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収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

学芸業務は、バトンリレーのようなもの。
次の世代に継ぐことこそ、私たちの仕事なのです。
学芸員 松岡 智訓 さん
学芸員 松岡 智訓 さん

-まず、システム導入を検討された頃の様子からお聞かせください。

松岡さん:私は平成12年に着任したのですが、当時は玉石混交の3万点の資料を紙の目録で管理していましてね。先輩学芸員が分類はしっかりされていましたが、収蔵庫内の配置は、分類番号順ではなく、より緩やかな分類によって配置されていましたね。

-つまり、「その人しかわからない」という状態だったわけですね?

松岡さん:その通りです。セキュリティを考えると良い面もある方法なのですが、当館は文書館の役割も担っていましたからね。歴史研究のために来られる方々のご質問は専門的な内容も多いので、担当学芸員が休みの日には電話でつかまえて詳細を聞いたり。やはり「誰でも分かるよう再整理した方が良い」ということになったんです。

-それでシステムを導入されたわけですね。

松岡さん:ええ、着任の翌年でした。当時の早稲田さんには、きっと、金額でご迷惑をおかけしたんじゃないかと。

-金額? 何か手違いでも?

松岡さん:導入にあたって、補助金と自主財源の二本立てで準備を進めていたのですが、補助金の方の申請が通らなくてね。予算が少なくなれば当然システムの規模縮小を考えなければなりませんが、せっかく導入するのですから、妥協したくない部分もあって。

-お気持ちはよく分かります。

松岡さん:それに、私も着任2年目で経験が少なかったので、「とりあえず全部お願いしてみよう」という感じでね。変更もたくさんお願いしましたし。打ち合わせのたびに、SEの方の顔が曇っていったのを、よく覚えていますよ(笑)。

-お気になさらず。予算が足りなければ代案をご提示してやりくりするのも、業者の仕事ですから。


文化施設が並ぶ落ち着いたエリアに
あります。

-さて、最近、I.B.MUSEUMをリニューアルしていただきましたね。続けてのご利用、ありがとうございます。

松岡さん:前回も今回も、プロポーザルで選定したんですよ。特に今回はプレゼンが良かったですね。当館が考えていた方向性と一致する内容でした。

-外部への発信や将来性を中心にした提案でしたね。

松岡さん:インターネットでの公開は考えていましたので、特に長野県松本市さんの事例は参考になりましたよ。こういう部分のノウハウを蓄積されているのは、明確に他社さんにはない点ですよね。

-ありがとうございます。リニューアルの作業はいかがでしたか?

松岡さん:プロポーザルの時期の影響もあって、結構タイトなスケジュールになりましたね。1回目の打ち合わせでの開発のスケジュール表を見た時点で、「これはキツいな」と思いました。

-今回は新しい試みもありましたしね。

松岡さん:でも、担当SEの方のレスポンスがとても早くて助かりましたよ。メールのやり取りの中でアドバイスもいただけましたし、スケジュールもしっかり管理してくださって。

-それは良かったです。それで、肝心の機能面はいがかです? 前のバージョンという明確な比較対象もあるわけですが。

松岡さん:基本的に、事前に考えていたことの大半は実現できたと思います。残念なのは、情報が1枚に収まるカード管理がなくなったことくらいかな。公開に備えて項目を増やしたのでやむを得ないのですが、ご来館の方に出力してお渡しできるようなものがあると良かったかな、と。

-特に、調べる目的で来館される方には喜ばれそうですね。

松岡さん:その一方で、「情報を充実させる」という意味では、今回ついた一括登録機能がかなり使えそうです。操作がもう少し簡単だと、なお良いのですが。

-改善の検討が必要ですね。ところで、今回の最大のテーマだったインターネット公開の部分はいかがでしょう?

松岡さん:有効だと思いますね。インターネットで資料を見てのご来館やお問い合わせは、目に見えて増えていますよ。

-そうですか! それは良かった。

松岡さん:今回のリニューアルでは、登録番号の付け直しも行ったでしょう? たとえばお問い合わせをいただいた際、紙の目録当時の番号で来ているか、新しいシステムの登録番号で来ているかを見れば、一目瞭然で分かるんですよ。インターネット経由の方は、圧倒的に多いです。

-問い合わせが増えると業務は大変でしょうが、目的を達成して、しかも効果が出たとなると、嬉しいですよね。


歴史を感じさせる
博物館らしい建物です。

-問い合わせ件数が増えたことでの業務負担はいかがでしょう? かなりご負担が増えましたか?

松岡さん:確かに、件数は増えましたが、その分、まるごと対応業務が増えるかと言うと、そうでもないですね。

-そのあたり、詳しくお聞かせください。

松岡さん:インターネットで検索した方は、ある程度、話の内容を絞って質問してこられます。質問が具体的になると、探すものも特定できるじゃないですか。むしろ対応しやすくて、業務はスムーズになりましたよ。長期的に見れば、負担はむしろ減るんじゃないかな。

-なるほど、分かりやすいですね。

松岡さん:さらに分かりやすく言うと、データを探す時、目の前にある資料が3万件だったのに対し、最近のお問い合わせは最初から50件に絞られている…という感じですね。

-なるほど…(メモ)。そうそう、プレゼンでも注目していただいた「市内複数館の資料の統合管理」は、その後、いかがですか?

松岡さん:一朝一夕にはいきませんが、実は少しずつ準備を進めているんですよ。早稲田さんのシステムでダウンロードした一括登録用のExcelテンプレートを教育委員会に渡して、資料や遺物の登録を始めてもらいましてね。

-そうですか、うまくいくと良いですね!

松岡さん:テンプレートへの入力は、緊急雇用対策などでも入力作業を進めていますしね。みんなでバトンを受け継いで、私が異動しても後任者に続きを託せるようにしたいですね。

-素晴らしいバトンリレーですね。

松岡さん:データ作りに限らず、私たち学芸員は「仕事自体がバトンリレー」なんですよ。

-名言ですね。サグラダファミリアのようです。

松岡さん:まさにそんな感じです。私たちは今、資料を整理・管理することに携わっていますが、その資料自体は何百年も前から存在しているわけですよね。となると、一人の学芸員の頭の中だけで仕事が終わるはずがありません。

-そもそも、「終わり」がないですしね。

松岡さん:そうそう、資料の寿命は半ば永遠ですからね。次の人へ、またその次の人へと渡していくのは当たり前で、そうした環境を作り出すのがデータベースだと思います。

-そう伺うと、私たちも責任を痛感して、身が引き締まります。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

<取材年月:2011年9月>

MUSEUM PROFILE

岩国徴古館
岩国徴古館の建物は、物資統制下の戦時中、地元の旧藩主・吉川家が建設したもの。資材の制約の中でも工夫して建てられており、国の登録有形文化財となっています。収蔵、展示資料は、岩国とゆかりの深い美術工芸品や歴史資料が中心。吉川家からも旧岩国藩にまつわる数々の史料を寄贈され、文書資料も充実しています。錦帯橋から徒歩数分の場所にあり、「岩国を知り、感じる」ことができるとあって、観光客からも郷土史家からも注目を集める博物館です。
ホームページ : http://www.city.iwakuni.lg.jp/html/bunkazai/chokokan/index.html
〒741-0081 山口県岩国市横山2丁目7-19
TEL:0827-41-0452  FAX:0827-41-0478
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