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収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

日本の素晴らしい文化の数々を、もっと活かしたい。
そのためには、私たち美術館が頑張らなければ。
学芸員  小林 優子さん
学芸員  小林 優子さん

-先ほど見せていただいた国貞の錦絵、凄いですね。200年前の版画であの美しい絵が残っているとは。色彩のエネルギーを感じます。

小林さん:そうでしょう? 静嘉堂の国貞の錦絵は保存状態が極めてよいものです。日本人の色彩感覚の凄さを実感しますよね。

-いや、まったく。本当はもっとお聞きしたいのですが…本日は、I.B.MUSEUMのご利用館インタビューということで参りました。

小林さん:そうでしたね。でも、これまでの他館の皆さんのインタビューのように、お役に立つ話ができそうにないんです。

-…と仰いますと?

小林さん:収蔵品管理の機能がまだ使えていないんです。名簿管理用のシステムとしては活用しているんですけどね。

-……何か問題でも?(汗)

小林さん:いえ、そういうわけじゃなくて、すべての作品を網羅した目録がようやく完成したところなんです。だから、いまでもエクセルをメインに使っていまして。専用システムは、これから勉強するところという感じなんですよ。

-なるほど。では、導入された当時から現在までの流れをお話しいただいて、一緒に対策を考える、という感じで進めてみましょうか。


緑に囲まれた落ち着いた佇まい。

-まず、導入のきっかけから教えてください。

小林さん:早稲田さんは、収蔵品の免振用マットを取り扱っておられますよね。それを購入したことが御社との最初の接点だったようです。その時に「本業はシステムなんです」と伺って、導入の検討を始めた…と、当時の担当者からは聞いています。

-それで、まずは名簿の管理に使い始められた、と。

小林さん:はい。収蔵品はカードで管理する方法に慣れていたということもあるのですが、当時のI.B.MUSEUMはエクセルの情報を一括して登録することができなかったので、システム管理に移行しそびれたという事情もあったようですね。

-なるほど。現在は一括登録も可能なのですが、それを待つ間にエクセルの情報が充実してきたという感じでしょうか。

小林さん:そうなんです。加えて、当時のエクセルのデータも、すべての作品が網羅できているわけではなかったですし。最近、公益法人法の改正などを受けて目録を整備する必要が生じましたので、エクセルの目録が出来上がったところです。

-完成したエクセルのデータを一括登録する時が、新たな出発となるわけですね。でも、エクセルの表と紙のカードでの管理は、何かと不便じゃないですか? たとえば、展覧会の作品リストと、カードに追記する作品単位の履歴も、連携できないですし。

小林さん:確かに二重の手間がかかりますね。履歴はカードに書き足していますから。

-登録情報の連携はデータベースシステムの得意技ですから、目録が完成したら、とても便利な運用も可能になりますよ。たとえば、I.B.MUSEUMのデータを「収蔵品の電子カルテ」として使うとか。

小林さん:ただ、パソコンを収蔵庫に持ち込めないと、調書は手書きになりますよね。カードは小さくて扱いやすいので書き足していけばよいのですが、システムは書き足すたびにカード形式で出力することになりますよね。

-その一方で、ご多忙を緩和することも十分可能ですよ。たとえば、先ほど見学させていただいた感じでは、国宝をはじめ大変充実した作品をお持ちですから、貸出の依頼も多いのでは? そんな時は、作品ごとの貸出履歴を自動的に作成するような機能も使えますし。

小林さん:そうそう、貸出と言えば。作品だけではなくて、写真の貸出依頼も多いんですよ。同じ会社から何度も依頼があって、「去年の夏に借りたのと同じもの」という頼み方をされたりしたり。専用のリストを作って1年ごとに更新しているのですが、そういう作業も自動化できるのですか?

-もちろんです。写真の貸出については、最近、他館でもご要望が多んですよ。

小林さん:それは便利ですね。エクセルと互換性があれば、当館のみんなが喜んで使うと思います。あと、作品が出版物に掲載された履歴なども管理できるといいなあ…。

-ほら、活用方法が見えてきましたね(笑)。エクセルの目録が完成してI.B.MUSEUMに登録できた段階で、具体的に提案させていただきますね。


門から美術館まではちょっとした散策気分。

-ところで、今日は平日なのに結構な来館者数ですね。ご多忙というお話もよくわかります。

小林さん:今日はテレビ番組の影響もあったんですけどね。でも、多数の皆さんにご利用いただいていますよ。

-美術館が来館者で溢れていると、活気を感じますよね。

小林さん:そうですね。鑑賞する心を育むことも、私たち美術館員の仕事だと思いますので、そんなシーンを全国に広めたいんですけどね。ちょっと偉そうかな?(笑)

-とんでもない。まさしく、仰る通りだと思います。

小林さん:当館の展示作品を大切に思ってくださる方は、きっと他の館にも足を運んでおられるのでしょう。だとすれば、私たち美術館側も、館同士で有機的につながってくるようになれば、国全体の文化度を高めることにつながると思うんですけどね。

-素晴らしいお考えですね。最近は、目先の数字を稼ぐためのイベントを強いられる館も増えたと聞きしますし、そんな風潮を嘆く学芸員も、実は本当に多いんですよね。

小林さん:日本には素晴らしい文化がありますからね。先ほどご覧いただいた錦絵のように、江戸時代以前の画家などには、現代人には考えられないようなセンスやユーモア、精神性を感じます。それを伝えるのが、私たちが預かる作品ですし。

-本当に…全国の館を回ると、仰ることがつくづく実感できます。

小林さん:でも、美術館が単なるアミューズメント・スポットの枠に収まってしまうと、本来の存在意義を全うできなくなりますから、私たちがしっかり頑張っていかないと。

-そういう機運は、全国的に盛り上げていくべきですよね。

小林さん:きっと夢ではないと思いますよ。文化庁で受けた研修の同級生との付き合いがいまも続いているのですが、いつもこういう話で盛り上がっていますから(笑)。刺激し合って、いざという時に助け合える仲間は、きっと全国にたくさんいるはずです。

-このインタビューは、日本中の学芸員の皆さんにお会いする機会となっているのですが、毎回「この方々の交流が活発になれば、もの凄い文化力になるのに」と思うんですよ。

小林さん:その通りですね。もっともっと質の高い展覧会が日本中で開催されるように、システムの活用も頑張らないと(笑)。

-私たちシステム開発側は、単なる機能自慢の技術屋ではなく、それを補佐する役目を負うことをもっと自覚しなければなりません。本日は、改めてシステムのあり方を教わった気がします。ご多忙の中で貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

 

<取材年月:2010年8月> 

MUSEUM PROFILE

静嘉堂文庫美術館
岩崎彌之助・小彌太の父子二代によって設立された静嘉堂が創設100周年を迎えた1992年に開館した美術館。西欧文化の風が吹き渡った明治期、東洋の文化財の軽視と散亡を怖れた岩崎彌之助は、明治25年頃から本格的に収集を開始。その結果、国宝7点、重要文化財83点をはじめ、絵画、彫刻、書跡、漆芸、茶道具、刀剣など広範囲にわたる分野で多彩な作品群が収蔵されることになりました。豊かな緑に守られるように建つ美術館は、日本文化を愛する創設者の思いをも確実に受け継ぎ、訪れる人を悠久の旅へと誘います。
ホームページ : http://www.seikado.or.jp/index.html
〒157-0076 東京都世田谷区岡本2-23-1
TEL:03-3700-0007
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