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収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

博物館の役割を考えれば、情報管理は何より重要。
もうデジタルデータの整備は必須の時代だと思います。
学芸員 主査 谷口 栄さん
学芸員 主査 谷口 栄さん

-システムを導入されたのは2年前でしたね。その当時のお話からお聞かせいただけますか?

谷口さん:以前から「国民の共有財産をお預かりしている」という認識は強く持っていました。収蔵品を恒久的に保管し、有効活用を進めていくためには「今後はもうデジタルデータの整備が必須」と現場だけでなく、区の当局が判断してくれたんです。

-まさに正論ですね。でも、予算確保は大変だったでしょう?

谷口さん:自治体の予算には優先順位がありますから、予算申請が1回で通るほど甘くはありませんでした。課長も館長も一生懸命当局に何度も働きかけを行ってくれたので、認めていただいたんですよ。

-予算申請時はどんなアピールをなさったんですか?

谷口さん:博物館はただ存在しているだけでは意味がない、地域の皆様にいつでもご活用いただけるように情報を発信できる体制を作らなければ価値がない…という感じですかね。私としてはありのままを正面からストレートに訴えましたよ。でも私では力不足です。課長からのアドバイスもありがたかったですね。財政当局との詰めの折衝は館長がやってくれました。
 

-システム導入前は、紙の台帳で管理されていたのですか?

谷口さん:いいえ、当館の資料は全部で20万点ほどありますから、さすがに無理ですね。私の担当する考古分野では市販のソフトウェアを使用して、緊急雇用対策事業で作った簡易的なデータベースを運用していました。

-ふむふむ。考古分野は、数量や情報の把握が大変ですもんね。

谷口さん:ええ。たとえば、何かの破片(遺物)がたくさん発掘された場合、「ひとまとめとして1点」という管理では意味をなさないんです。その遺物の1点1点がどのように出土したのかということ自体がそれを使った人々の生活の復元をするのに重要な情報ですから、位置の情報まで三次元的に把握できるよう管理しなければなりませんから。

-簡易的なデータベースでは限界がありそうですね。

谷口さん:発掘調査は、ある意味で「破壊行為」の側面がありますから、その状態を正しく再現できる体制を確保することが何よりも重要になるんです。遺跡は調査したら2度と元に戻せませんからね。

-責任の大きなお仕事ですよね。頭が下がります・・・。


天文展示室。宇宙への夢が広がります。
-それだけ重要なデータベースですから、システム選びも慎重になりますよね。何か明確な選定基準がおありだったんですか?

谷口さん:大きく分けて二つの視点から考えました。一つは職員の使いやすさ、もうひとつは利用者側の使いやすさです。利用者のニーズは多様である上に、時代によって変化することを踏まえると、汎用性や対応力は大きなポイントでしたね。

-そんな中、I.B.MUSEUMをお選びいただいた理由は?

谷口さん:選定にあたってはプロポーザルを行い、提案内容を委員会を組織して比較検討しました。その結果、当方の求めた基準をきちんと満たしていたということです。コストも納得のいくものでしたので、あとは信頼性ですね。これは他館での実績を参考にさせていただきましたよ。

-ありがとうございます。実際の構築のプロセスではいかがでしたか?

谷口さん:スケジュール管理を工夫してくださったのが助かりましたね。大きなミーティングと分野ごとの打合せをうまく組み合わせて、話し合いの場をこまめに設定してくださったので、順調だったと思います。

-では、実際にお使いになってみてのご感想は? ご不満点はありませんか?

谷口さん:管理機能には概ね満足しているのですが、館内公開のバーチャル展覧会システムの編集方法がちょっと難しいかな? もう少し分かりやすいと嬉しいんですけどね。

-操作性ですね。さっそく改善を検討します。

谷口さん:よろしくお願いします。来年度は当館のイベント情報やデータベースを柱とした自前のHPを立ち上げることになっていますしね。

-そこが一つのゴールですもんね。頑張ります。


絵画のような天体の写真が並びます。

-インターネット公開では、どんな情報発信をお考えなのですか?

谷口さん:区のIT推進計画に盛り込まれている「博物館データベース公開」の方針に加えて、私たちも独自に「地域と子どもたちを結ぶデジタルミュージアム」というテーマを掲げています。館情報と収蔵品のデータベースの提供を2本柱に、充実した情報公開を実現したいですね。私の仕事は「かつしかデジタルミュージアム」というレール作り。インターネット公開に向けては担当の職員の配置も予定されており、今後は裏方にまわって支えていきたいと思っているんです。

-テーマの内容を具体的に教えていただけますか?

谷口さん:「開かれた博物館」「来館者の増加」「学校との連携」「活性化とアイデンティティの継承」という4つの目標を挙げています。実際に博物館に行ってみたいと思っていただけるようなWebサイトに仕上げたいですね。やっぱり、多くの人に館に足を運んでいただきたいですからね。

-それは楽しみですね。特に「学校との連携」については、他館でも重要視されるケースが増えていますし。

谷口さん:地元の学校によく出前授業に行くのですが、そのとき子供たちから、「どうやったら調べられるの?」という質問を受ける機会が多いんですよ。子どもに対しての学習情報を提供するのはもちろん、先生方に対しても教材開発材料を提供できる機関になりたいと考えています。

-素晴らしいビジョンですね。子どもたちもきっと足を運んでくれるでしょう。

谷口さん:インターネット公開が実現したら、次は携帯電話の活用など、いろんな道にチャレンジしてみたいですね。デジタルデータ整備の事業は、博物館が時代の流れに歩調を合わせる出発点となると思いますよ。

-多くの館にとってもヒントになりそうですね。では、これからデータベースの整備に着手される館に、アドバイスをお願いします。

谷口さん:私たち博物館には、国民の共有財産を大切に保管し、活用するという使命があります。職員には定年も異動もありますから、誰もがわかる形で次の世代に継承できる環境を整えるのは当たり前のことです。博物館は次世代への橋渡しをする装置であり、情報管理はその根幹と言えます。どんな仕組みや機能が必要なのかに悩んだら、そのあたりを議論していけば自ずと答えは出てくると思いますよ。

-本質的な部分に目を向ける、ということですね。私たちも、大切な仕事をお任せいただいているという点で、身が引き締まります。本日はありがとうございました。
 

<取材年月:2010年3月>

MUSEUM PROFILE

葛飾区郷土と天文の博物館
郷土博物館と天文博物館が一つになった葛飾区の博物館。光学式プラネタリウムに加え、人類が観測できる最も遠い137億光年彼方の宇宙まで表現可能という日本初の機能を搭載する「デジタルプラネタリウム」の導入でも話題を集めています。昭和30年代の葛飾の家や工場をそのまま再現したコーナーや楽しい郷土のフロアも人気が高く、音楽の生演奏会や天体望遠鏡での観察会などイベントも豊富で、老若男女から親しまれる地元の名物館です。
ホームページ : http://www.city.katsushika.lg.jp/museum/
〒125-0063 東京都葛飾区白鳥3-25-1
TEL:03-3838-1101
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