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ミュージアムリサーチャー

ワセダの業界見聞録。ミュージアムリサーチャー MUSEUM RESEARCHER (写真:葛飾区郷土と天文の博物館)

システム構築のプロとは言え、いつもパソコンに向かってばかりでは視野が広がらない。というわけで、オフィスを出た当社「リサーチャー」たちが出会ったミュージアム関連のさまざまな話題をおすそ分け。どうぞお気軽にお読みください。

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県民参加で気運を盛り上げよう ------博物館・美術館のデジタルアーカイブを考える講演会
住民参加が力を生む デジタルアーカイブの新しいカタチ その3

2016年12月

 9月24日、福井県立一乗谷朝倉氏遺跡資料館において、博物館・美術館のデジタルアーカイブを考える講演会「文化財とアーカイブ ―三次元デジタルデータの可能性を探る―」というイベントが開催されました。この日は、3人の講師のうちの一人としての参加でしたが、実は、むしろほかのお二方のお話を聞くことを楽しみにしていました。期待通り、実に興味深いお話が伺えて、大変勉強になりました。
特に印象に残ったのは、「三次元計測装置」の実演です。ドイツGOM社製の「ATOS」というシステムを使って、地元・一乗谷で出土した鏡を計測し、その3Dデータを作成するまでの実際を間近に見ることができました。3D全盛の世の中ですが、その制作過程をつぶさに見るチャンスは多くないだけに、個人的にも大変貴重な機会となりました。



この計測装置は非常に高額なもので、「1千万円は下らない」とのこと。それだけに、計測速度はかなり速く、しかも高精度。これから技術革新が進んでコストダウンされ、一般の博物館に普及したら……と想像して、興奮せずにはいられませんでした。
会場では、実際に3Dプリンタで制作されたレプリカも展示されていました。「触って形状を確認してください」と添えられていたのですが、手に取ると微妙な質感が伝わってきます。どんな活用先が生まれるのか、これからが楽しみな技術です。
参加者はもちろん学芸員が中心ですが、一般のご参加もかなり多かったように感じました。質疑応答ではたくさんの質問が飛び交って、活気に満ちた空気に。多くの方々の期待感がひしひしと伝わるイベントでした。
 



いずれも盛況だった3つの取り組み。
大切なのは、使う方々に喜んでいただけること。



博物館資料データのデジタルアーカイブ化の波は、今後、確実に広がるはずです。しかしながら、そこに行き着くまでには、さまざまな障壁があることも事実です。それは、学芸員や館職員の皆様にとっては、大きな難題です。
これまで何度か行われた全国規模のアンケート調査では、この点に関するミュージアムの現場からの回答が寄せられています。これを分析してみると、「予算不足」「人員不足」の2点が群を抜いています。最大の問題は、この状態が10年以上も続いており、改善の兆しが見られないことです。
「人員不足」は、すなわち「人件費不足」と言い換えることができますので、結局は「予算が付かないから進まない」ということがすべて。これを解決するには、国や自治体の支援が不可欠です。では、なぜ予算が付かないのか。これも簡単で、支援する側も予算不足にあえいでいるからです。
とすれば、とても越えられそうにない高い壁のように感じます。しかし、今回ご紹介した各事例には、難攻不落の「予算の壁」を突破するヒントがあるように思います。それは、地域住民を中心とする多くの人々が「デジタルアーカイブの実施の成果」を明確に享受できる方法を考えて、明確に提示することです。
方法はあります。管理システムを導入済みであれば、まずは予算のかからない範囲でアーカイブ化を始め、少しだけでよいので公開してみること。その情報が住民の皆さんに届き、「これはいい」「これは使える」という反応を得ることができれば、やがてその効果を無視できなくなるはず。つまり、さらなるデジタルアーカイブ化推進のための予算をもたらしてくれる基盤となるのは、館と利用者の熱気なのです。

「鶏と卵」のような関係になることは否めません。余力がない中でデジタルアーカイブの準備を行うのは大変な作業です。それでも、このIT時代においては、博物館の存在理由を大きくアピールする要素となり得ます。
現在の日本は、海外からの旅行客も増え続けています。彼らをお迎えするには、地域住民が「自分の街を知っている」ことこそが前提。日本政府は、「日本を世界に紹介する」ことに注力していますので、文化財の重要性を再認識する気運は高まっていると言ってよいでしょう。
少ない点数、情報量であっても、まず公開すること。ご利用になる方々に喜んでいただける仕組みを作ること。これが「次の時代の博物館」への第一歩となるのではないでしょうか。


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