HOME > Voice & Report TOP > ミュージアムインタビュー TOP > vol.70 川崎市市民ミュージアム

収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

資料・作品の観賞の場から、リサーチに使える施設へ。
「集合知の時代」の博物館のあり方だと思います。
学芸員 濱崎 好治さん
学芸員 副島 蔵人さん
学芸員 濱崎 好治さん
学芸員 副島 蔵人さん

 -まずは、システム導入の検討を始められた当時のお話からお聞かせいただけますか。

濱崎さん:私は1988年の開館時から当館にいるのですが、前館長から収蔵品データベースを検討するようにとの指示があったんです。御社の前の社長さんともお会いして、デモも見せていただいたのを覚えていますよ。

-それはかなり昔ですね。

濱崎さん:当時は分野ごとに紙の資料カードを作っていました。その後、画像データを作り始めて、部門ごとに簡易的なデータベースを作ってみたりしたのですが、「館のどこに何があるのか」ということが、もっと正確に把握する必要を感じ始めたんです。1995年ごろの話ですね。

-その後、入札で弊社がお世話になることになったのですが、段取りが悪くてご迷惑をおかけしたそうですね。その節は申し訳ありませんでした。

濱崎さん:いえいえ、昔の話ですよ(笑)。あの時は、大枠の予算が決まった後に仕様を考えるという流れでしたから、私たち自身も後手に回っていたような気がします。当館の場合は「固有の難しさ」もありますしね。

-固有の難しさ? どんなことでしょう。

濱崎さん:当館は博物館部門、美術館部門に分かれているのですが、マンガやポスター・版画・写真、映画・ビデオを多数収蔵しています。すべて複製物ですから、収集も活用方法も通常とは違うんですよ。

-なるほど。立場の違いで意見が割れそうですね。

濱崎さん:ええ。館を運営する側は「資料が何点あるのか」という情報を重視します。学芸側にしてみれば「それだけならExcelで十分ではないか」という意見もありますが、一方で来館者への情報提供という観点では「どのような資料があるのか、そのしっかりしたレファレンスが必要」と感じます。

-濱崎さんと副島さんも、ご担当の分野が違いますよね。

濱崎さん:そうですね。私の専門である映像の分野では、権利処理などの情報管理も必要になります。

副島さん:私は考古担当で、埋蔵文化財を扱っています。私たち2人だけでも意見集約は困難なんですよ(笑)。

-なるほど。全館で見れば「システム上で共通にできる項目は資料名だけ」ということもあり得るわけですね。


緑あふれる広々とした公園に立地。
中庭は地元の人の憩いの場です。

-これだけ内容が異なる分野の資料管理が、ひとつのシステムに集約されたわけですが、どう折り合いをつけられたのでしょうか。

濱崎さん:話し合いを重ねるしか方法がありませんでした。結局、各分野で必要な項目を網羅する形になりましたが、大変でした。

副島さん:私個人の視点から見ると、「作者」や「制作年代」など現場では使わない項目がズラッと並ぶ仕様になっています。仕方ないことなんですけどね。

-ブランクの欄が多すぎると、画面を開いた瞬間にやる気も失せてしまいますよね…。

副島さん:慣れてしまえば大丈夫ですよ。それよりも、着任した時に前任者から引き継がれたデータの中身を見て、情報管理の難しさを痛感しましたね。

-データ作りの問題ですか。

副島さん:ええ。考古資料の場合、「何をもって1点とカウントするか」が非常に難しい問題なんですよ。前任者は発掘された破片1個を1点として地道にデータを作っていましてね。それは大変な労作で頭が下がる思いなのですが…。

-数が凄いことになりそうですね。

副島さん:そうなんです。ひとつの遺跡で何百点と出てくることになりますので、すべての破片を個別の画像データとして登録するのはなかなか難しいんです。テキストデータだけでも何千点というリストになりますからね。

-でも、テキストだけでは…。

副島さん:ええ。リストを見ても、どのデータがどの破片を指しているのか、判別がつかないですよね。悩んだ結果、市民に公開する形を1点と考えることにして、データベース上の点数を定義し直しました。画像を添付するルールも作って。

-なるほど。とても分かりやすいデータになりますね。でも、その分、副島さんの日常業務の流れとは少し離れてしまいませんか?

