HOME > Voice & Report TOP > ミュージアムインタビュー TOP > vol.133 公益財団法人 阪急文化財団

収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

より多くの方々に、その資料の特徴にあった見せ方で。
博物館資料は、積極的なキュレーションが重要。
学芸員/博士(文学) 正木 喜勝 さん
学芸員/博士(文学) 正木 喜勝 さん

-本日は、大好評の「阪急文化アーカイブズ」の構築についてお話を聞かせてください。正木さんはプロジェクトの中心役を担われたわけですが、いつご着任になったのですか?

正木さん:2013年4月ですね。それまで演劇の研究をやっていて、3年ほど大学で助教をしていました。

-今回のアーカイブでも、宝塚歌劇のポスターがたくさんありますから、ちょうどご専門の分野もあったわけですね。何でも、アーカイブの構築前に、二つの組織が統合されたとか。

正木さん:ええ。池田文庫と逸翁美術館の運営が阪急文化財団として一体となりました。宝塚歌劇のポスターは池田文庫が管理していて、もともと検索もできたんですが、機器が老朽化してきたこともあって、逸翁美術館が使っていたI.B.MUSEUM に統合するという話が持ち上がったんですよ。池田文庫には図書以外にもさまざまな資料がありますから、それを一元管理したいという側面もありました。

-なるほど。図書は図書システム、それ以外は収蔵品管理システムということですね。アーカイブ以前に、管理面が発端だったわけですね。

正木さん:そうですね。「よりよい公開は、きちんとした管理があってこそ」という考え方がありました。

-I.B.MUSEUM の改修でも開発期間をかけていらっしゃいましたが、そういうことだったのですね。納得です。


-個人的に、阪急文化アーカイブズの路線図からポスターを検索するのが好きでして。関西出身ですので、実家や出身大学の最寄り駅なんかで検索すると、もうずっと見てしまいます(笑)。

正木さん:ありがとうございます(笑)。どなたでも入りやすい検索サービスを提供したいということで、路線図もアイデアのひとつでした。地図でもよかったかもしれませんけどね。

-いや、路線図が楽しいと思います。なぜかワクワクするんですよね。

正木さん:普通の地図なら「A地点の資料」になりますが、路線図で表現することで、電車に乗るときに見たものという「移動」がイメージされるということもあるんでしょうね。

-なるほど、確かにそうかも。

正木さん:路線図なら、ウチの資料の特性を活かせますしね。

-仰る通りですね。ほかの館の方からも「阪急さんらしくて楽しい」と言われるんですよ。

正木さん:そうなんですか、それは嬉しいですね。広く公開するからには、皆さんに「見たい」「楽しい」と思っていただけるものにしたかったので。

-想定するユーザ層の広さも重要ですよね。

正木さん:あとは、「こちらから提示すること」も。これは、やるべきかどうか、少し迷ったことでもあるんですが…。

-どんなことですか?

正木さん:トップページの検索ボックスの下に、キーワードを定期的に入れ替えて例示しているのですが、今そのうちのひとつに「震災」という単語があるんです。

-なるほど…。

正木さん:これを入れていいものかどうか、とても迷いました。でも、阪急文化財団が阪神・淡路大震災の関係資料を所蔵しているって、一般には思いつきませんよね?

-確かに、それは想像しないかもしれませんね。

正木さん:あの当時の電鉄や沿線のポスターを見ると、震災の被害で一部区間が不通になっているというお詫びや、周辺施設が閉鎖している旨のお知らせ、復旧して開通するお知らせなどが残っているんですよ。

-災害と復興の大切な記録ですよね…。

正木さん:ええ。そういう資料があることは、このアーカイブに精通している者しか知らないわけです。だとしたら、ご存じない方のために、こちらからきちんと提示することも大切なんじゃないかな…と。

-そう思います。専門家のキュレーションがあって、初めて気づくことはすごく多いはずですし。

正木さん:そうなんですよね。図書資料は客観的な情報が重要ですが、美術館や博物館の資料はもう少し積極的なキュレーションが重要になるように思います。


-さて、大幅に改修したI.B.MUSEUM ですが、気になるところはありますか?

