HOME > Voice & Report TOP > ミュージアムインタビュー TOP > vol.134 上島町教育委員会

収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

SNSなどをうまく活用して認知を広げながら
配信情報のさらなる拡充を目指していきたいですね。
学芸員 有馬 啓介 さん
学芸員 有馬 啓介 さん

-昨年度に「上島町デジタルアーカイブ」を構築されたほか、関連講座を開催するなど、デジタルデータの作成・蓄積・公開にはとても熱心に取り組まれていますね。今日は、そのあたりの話をお聞きできればと思っています。

有馬さん:分かりました。何でもご質問ください。

-ありがとうございます。では、さっそくですが、最初のきっかけからお聞かせいただけますでしょうか。

有馬さん:町の企画政策課から「デジタルアーカイブをやってみたらどうか」と声をかけていただいたのが始まりですね。地方創生の予算で、「文化財を材料に事業を考えてみないか」とお声掛けいただいて。

-なるほど。出来上がったデジタルアーカイブは、写真や映像などバラエティに富んだ内容に仕上がっていますが、当初は民俗資料カードのデジタル化のお話だったんですよね。

有馬さん:そうなんですよ。民俗資料については、平成24年度の雇用関係の事業で紙ベースのカードを作成していましたので、これをデジタル化して公開するというのが、もともとの主旨でした。台帳を起こすところから始めると時間的に厳しいタイミングでしたので。

-島ごとに分かれていると、台帳整備も「ちょっと行ってきます」という感じではできませんよね。

有馬さん:ええ、すべての島が橋でつながっているわけではありませんからね。行き来するだけでも大変な上に、島ごとに資料や文化財の管理体制がまちまちですから、手間はかかりますね。

-やむを得ないところですよね…。

有馬さん:台帳を云々する以前に、資料を収蔵スペースに置くのが精いっぱいですから。平成25年度に私が採用されたのも「まずはきちんと調査しないと」という理由でしたしね。

-え? 有馬さん、こちらのご出身ではなかったのですか?

有馬さん:出身は山口県ですよ。こちらに着任する前は、民間企業で鳥取県の発掘現場にいました。

-そうだったのですか。広報誌に郷土史で連載をお持ちでしたし、すっかり地元の方かと思っていました。


-上島町デジタルアーカイブの話に戻しますね。民俗資料カードのデジタル化が目的だった当初のイメージからすると、完成品は予定とはかけ離れたものになりましたね。もちろん、良い意味で。

有馬さん:そうですね。最初は、図書館の蔵書検索のようなイメージでしたから、予定とはかなり異なりますね。

-打ち合わせでお邪魔した時のことを覚えているのですが、展示の準備用に地元の古い写真パネルを広げて「ついでにこれもやろう」という話になっていましたよね。

有馬さん:そうでしたね。あれが転機だったかもしれません。

-そこから、古い写真はもちろんのこと、カメラマンに滞在してもらって風光明媚な島々の今の写真をアーカイブしたり、ドローンの空撮映像をサイトトップに持ってきたり…と裾野が広がりましたね。

有馬さん:かなり意欲的なサイトになりました。特に古い写真は、住民の皆さんからの関心も高いんですよ。

-あぁ、それは嬉しいですね…。

有馬さん:そうなんですよ。あと、地元のケーブルテレビの映像を見られるようにしたのも良かったですね。権利処理を進めて、閲覧できる映像をもっと増やしていきたいですね。

-映像の権利処理って、やはり大変なんでしょうか。

有馬さん:結構大変ですよ。BGMを例に取ると、ケーブルテレビの番組として使うための許可は取ってありますが、インターネットで公開するとなると別のようなんですよね。やむを得ず音楽を外す方向に編集することもあります。

-それは大変そうですね…。でも、若い方が移住されるケースも増えているそうですし、今後はこうした情報の配信が大事になってきますね。

有馬さん: SNSなどもうまく活用しないといけないですしね。同時進行で、データをもっと充実させないと。個人的には、文献とか考古資料といったジャンルを拡充していきたいんですけどね。あと、指定文化財とか。

-文献資料はまだ運びやすいと思いますが、それぞれの島に点在する考古資料は、集めるだけでも大変そうですが。

有馬さん:ええ、データの充実の前に遺物整理を進めなければなりませんね。でも、この4月から職員が一人増える予定ですし、頑張りますよ。

-指定文化財には、どんなものがあるんですか?

