2011.07.09
クラウド型収蔵品管理システム・営業のジレンマ。「だからこそ、おススメしたいのに。」
Episode1
ある図書館が貴重資料のデータベースをインターネットで公開したことで、今まで誰にも気づかれなかった資料が人目に触れることになり、それがあれよあれよという間に噂になり、ついには指定文化財になった。そのことで指定管理者制度への移行が延期になった。
Episode2
ある大学の人文系研究機関では、デジタルアーカイブの公開を積極的に進めたことで海外からの評価が高まり、それを論拠に国の財源を次々と確保するに至り、研究資金が潤沢になった。その資金でまた成果を公開、さらに財源が取れるといういい循環が成立している。
こんな事例をお聞きすると、博物館にとって資料情報の公開は、小規模な館、財政的に非力な館、存続が危ぶまれている館ほど、武器にしやすいと思います。建物を改装したり、大規模なイベントを開催したりするような体力がなくても、資料情報を公開するだけで館の存在をアピールすることができます。アピールできる度合いとそれにかかるコストを考えると、インターネットでの資料公開はコストパフォーマンスが高いのではないかと。
また、私たちは学芸業務の負担をできるだけ軽くするように、システムに様々な機能を載せてきて、業務の成果が公開する「原稿」になるような「道具」にしてきました。だから、情報発信のために仕事を増やすこともありません。ただし、システムは数百万円する代物。小規模館には金額的に負担が重すぎました。しかしながら、クラウドコンピューティングで劇的にコストダウンが図れるようになり、月3万円で提供できるようになりました。高価だった館運営の武器が、手ごろな価格になった! 営業としては、これで小規模館の皆さんにも喜んでもらえる・・・と勇んでおススメするのですが・・・。
ところが・・・。
意外なことに、
「うちなんか、とてもとても・・・」
「館の存続すら危ういのに、新しいことを始めるなんて・・・」
「インターネットの情報発信などは、大きな館のすること」
「資料情報の公開は、まだまだ先でよい。うちはそんなに進んだ館じゃないし」
という反応が多いのです。
違うんです! (心の叫び)
そういう館が資金の潤沢な館と肩を並べることができる道具が、インターネットなんです。以前と違って安くなったし。小規模館だからこそ、予算が少ないからこそ、安価なクラウドを武器に館の意義を、貴重な資料の存在をアピールしてほしいのに。
館の人たちの苦労を私たちがわかっていないのか、私たちに伝える力が足りないのか。営業で「かみ合わない」経験をするたびに、私たちはわからなくなってしまうんです。情報発信をすれば館の認知が高まり、財源になって返ってくる。その財源をもとに更なる情報発信ができる。そういう事例がたくさんあることは確かなのに。自分のコミュニケーション能力のなさが恨めしい今日この頃です。