正木さん:「管理システムの画像がもう少し大きく表示できたらいいのに」と思うことはあります。ベテランなら今の画像サイズでも探している資料をすぐに特定できると思いますが、頭に入っていないと詳細を見て判断することになりますから。

-確かに、もう少し大きい方が見やすくなりますね…(メモ)。

正木さん:あと、役者絵はセットで表示させたいものが多く、それを上手く表現できたらいいかなと思います。ちなみに、「年間5000点のデータを新規登録しよう」という目標を立てていまして、今年度はクリアすることができたんですよ。

-それは素晴らしい。なかなかできることではないと思います。

正木さん:みんなで手分けして写真を登録するときも、システムが番号を振ってくれて重複することがありませんから、作業が効率的になりましたね。職員同士の情報共有も進みましたし、梅田の阪急百貨店で「小林一三ワールドII」展を開催したときには写真探しに大活躍でしたよ。

-それは何よりです。公開側はいかがですか?

正木さん:先ほどの路線図からの検索がそうなのですが、スマートフォンでの表示が課題ですね。閲覧者の割合は、スマホ&タブレットの方がPCを上回ってきていますから。

-路線図以外はレスポンシブ対応ができていますから、なおさらですよね。全体的な評判はいかがですか?

正木さん:Twitterなどで見ると、ポスターに対して予想以上に「懐かしい」という声が多いですね。

-ですよね(笑)。

正木さん:私は「出来事の記録」として、あるいはデザインを中心に見ていたのですが、これほど人々の記憶を刺激し、喜んでもらえるものだとは思っていませんでした。懐かしく感じていただける年代の資料を公開できてよかったと思います。

-なるほど。一番懐かしがるのは、私の世代かもしれません。

正木さん:あとは、演劇を年表スタイルで表現するとか、演目ごと、公演ごとに表現できるようになれば、実際にその舞台をご覧になった方なら懐かしさもひとしおになりますよね。

-ポスターの表現に路線図を用いた手法ですね。

正木さん:そうですね。写真も絵はがきも、その資料群の特徴にあった見せ方があると思いますから、それが実現できたらいいですね。

-特徴にあった見せ方…重要なお話ですよね(メモ)。

正木さん:あとは、もっと多くの方々に見ていただけるように、SNSでの発信などで工夫を重ねていきたいと思います。

-いまでもアクセスは多いのでは?

正木さん:閲覧数のデータを見ると、サイトを公開した直後のほか、宝塚歌劇の専門チャンネルでアーカイブズが取り上げられたときに大きく跳ね上がって、それ以外は少し平たんなんです。もっと情報を届けていきたいですね。

-目標を高く設定されていますね。そうした姿勢を貫いておられるからこそのご成功だと思います。私たちも見習って、次の一手を考えてまいります。本日はありがとうございました。

<取材年月:2018年2月>

MUSEUM PROFILE

公益財団法人 阪急文化財団
逸翁美術館、小林一三記念館、池田文庫の3館を運営する公益財団法人です。逸翁美術館は阪急電鉄の創業者・小林一三(雅号 逸翁)が収集した約5,500点の美術工芸品を所蔵し、小林一三記念館は自邸の洋館「雅俗山荘」を中心にその生涯と実績を紹介。池田文庫は、阪急電鉄のほか宝塚歌劇・歌舞伎・民俗芸能などの演劇に関する資料を収集する専門図書館です。美術館内のマグノリアホールでは年間70回以上のコンサートを開催しています。いずれも大阪府池田市の住宅街にあり、地域文化を大切に守っています。
ホームページ : http://www.hankyu-bunka.or.jp/
〒563-0058 大阪府池田市栄本町12-27
TEL:072-751-3865
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