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収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

収蔵品管理は、「継続していく」ことが前提。
コレクションの傾向を十分に踏まえてデータを作っていくことが大切。
学芸員 宮崎 治さん
学芸員 宮崎 治さん

-宮崎さんは、2つの施設でI.B.MUSEUMをお使いいただいているとか。

宮崎さん:そうなんですよ。99年の当館の開館直前に導入しまして、2003年には歴史資料館でもI.B.MUSEUMを導入させてもらいました。そのあと、2004年に当館に戻ってきまして、引き続き使わせてもらっています。
 

-ご愛用ありがとうございます。では、まず最初の導入の時のお話から…。

宮崎さん:開館の際、ハイビジョンシステムを導入したのですが、I.B.MUSEUMはその一部という位置づけだったと記憶しています。

-ハイビジョンで使う情報を、事務室で管理するシステムとしてお選びいただいたわけですね。他の管理システムとの比較の上で検討されたんですよね?

宮崎さん:ええ。ハイビジョンシステムとの連携を条件に、実績や安定性、経済性の面に注意して比較したと聞いています。こうした点のほか、I.B.MUSEUMは「操作を事前に評価できる」という部分も好印象だったと記憶しています。

-なるほど。収蔵品管理システムを開館と同時に導入したというお話は、このインタビューでも皆さんからお聞きしています。それでなくても多忙な開館時に、慣れないシステムを操作してデータを整備するのは、大変な作業ですよね?

宮崎さん:もちろん大変ですが、ウチの場合は開館が若干遅れましたので、結果的に「その期間を活用する」ことになったんです。導入前に、Excelに部分的にデータを蓄積しておいたので、準備はある程度進んでいましてね。お陰様で、開館の年には1200点ほどの収蔵品について、画像と基礎情報の登録を完了できましたよ。

-それはすばらしいですね。その後も、I.B.MUSEUMはお仕事に溶け込んでいくことができましたか?

宮崎さん:携わる職員全員の努力があって、ほぼ全作品、画像などの基本的なデータはデータベース化を完了しています。毎年100~200点ずつ登録して、ぜんぶで1900点くらいになりました。特に画像データは大切ですので、着実に取り組んでいます。

-理想的な流れですね。他館にもご参考としていただけると思います。


広々とした庭に、
やさしい色調の建物が溶け込みます。

-とは言え、10年近くお使いいただいている計算になりますから、ご不便をおかけしたこともあるのでは?

宮崎さん:2年ほど前、OSのバージョンアップに対応して改修をお願いする前は、少し不便だったかな? 前のシステムが遅くて、不安定なところがあって。

-不安定というと、システムとしては大問題ではないですか!

宮崎さん:いや、それは仕方のないことだと思いますよ。Windows95の時代のパソコンを使っていたわけですから。マシンのスペックなどが今とは比較になりませんから。改修後は、早くなって安定しましたし、現在はとても快適ですよ。

-ありがとうございます。他に気になるところは? たとえばサポート体制とか。

宮崎さん: 早稲田さんが大分の会社で、常にお越しいただければいいのですが(笑)。東京からでは難しいので、これまではリモート保守をお願いしていました。その意味で安心でしたね。ただ、予算が厳しい中、今後もできるかどうかは分かりませんが。それと、早稲田システムさんの担当者が途中で替わり心配しましたが、特に支障もなく、運用させていただいています。

-それは良かった。では、今回は安心して、恒例の質問をば。I.B.MUSEUMは100点満点で何点ほどいただけますか?

宮崎さん:90点はつけられるでしょう。

-ありがとうございます! では、今後のためにも、10点分の課題を教えていただけますか。

宮崎さん:初めて導入した頃は、職場に一人1台のパソコンがない時代でした。その後、急速に普及して、マシンスペックも上がって、誰もがパソコンに慣れてきましたよね。どんどん便利になっていますから、どうしてもI.B.MUSEUMが古臭く見えてしまうことがあります。まあ、専門システムですし、仕方のないことなんですけどね。

-インターフェイスとか、サポート機能とか、そのあたりのお話ですね。いま、当社でもあれこれと研究中でして。

宮崎さん:それと、運用開始から何年も経つと、求めるものが違ってきます。そうした変化をあらかじめ想定する柔軟さがあると良いですね。たとえば、個人情報に関する考え方などは、導入当時とまったく違ってきましたから、システムの設計思想とどうしても乖離が出てきてしまいますよね。