有馬さん:国指定のものとしては、室町時代の建物が2棟あります。あと、エジル石閃長岩という県指定の天然記念物がありまして。これはリチウムを含むとても珍しい鉱物で、世界で初めて発見されたそうですよ。

-すごい、それは面白そうですね!

有馬さん:あと、岩城島にある上島町岩城郷土館は、若山牧水と親交のあった三浦家の建物を利用させてもらっているのですが、昭和50年代から展示が変わっていないんですよ。

-え、そうなんですか。30年以上ですよね?

有馬さん:ええ。普通の自治体は博物館や資料館といった展示スペースがあって、そこに所蔵されているものをデジタル化しますよね。ウチは逆で、先にデジタルで公開して、皆さんに関心を持ってもらうことで展示スペースの整備につなげていければいいな、と。

-たくさんの人に魅力が伝われば、実現が近づきそうですね。その分、デジタルアーカイブの役割も重要になると思います。


-「上島町デジタルアーカイブ」は、専門家だけでなく一般の方々にもご覧いただきやすいデジタルアーカイブとして、これから注目されるのではと思っています。そんな中で、有馬さんご自身の「今後に向けての展望」は?

有馬さん:あ、ちょうど現在進行している調査事業がありましてね。これをうまく絡められたらと思っているんです。

-どんな調査でしょう?

有馬さん:上島町の「製塩遺跡」について、というテーマなんですけど。

-製塩の遺跡、ですか?

有馬さん:中世のこのあたりの島々は、京都の東寺や石清水八幡宮の荘園で、特に弓削島は、東寺に塩を納めていた「弓削島荘」という塩の荘園だったんですよ。これについて、平成31年度までかけて、文献資料や埋蔵文化財、美術工芸品など7つの分野に分けて総合調査を行っているんです。

-それは興味深い調査ですね。個人的にも興味があります。

有馬さん:皇太子殿下がお越しになったこともあるんですよ。中世の荘園や海運などをお調べだったようです。

-それはすごい! その製塩遺跡の総合調査、成果物を保存・公開する器として、上島町デジタルアーカイブは最適ですね。データベースはジャンルやデータ量が増やせますし、サイトもジャンルを増設できますし。

有馬さん:調査の記録と一緒にデータを充実できて、一石二鳥ですよね。

-いえいえ、それをサイトの「上島Stories」に書いていただければ、一石三鳥になりますよ。

有馬さん:確かに。それはいいですね。

-準備ができそうなタイミングで、またご相談いただければ。本日はお忙しい中、ありがとうございました。

<取材年月:2018年2月>

MUSEUM PROFILE

上島町教育委員会
上島町は、愛媛県の北東部、広島県との県境に位置し、穏やかな海と多島美が町の大きな魅力。中世には京都東寺や石清水八幡宮の荘園となり、年貢として塩を納めました。江戸時代には、瀬戸内海航路の要衝として、商業や廻船業で賑わいましたが、特に岩城島は松山藩東端の重要港として整備され、港の近くには島本陣が置かれたそうです。その後、造船業を中心に発展。現在は第1次産業も盛んで、自然豊かな美しい町を形成しています。
ホームページ : http://www.kamijima-archive.jp/
〒794-2520 愛媛県越智郡上島町弓削佐島583番地
TEL:0897-77-2128
資料のご請求はこちらへ。 — 美術館・博物館向け収蔵品管理システムから、実務に役立つ読み物まで。

PAGETOP