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収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

データベース構築で重要なのは、将来を見越すこと。
いずれ使えなくなるシステムでは意味がありません。
サービス広報課長・学芸第一課長 学芸員 堀 繁久 さん
サービス広報課長・学芸第一課長 学芸員 堀 繁久 さん

-40年の歴史をお持ちの館ということで、まずはIT化が進む前の資料管理についてお聞きしたいのですが。

堀さん:すべての資料を紙のカードで管理していました。A4裏表の分厚いケント紙で、写真も貼りつけてね。全部で15万点ほどあったので、可動式の書棚を何本も設置して、カードのファイルを並べていました。

-15万枚の厚紙ですか! 目的のカードを探すだけでも一苦労ですね。分野ごとに収納しておいたとか?

堀さん:いえ、カードは登録番号順に保管していました。書式を分けた10種類の資料分類のほか、何種類かの台帳を用意しましてね。カードを探す時は、手がかりとしてまず台帳を見て、そこに書かれている資料番号を頼りにカードを探し出す…という流れでした。

-一度出して戻す時に、間違って違う場所に入れてしまったら(寒気)。あとは問い合わせへの対応も辛そうですね…。

堀さん:ええ。寄贈者の方からのお問い合わせにしても、特にご本人でない場合などは、情報が曖昧ですからね。「ウチの祖父が農機具らしきものを寄贈したと聞いたんですが」とか。相手がマスコミの場合は「こういう資料があるかないか、この日までに調べておいて」なんて言われることもあってね。

-資料の台帳から調べるのは無理ですね…。

堀さん:寄贈者の一覧とか、申込書類などから該当者を探して、受け入れた時期についてあたりを付けて、各年度の台帳を見て、登録番号を見つけ出して、カードにたどり着く、と。というわけで、実は学芸員の記憶が一番の頼りだったりしたんですけどね。

-それだけでも職人芸ですね。学芸員の仕事は本当に大変だ…。


北海道の大自然を感じるアカエゾマツの巨木

-システム導入を検討されたのは、やはり「紙の台帳やカードの限界」ということだったのでしょうか?

堀さん:そうです。長年、学芸員は分野を受け継いで、ノウハウを維持してきたのですが、人員は減る一方ですからね。当館も最盛期に比べると3分の2くらいにまで減っているんじゃないかな。

-団塊世代の一斉退職もありますしね。

堀さん:そうですね。当館の場合は、ちょうど40年前の開館時に入った若手学芸員の方々にあたります。博物館は開館の時に最もたくさん資料が集まりますので、その当時のことを知っている人がどんどんいなくなるわけです。

-受け入れた経緯とか、データにしにくい付帯情報もありますよね。

堀さん:昔の学芸員は、時間をかけて知識と経験と人脈を積み上げて、それを力にしてきたわけです。そうした部分を引き継げないのは、館にとって痛手なんですよ。

-ITが補完できれば良いのですが…。そのITを使っても、15万点も資料情報があると、デジタルデータ化だけでも気が遠くなるような作業になりますね。

堀さん:そうですね。そこで道の緊急雇用対策事業を活用して、データ整備を一気に進めたんですが、それでも大変でした。

-入力される方が学芸員ではない場合、「カードに書かれている情報をすべて正しく読み取るのは難しい」とよく耳にします。

堀さん:仰る通りですね。IDや台帳の重複から、漢字や数字の間違いまで、人間が行う以上はケアレスミスも付き物ですし。

-何が正しいのかを判断する上では、やはり学芸員のチカラが必要ですよね。雇用の事業と言っても、皆さんのご負担は大変なものだったのでは?

堀さん:そうなんです。私は以前の仕事で研究データベースづくりに関わったことがありましてね。データベースは、間違ったデータを入れると、後で修正するのが大変なんですよね。場合によってはゼロから作ることより困難になりますから、そこは慎重にやりましたよ。

-ご苦労、お察しいたします。


臨場感あふれる展示です

-博物館の歴史の話は、個人的に興味が尽きないのでもっとお聞きしたいところですが、弊社は情報システム会社なので、そちらの話もお聞かせいただけますでしょうか。

堀さん:そうでしたね。システムの威力は、やはり凄いですよ。先ほどの寄贈者からの問い合わせへの対応にしても、明らかにスムーズになりましたしね。名前からでも、受入年代からでも、多面的に検索できるようになりましたから。

-ありがとうございます。逆に、期待通りでなかった部分は?

堀さん:強いて言えば、これまでの業務内容とのマッチングですかね。当館は長く紙の台帳で仕事をしてきましたから、同じ形式で出力できるとありがたいのですが。

-ん? 出力機能が足りなかったですか?

堀さん:いえ、出力そのものはできるんですけどね。たとえば、紙のように「無理やりA4裏表に収める」ということはできないですよね。

-ああ、なるほど…。

堀さん:資料にちょっとしたキズを見つけたような場合も、紙の台帳なら、そこに貼ってある写真に手軽に書き込めますよね。データベースでは、メモするための項目を作って、「右上から何センチのところにキズ」というテキストデータを入力するか、傷の箇所の写真を撮って画像として登録するか…。いずれにしても、ちょっと面倒ですよね。

-タッチペンで書き込むような感覚の機能があれば良いのかな…(メモ)。

堀さん:それから、機能のボタンの位置がちょっと分かりづらいと思う時があります。あとは、館にある大量の8ミリ、16ミリの動画を扱いたいですね。

-(必死でメモ)そう言えば、館のリニューアル計画が持ち上がっているそうですね。情報公開なども強化なさったりするのでしょうか?

堀さん:ええ。いま、簡単な解説情報が登録できている1万点余をインターネットで公開していますが、さらに多くの収蔵資料をみていただけるような方法を考えたいと思っています。
リニューアル予定はもう少し先ですので、その頃には一歩進んだ情報公開を実現したいですね。

-それは楽しみですね。さて、紙の台帳の時代からひとつひとつ乗り越えてこられたわけですが、そうしたご経験を踏まえて、これから取り組む館へのアドバイスをお聞かせください。

堀さん:ランニングコストや、機器が老朽化した時の対応など、将来を見越したシステムを考えることが重要だと思いますよ。後で使えなくなるシステムでは、導入の意味がありませんからね。

-まさしく大きなポイントですね。

堀さん:それに、毎年使える予算が減っていくことも想定しておいたほうが良いでしょうね。これからは、コストを抑えられるクラウド型のシステムなどは、良い選択肢だと思いますよ。ちょうど早稲田さんが新しく始められたようですし(笑)。

-ありがとうございます(笑)。今日は「博物館の歴史とは何なのか」「学芸員のチカラとは」といったことを、ずいぶん勉強できた気がします。今後ともよろしくお願いします。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

<取材年月:2011年9月>

MUSEUM PROFILE

北海道開拓記念館
昭和46年、北海道百年を記念して開館した総合博物館。地質時代から現代に至るまで多数の資料が展示されており、体験学習や各種イベントも活発に開催。生涯学習の場としてもすっかり定着するなど、道内博物館の中心的役割を担っています。自然豊かな道立野幌森林公園内と立地も素晴らしく、近くには明治・大正時代の道内の建築物を移設した野外博物館「北海道開拓の村」もあるなど、北海道のランドマークのひとつとして親しまれています。
ホームページ : http://www.hmh.pref.hokkaido.jp/
〒004‐0006 札幌市厚別区厚別町小野幌53-2 
TEL:011‐898‐0456
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