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収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

その資料の研究者との思わぬ出会い。
これも、博物館の情報公開の効果なんですね。
参事 学芸員 二木 裕子 さん
参事 学芸員 二木 裕子 さん

-宮本三郎美術館時代に続いて2度目のインタビューですね。前回はもう5年以上も前になるんですね。

二木さん:早いですねぇ。前回と違って、データ入力の担当は緊急雇用の事業で集まっていただいた皆さんですから、「私にお話しできることがあるかな」と少し心配なんですけど。

-その雇用対策によるデータ整備事業について、ぜひ詳しくお聞かせください。二木さんは事業を取りまとめておられますし、他館の皆さんにとっても関心事だと思いますので。

二木さん:そうですか。ご参考になれば良いのですが。

-今回はご自身が入力されるわけではないとは言え、また違ったご苦労がおありなんでしょうね。

二木さん:そうですねえ。実際にやってみると、まず、思わぬ出費が結構あるなあと感じました。

-具体的には、どんな費用ですか?

二木さん:今回は収蔵庫の整理から始めたのですが、消耗品が想像以上に必要になったんです。これは予測ができませんでしたね。箱や包装する紙、荷札とか……。

-なるほど。そこまで細かく予測するのは難しそうですね。

二木さん:結局、緊急雇用事業の予算範囲をオーバーして、館の負担が発生しました。

-プロジェクトが始まって間もない頃、収蔵庫での作業を見学させていただきましたが、その後の作業はいかがでしたか?

二木さん:実際進めてみると、あの分業体制は難しかったですね。

-え! 収蔵庫チーム、入力チームとも、作業方法が確立されていたように見えたのですが……。

二木さん:たとえば、入力チームは台帳の情報を入力しますよね。民具を例にとると、入力チームは台帳の通りに「箱=1点」として記録していきますが、収蔵庫チームが箱の中を検めると10点の別々の資料が入っていることが分かったり。分業にすると、データ入力が先行した場合、後で修正しなければならなくなるんです。

-データ登録以前の問題になってしまいますね。

二木さん:そうなんです。でも、こうして事業に取り組めたことは、資料の正確な把握の機会になりました。みんな頑張ってくださいましたしね。

-それは良かった。確かに頑張っておられましたもんね。


博物館は、小松市の中心地にあり、
公園や美術館、図書館もすぐ近くです。

-今回の事業では、インターネット公開も同時並行で進められましたよね。

二木さん:ええ。できたところから公開するという方針を採りました。1点ずつの情報の詳しさより公開する資料の数を優先して、公開する写真もひとつの資料につき1点に限定して……まずはスピード重視ですね。

-見学させていただいた時、本格的な撮影機材があるのを見かけました。1資料写真1点に絞るとは言え、あの撮影は大変だったでしょう?

二木さん:ええ、だからあの撮影方法は一部の資料だけに行いました。重要文化財や美術品などですね。民具、歴史、自然の一般的な資料は、資料整理や入力作業の時にデジカメで簡易的に撮影したものを使っています。

-なるほど。手法を使い分けることでスピードアップを図っているわけですね。写真だけではなく、文字情報の精査も大変だとお聞きしましたが。

二木さん:そうですね。システムの仕様の話にまで遡ってしまいますが、いいですか?

-システムに何か問題が…?

二木さん:当館は、すべての資料分野に専門の担当者がいるわけではないので、分野ごとの項目体系づくりは手探りにならざるを得ません。そのせいもあって、分野によっては似たような項目を別な場所に作ってしまったり、本来あるべき項目がなかったりしましてね。

-なるほど。よくあるケースですね。

二木さん:そのままの状態で入力者にリストで渡すと、ある人はこの欄に、別な人はもう一つの欄に入力したり……と、同じ情報の扱いが変わってしまうことがあるんです。そうなると、うまく検索できなくなったり。

-それはシステム側でも対応を考える必要がありますね。帰社したら担当SEと一緒に考えてみます。

二木さん:そういう状況ですから、できるところから公開なんて、我ながら「度胸あるなあ」と思いましたよ(笑)。公開に当たっての対策は講じたつもりだったのですが、いま思うとまだ不十分でしたね。

-でも、早めに公開に踏み切った効果もあったのでは?

二木さん:そうそう、確かにありました。「特定の分野に精通する」という観点では、私たちよりも外部の専門家の方が詳しい場合があるんです。

-ほう? たとえば?

二木さん:私たちが「普通の資料」のつもりで公開していたものが、サイトをご覧になったある大学の先生のご指摘で、大変な価値のあるものだということが判明したんですよ。国会図書館にもない江戸時代の辞書だったらしくて、その先生は長く探し回っておられたとのことで。インターネットで当館にあることを見つけて、実際にお越しいただいて初めて価値が分かったんです。

-それは素晴らしいことですね!

二木さん:ええ。世の中には、ものによって私たち学芸員より深く掘り下げて研究している方が大勢いらっしゃるんですね。インターネットで公開することでそういう方々との接点ができれば、情報がより深く、広くなっていくでしょう? これからどんどん実現したらいいなあ、と思いますね。

-情報公開って、大事なんですねえ……(しみじみ)。


幅広く、わかりやすい展示で親しまれて
います。

-改めて今回の事業を振り返っていただいて、今後、データ整備にチャレンジされる館にアドバイスをいただけますでしょうか。

二木さん:結局は「人ありき」だな、と痛感しました。当館はメンバーに恵まれました。緊急雇用の方々は、私たちの手が回らない部分まで知恵を出して作業を進めてくれることもあったんですよ。

-たとえば、どんなことですか?

二木さん:後々必要になりそうな情報を、データ整理の時点で加えてくださったり。たとえば、データを登録した資料を棚に収納する時、その棚の場所を一緒に登録して、図面まで新たに作ってくださったんですよ。

-気が利いていますねえ!

二木さん:そうなんです。本当に助かりましたよ。それに、PCに詳しい方がほかのメンバーに教えながら作業を進めてくださったり。効率も精度も随分と上がりました。

-なるほど。となると、人選が成功のポイントになりますね。

二木さん:そう思います。それだけに、この事業が終わった後も、データ整理や登録のフローを職員で維持していかなければなりません。新しい資料を受け容れる時も、情報レベルを落とさないためのフロー、継続性の確保が課題ですね。

-事業が終わった後のこと、雇用された人がいなくなった時のことを考えて、事業を企画しないといけませんね。今日は他館が知りたい情報をたくさん教えていただきました。お忙しい中、ありがとうございました。
 

<取材年月:2011年10月>

MUSEUM PROFILE

小松市立博物館
小松の文化ゾーンの中心・芦城公園内に位置し、石川県では初の登録博物館として昭和33年に開館。歴史・美術等の人文資料、および化石、昆虫標本、剥製などの自然科学資料と、充実した資料を誇ります。太古の生物、藩政時代の古文書、ダムに沈んだ村の生活用具、近隣に生息する昆虫など、地域の情報を丸ごと収蔵・展示。錦窯展示館、本陣記念美術館、宮本三郎美術館とともに、小学生から研究者までの幅広い知的ニーズに対応する、文字通り地域文化の集積地を担う総合博物館です。

ホームページ : http://www.kcm.gr.jp/(4館総合トップページ)
       http://www.kcm.gr.jp/hakubutsukan/(博物館ページ)
〒923-0903 石川県小松市丸の内公園町19番地
TEL:0761-22-0714
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