ミュージアムインタビュー

vol.121取材年月:2016年10月種子島開発総合センター(鉄砲館)

データ整備と並行して実物資料を確認すると
新しい発見がたくさんありますよ。
西之表市教育委員会社会教育課課長補佐兼文化係長 沖田 純一郎 さん
文化財専従臨時職員 上妻 文乃 さん

-弊社は全国の博物館を回っていますが、なかなか訪問することができず、申し訳ございません。

沖田さん:いえいえ。さすがに大変ですよね(笑)。

上妻さん:東京から種子島ですもんね(笑)。

-恐れ入ります。さて、まずは導入のきっかけから伺ってもよろしいでしょうか。

沖田さん:御社から時々届く資料を見て、当館の事情に合うものだったので、興味を持ちまして。クラウドというのが魅力でした。

-ご事情というと、システムを入れるのは急務だった…と。

沖田さん:ええ。当館の資料情報は、主にかなり前に作った紙媒体で管理していました。人も入れ替わっていて、記載内容が正しいかどうかを判断しにくくなる一方でしたから、いずれはデジタル化しなければとずっと思っていたんです。

-歴史の長い館ですものね。

沖田さん:それで、緊急雇用対策事業を活用して、整備に乗り出すことにしたんです。データベースシステムについていろいろと調べて、「自前で構築するとコストが大変だなあ」と思っていたところに、御社のクラウドの資料が届いたんです。

-よいタイミングだったんですね。他の製品との比較はなさらなかったんですか?

沖田さん:いくつか検討しましたが、事実上、ほかに似た製品はありませんでした。幸い、県内には御社のシステムを導入している施設がありましたので、見学させていただいて、スムーズに決定することができました。

-ご納得いただけたのであれば、それは個人的にも嬉しい限りです。ご期待にお応えできているかどうか、心配でもありますが…。

-導入前に抱えていらっしゃった課題は、解決できましたか?

沖田さん:うまく行っていると思います。これまでは「どこに何があるか」について、その資料を扱った担当者が詳しかったのですが、入力スタッフが保管場所までしっかり対応してくれて、みんなで情報が共有できるようになりました。

-データ入力は上妻さんのご担当ですよね。大変だったでしょう?

上妻さん:そうですね。でも、この事業では、私を含めて3人のスタッフを確保していただけましたから。現時点では、考古分野以外はひと通りの入力が終わった段階です。

-保管場所も入力しているということは、台帳の情報をそのまま転記するのではなく…。

上妻さん:はい。実際に資料実物を探して確認するところからやりました。

-それはすごい! 緊急雇用対策事業をデータ入力に活用する事例は多いですが、そこまでやるケースはあまり見たことがないですよ。

沖田さん:ですよね。収納場所を登録するついでに、棚の整理や掃除までやってくれたんですから。

-ふわ〜。それは大助かりだったでしょうね。

沖田さん:そうなんですよ。紙台帳に写真がないものなどもありますから、「どれがその台帳の資料なのか」を特定するのもひと苦労だったと思いますよ。

上妻さん:確かに、そこは大変でした。「こんなの見たことない」というのもありましたから。正直「話が違いますよ〜」と思いましたけど(笑)。

沖田さん:たとえば火縄銃なら、実は購入した備品(資産)の台帳に詳細が記載されている…とか、当館独特の難しさもあるんです。そんな中で、1万件のデータを整備してくれたわけですから。

-いやぁ、恐れ入りました。でも、写真がないものもあったでしょう? もしかして…。

上妻さん:はい、撮りました(笑)。

-やっぱり(笑)。寸法の計測とかも。

上妻さん:はい、し直しました。古民具の木箱の中に隠れていた珍しい品などの新たな発見もたくさんあって、ちょっとした「お宝さがし」みたいな気分で(笑)。

-そのポジティブさがきっと成功の秘訣なんでしょうね。このデータベース、館にとっては資料に次ぐくらいの財産になりますね。

沖田さん:いや、仰る通りです。これからは、突然に資料の閲覧を求められたとしても、「はい、これです」とすぐに出せますからね。

-となると、きっとI.B.MUSEUM SaaSもガッツリ使っていらっしゃるでしょうから、気になることもたくさんおありなのでは?

上妻さん:項目を簡単に足したり変更したりできる機能は助かりましたね。

-そのご様子だと、項目の管理は作業上で相当大きなウエイトを占めますよね。

上妻さん:そうなんですよ。3人でそれぞれの担当分野を持って作業していたので、分野に合わせた項目変更をそれぞれがやっていたのですが、逆にダブったり隠れたりして困ったこともありました。御社のご担当の方に後で項目の整理を手伝っていただいたり…。

-項目変更を何度もされるとは、もう「上級者」です(笑)。「ここが使いにくい」とか「こういう機能が足りない」とか、ないですか?

上妻さん:そうですね…。検索時にうまく拾ってくれないことがありましたが、調べてみたらデータの中身に問題があったので、システムの問題じゃないですしね。う〜ん…特に思い当たらないですかね。

-では、「こういうことがしたい」とか。

沖田さん:最後に残った考古資料をどうするかについては、悩ましいところなんですよね。あとは、図書情報も入れたいです。

-考古資料のデータ上の扱いは、皆さん悩まれるところですね。1点ずつデータ化していくととんでもない数になりますから、コンテナ単位で登録されているところが多いみたいですよ。

上妻さん:なるほど。

-図書管理については、最近、ご利用館が増えていますよ。ぜひご相談ください。

上妻さん:ありがとうございます。そう言えば、蔵書ファイルを1資料として登録して中身を備考欄にズラ〜ッと入れているデータがあるんですよ。何かよい方法はないですかね?

-「リンク情報」という機能がおすすめです。別ファイルの保管場所を登録しておけば呼び出せるようになりますので、ぜひ併用いただければ。

沖田さん:へえ〜。それだと、古い新聞なども登録できそうですね。

-できます。ぜひご利用ください。

-さて、データの公開についてはいかがですか。

沖田さん:もちろん考えています。当館より後からI.B.MUSEUM SaaSを導入された県立博物館さんでも公開されていますしね。でも、最終的なチェックがなかなかできなくて…。

-多くの点数を全部チェックしていると大変ですから、1万点の資料の中からまずは100点だけ絞って公開する…というのはどうでしょう? 実は、後で少しずつ追加していくという進め方は、割と珍しくないんですよ。

沖田さん:なるほど、それならできそうですね。「ポケット学芸員」も準備に取り掛かるところまでは進めたのですが、なかなか手が回らなくて。

-ポケット学芸員は、もっと少ない点数でスタートできますから、データの公開より先に始めるのもいいかもしれませんね。特に火縄銃については知識をつけたい方も多いでしょうから、スマホアプリで案内されると、きっと皆さんにお喜びいただけると思いますよ。

沖田さん:そうですね。なんとか頑張ってみます。

-ぜひお試しください。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 

<取材年月:2016年10月>
Museum Profile
種子島開発総合センター(鉄砲館) 鉄砲伝来の地、種子島にある博物館。南蛮船を模したという個性的な建物は「鉄砲館」の愛称で親しまれていますが、その名の通り、ポルトガル初伝来銃や国産第1号銃、また国内外の古式銃が約100点が展示されています。ほかにも、種子島の歴史や民俗、自然が資料やジオラマ、写真などで紹介されているなど、歴史ファン垂涎の展示が多数。種子島の玄関口・西之表港からすぐのところにあり、種子島観光の起点にもなるランドマークです。
ホームページ : http://www.city.nishinoomote.lg.jp/admin/soshiki/kyouikuiinkai/shakaikyouikuka/bunkagakari/center/
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