副島さん:そうなりますね。

-埋蔵文化財は調査報告書がもとになるでしょうし、実際に掘り出されたものはコンテナの中に収蔵されているわけですよね。とすると、それを管理する方法をシステム以外で確立しなければならなくなるのでは?

副島さん:仰る通りです。結局、内部の仕事でモノを探す時は、現状では調査報告書を頼りにせざるを得ません。

-なるほど…。いま、管理と公開の両方に貢献するシステム作りを進めているのですが、考古の分野では特に難しそうですね。弊社ももっと勉強しないと…。

濱崎さん:でも、当初の目的だった「全体のデータベース」は一元管理できはじめていますから。「まずは第一段階」ということだと思いますよ。

副島さん:そうですね。御社の担当の方もよく対応してくださっていますし、いまの話は当館側の問題ですから。

-何としてもご満足いただけるシステムを実現しますので、また改めてお話を聞かせてください。


昭和32年まで稼働していた
鉄鋼炉。京浜工業地帯の発展を
支えてきた産業遺産です。

-とても個性的なミュージアムですから、いろいろと情報発信を続けると、ネットでも話題になりそうですね。今後は公開にも力を入れるお考えですか?

濱崎さん:もちろんです。当館には魅力的な資料がたくさんありますからね。どんどん増やしていきたいですね。

-点数も凄いですもんね。

濱崎さん:ええ。川崎に関する写真だけで6,000点、19世紀末のヨーロッパのものを含むポスターが1,500点、それに貸本時代のマンガや原画などもあります。昭和27年から平成9年まで、映画館で流された「神奈川ニュース映画川崎市市政ダイジェスト」というニュースフィルムもあります。

-それはまさにインターネット公開にピッタリですね! 提案のし甲斐がありそうです。副島さんのお仕事には、資料の管理方法の効率化を考えたいですね。収蔵庫のコンテナ単位の情報登録など、いかがでしょうか。

副島さん:現場で使えるシステムは良いですねえ。でも、回線が来ていないとダメなんですよね? iPadなどでデータが見れるようになるとよいのですが。

-まさに、いま検討している最中なんですよ。収蔵庫でも展示室でも使えるシステムに仕上げる予定です。

濱崎さん:情報システムはどんどん進化していきますねえ。これからは、「集合知」がミュージアムにとって重要なキーワードになってくると思います。たとえば年代と場所を指定したら学際的に資料・作品が検索できるようになると良いかな、と。

-そう言えば、動画の配信なども手掛けておられますよね。

濱崎さん:ええ。慶應義塾大学との共同研究で(http://volumeone.jp/?language=ja)、当館の活動記録を動画配信しています。ネットでの情報提供力を高めていきたいと考えています。ミュージアムは、鑑賞する場でもあるのですが、もう一つ、リサーチする場、アクセスする場としての機能をアップしていくことを目指していきたいです。

―それは素晴らしい発想ですね! 今日はたくさんのヒントをいただきました。ありがとうございました。

<取材年月:2011年6月>

MUSEUM PROFILE

川崎市市民ミュージアム
川崎の歩みを考古・歴史・民俗などの豊富な資料で詳説する博物館と、地域ゆかりの美術作品のほかポスター・写真・漫画・映画・ビデオなど近現代の表現を中心に紹介する美術館。1館で2つの側面を持つ、非常に個性的なミュージアムです。展覧会だけでなく、定期的な映像の上映会やコンサート/パフォーマンス、講座やワークショップなど、多彩なイベントを実施中。緑豊かな森に囲まれながら、地域の文化の薫りを満喫できる人気施設です。
ホームページ : http://www.kawasaki-museum.jp/
〒211-0052 神奈川県川崎市中原区等々力1-2
TEL:044-754-4500
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