-なるほど。社会的な空気そのものが変化する中で、当時のシステムを使い続けてくださっているというのは、運用面で工夫していただいているんでしょうね…。

宮崎さん:あるにはありますよ。でも、こういうものは、基本的な機能と、継続が大切ですからね。

-職場を移っても、それぞれの場所でデータベースを受け継いでいらっしゃるお立場ですから、とても重みがありますね…。

宮崎さん:それでも、汎用ソフトを使うよりは、さまざまなメリットがあると思いますが。

-そう言えば、最近、汎用ソフトを使うよう指示を受けたという館が、逆に増えた気がします。そのあたりに、ご意見はありますか?

宮崎さん:単に記録するだけなら、市販のソフトで良いでしょうね。でも、「収蔵品の情報として」管理するなら、専門システムがなければ難しいんじゃないかな? 代表的な汎用データベースソフトを使ったこともあるのですが、画像の扱いで大変苦労しますし、素人が作って使うとどうしてもさまざまな面で支障が出やすいと感じました。セキュリティやソフトの機能の見落とし、変更箇所の把握などといったことで。データベースについて、本当に詳しい専門知識がない私たちが、継続的にデータを守っていくことは、なかなか難しいと思います。

-なるほど。いかに安全に継続させるかということですね。


市内を一望できる庭では、大きな象の
お出迎え。自然と期待も高まります。

-順調に整備されてきたデータベースですが、今後の目標は?

宮崎さん:ほぼ全作品をデータベース化しているとは言え、画像と基礎情報だけですから、これからはできるだけ中身を充実させていきたいと思っています。著作権周りの情報なども、今後は必須になっていくでしょうしね。

-確かに、今後は管理精度が問われる時代になりそうですよね。では、最後に、これからシステムを導入される方へアドバイスをぜひお願いします。

宮崎さん:そうですねえ。分類やカードの作り方にしても、「自館の傾向を十分に踏まえながら仕様を考える」という感じでしょうか。

-基本的なことのようにも思いますが、何かご苦労のご経験が?

宮崎さん:正直、歴史資料館のシステムづくりが大変だったんですよ。本当に幅広い資料がありましたから、「欲張りすぎてはダメだな」ということも実感しました。基本的な機能をどれだけ、どう使いこなしていくのか、また、各館それぞれに特色あるコレクションも多いですから、その調査研究、情報提供のあり方などもできるだけ考えながら、必要で的確なシステム作りをじっくり展望することが好ましいでしょうね。加えて、貸出や収集など種々の業務の上で、紙のカードや画像といったさまざまな記録が関係してきますから、それらとの相互補完のあり方にも十分留意すべきだと思います。

-なるほど。二つの館のデータベース化を成し遂げられただけに、勉強になります。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。


<取材年月:2007年9月>



本稿でインタビューにご協力くださいました宮崎治さんが、去る平成25年12月12日に急逝されました。
博物館界のIT化が今以上に遅れていた時代に、歴史資料館と美術館という性質の異なる2つのミュージアムで情報化にご尽力になり、見事これを成し遂げられた生前のご功績は忘れようにも忘れられません。ご発言からもお人柄をお感じ取りいただけるかと存じますが、お仕事では労を厭わず、それでいて周囲への気配りにも長けた実直な方で、その真摯なご姿勢には弊社もおおいに学ばせていただいただけに、突然の訃報が残念でなりません。ご逝去を悼み、謹んでご冥福をお祈りいたします。


MUSEUM PROFILE

大分市美術館
大分市街から別府湾や高崎山、由布岳の眺望を楽しむことができる上野丘公園。大分市美術館は、この人気スポットに溶け込むような設計が施されており、文化施設であると同時に市民の憩いの場としても知られています。温かみに溢れる彫刻の出迎えで、入る前から期待感が盛り上がるような光景が広がり、訪れる人への配慮が行き届いていることを予感させてくれます。館内では、国指定重要文化財の田能村竹田の豊後南画や髙山辰雄の日本画など、市ゆかりの作家作品を中心に幅広く展示。名実ともに「大分市の名所」のひとつです。
ホームページ : http://www.city.oita.oita.jp/ja/index.html
〒870-0835 大分県大分市上野865
TEL:097-554-5800
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