率化したいと。
-実は検索条件に名前を付けて保存する機能は実装済みなのですが、そこまで大げさなものではなくて、単純に直近の検索ワードに戻れれば…ということですね(メモ)。
吉村さん:あとは、「検索結果一覧の画面で集計ができたら助かる」とのことでした。金額の合計などのことを指していると思うのですが、Excelに出力する前にシステム上で大づかみしたいようです。
-なるほど。確かに簡単な計算はできた方が便利そうですね(メモ)。
吉村さん:それから、画像登録は1枚ずつの作業になりますが、「できればまとめて登録できるとありがたい」…と。
-その点につきましては、実は最新バージョンで搭載しておりまして。システムをリニューアルしたら実現しますよ。
吉村さん:そうなんですか。では伝えておきますね。
-お手数をおかけします。導入からかなり時間が経っていますが、今も画像データの登録は多いのでしょうか?
吉村さん:ええ、多い時は月に何百点か新規登録することもあります。たとえば、ひとつの資料でも付属品が多かったりすると、たくさんの画像が必要になったりしますから。
-そのケースでは、なおさら画像は一気に登録したいところですよね。
吉村さん:もうひとつ…よろしいですか? ちょっと専門的なのですが。
-ぜひお願いします。
吉村さん:「ある資料の展示期間がひと目で分かるような機能」だそうです。お分かりになりますか?
-はい。以前、別の美術館向けにカスタマイズしたことがあります。展示した期間を棒グラフのように表示する仕様でした。
吉井さん:展示している期間の統計情報ですね。それは便利かも。
-では、いまお聞きしたほかのご要望とともに、社に戻って議論してみます。よいご意見をたくさんうかがえてよかったです(ホクホク)。
-今日は「ポケット学芸員」の話もお聞きしたいと思います。
吉井さん:導入館が増えているそうですね。当館にも他県から視察に来られましたよ。
-お陰様で、50施設を突破しました。今年の常設展のリニューアルという重要な局面でご導入いただきましたよね。
吉井さん:ええ。当館では多言語化の対応の音声ガイドとしてはじめにタッチペン方式のガイドを、そしてスマートフォンに対応するものも併せて導入できないか検討していました。そのためにいろいろな方法を検討したんです。
-タッチペン方式の音声ガイドは、館内案内のシート上で見たい場所にペンを当てると音が聞こえてくるという仕組みでしたよね。
吉井さん:そう、それです。そのままタッチペン方式のみで検討を進めるか、それともスマートフォンにも配信するか…。
-なるほど。一長一短はありますが、現在ならスマホが有力ですよね。
吉井さん:そうなんです。ご来館の方がご自身でお持ちのスマホなら、タッチペン式のように数の制限がありませんからね。また、課題としてはコストの問題もありますので、機器の導入や構築のコストがゼロとなる「ポケット学芸員」を選択できたことで、今回タッチペン式と二本立ての導入が可能になったわけです。
-ありがとうございます。今後、この手のサービス形態は技術の進歩とともに変化していく可能性もありますから、予算をかけないことが重要になりますよね。
吉井さん:そうですね。あと、リニューアルにあたって館内のWi-Fi環境も整備したので、しっかりと活用したいという意識もありました。
-先ほど実際に使ってみましたが、ナレーションがとても聞きやすいですね。こちらは新たに制作されたものですか?
吉井さん:はい。タッチペン式用に制作したもので、その音声データを活用してそのまま登録しました。「ポケット学芸員」は、利用するコンテンツの自由度が高い点もありがたかったですね。
-その点は意外にご評価をいただいておりまして。展示替えのたびにコンテンツを入れ替えるとか、期間に限りがある企画展でもご利用になる館もあるほどです。
吉井さん:当館の場合は、ひとまず翻訳や音声収録のコストを睨んで常設展示に限定しました。先行して導入しておられた県立博物館の方からもアドバイスをいただきながら準備を進めたんですよ。
-県立博物館様はご近所さんですものね。心強いですよね(笑)。
吉井さん:そうなんです。助かります(笑)。
-こちらの近隣には文化施設が集中していますから、ぜひほかの館でもご採用いただいて「音声ガイドタウン」みたいになったら面白いんじゃないかなあ…と。
吉井さん:それはいいですね。「ポケット学芸員」は、仕組み的には来館しなくても利用できますから、WEB上の予告編やPV的な使い方も可能かもしれませんね。
-それも面白いですね。ミュージアム好きの方々にとって身近なアプリとして育っていけば、いろいろなアイデアが実現しそうです。
-さて、「ポケット学芸員」導入への反応はいかがですか? 特にこちらは多言語展開をされているので、インバウンド対応面での効果とか。
吉井さん:それはもう、大きな効果がありましたよ。ね?
吉村さん:はい。外国からの来館者は、目に見えて増えましたね。ちょっとビックリするくらいに。
-確かに、今日もエントランスで外国の方をたくさんお見かけしました。
吉井さん:多言語ガイドのサービスは、意外にあちこちで広まっているようですね。
吉村さん:クルーズ船もそうですよね。
-クルーズ船?
吉井さん:鹿児島港には海外からのクルーズ船が停泊するのですが、多言語アプリのサービスを始めたことは観光業者の方もご存じで、海外からの団体客を案内するコースに当館を組み込んでくださったみたいなんですよ。
-それはすごいですね! そうか、自治体だけじゃなく、民間も…。
吉井さん:これはもう、ご期待にお応えするしかないですよね(笑)。
-そう言えば、ご導入時にきちんとアナウンスなさっていましたよね。やはりPRが重要なんですね。いや、システムの機能面から多言語ガイドアプリの状況まで、今日は実に有意義なお話をたくさん拝聴できました。お忙しい中、本当にありがとうございました。
- Museum Profile
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鹿児島県歴史資料センター黎明館
1983年、島津氏の拠点、鹿児島(鶴丸)の本丸跡に開館した博物館です。薩摩の歴史や文化についての充実した常設展示が評判で、中でも歴史コーナーの明治維新関連のジオラマ、部門別展示の大型のジオラマは圧巻。原始・古代から近現代までを4時代に区分し、象徴的な施設や街並みなどを展示しています。ジオラマや映像などで地域文化やその背景を楽しく学べるほか、鎧を試着できる体験学習コーナーも大人気。文化施設が集積する「かごしま文化ゾーン」を支えるランドマークです。
ホームページ : https://www.pref.kagoshima.jp/reimeikan/
〒892-0853鹿児島県鹿児島市城山町7番2号
TEL:099-222-5100