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収蔵品管理システム I.B.MUSEUM 導入ミュージアムインタビュー

ミュージアム名

作品情報の発信は、美術館が市民の中に飛び込む手段。
ネット公開で思わぬチャンスも生まれますよ。
学芸員 河西 見佳 さん
学芸員 河西 見佳 さん

-現在、I.B.MUSEUM SaaSにデータをどんどん登録している最中のようですね。ご導入のきっかけは?

河西さん:当館では、長く紙の台帳を使っていました。開館時の所蔵作品は250点ほどだったのですが、2007年に数千点の寄贈を受けましてね。私が着任したのは、その直後ぐらいだったと思います。

-いきなり数千点の台帳づくりですか…。大変だったでしょう?

河西さん:そうですね。でも、当館が中心的に扱っている武井武雄の作品は、裏側に武井自身の書き込みがあるんです。作品名のほかに、「何年何月のキンダーブックに掲載」といったデータまで書いてあるんですよ。もちろん、実際の掲載誌を確認してから台帳に記載するんですけどね。

-なるほど。でも、個別に裏付けを取るとなると、かなり時間がかかりますよね。

明るく、温かい色合いの外観。

河西さん:武井は、童画作品のほかにも、たとえば湯呑みまで自作していますからね。この数になると、アナログな方法では厳しいです。

-目録づくりだけでも大変そうですが、寄贈されたものは市の財産なので、データづくりは必須だし。

河西さん:というわけで、管理システムの導入は避けて通れなかったのですが、データの記録媒体が問題でした。長く残すことが前提ですから、機器やデータ形式にできるだけ依存しないものにしたかったんです。

-なるほど、そこでクラウド型のシステムを選択された、と。そう言えば、先日も一括登録の操作について、ご質問をいただきましたね。

河西さん:あの機能は本当に便利ですね。このデータ量ですから、あれがなければ心が折れていたかもしれません(笑)。

-機能のご質問をいただくだけでも、頑張っておられる様子が伝わってきますよ。

河西さん:でも、「本当にやりたいこと」には、まだまだ遠いんですけどね。

-システムを使って本当にやりたいこと? 何でしょう?

河西さん:インターネット上で作品情報を公開するのが、システム導入の本当の目的なんです。企画展やワークショップを通じて広報に努めていますが、まだ足りません。こんなに素晴らしい作品があることをもっと広く知らしめるなら、やはりインターネットですよね。

-仰る通りですね。

河西さん:私自身も、当館の採用に応募する時にホームページを見たのですが、どんな作品を所蔵しているのか分からなかったんです(笑)。情報発信力の弱さを自分で体験したので、ぜひ解決したいんですよね。

-そのご姿勢こそが、いまミュージアムに求められることだと思います。ぜひ頑張ってください。


入り口のラムラム王がお出迎え。

-ネットと言えば、フェイスブックもお使いですね。ワークショップの楽しそうな様子が伝わってきて、読んでいてとても気分がいいです。

河西さん:いつも「いいね!」を押してくださってますよね(笑)。ありがとうございます。

-ソーシャルメディアの効果については、いかがですか?

河西さん:学芸員が地域の方々と「繋がる」機会って、ご来館時を除くとほとんどないんですよね。だから、Twitterやフェイスブックは、皆さんのお声がダイレクトに聞ける「接点」として、とても便利だと思います。

-なるほど。具体的な効果はありましたか?

河西さん:ええ。たとえば、毎週末に開催しているワークショップですが、人数が少ない中でフル回転で用意していると、外部から見てその催しが魅力的なのかどうか、分からなくなるんです。フェイスブックで公開すると、どう受け止められているかについて把握できますから、客観的に判断できますよね。

-それは良いお話ですね(メモ)。確かに、バックヤードの様子もアップされてますよね。

河西さん:準備作業の様子などは、興味をお持ちいただきやすいみたいですよ。ワークショップの様子は、動画で生配信したこともあるのですが、あれは反応が良かったですね。

-それはすごい! すっかり先進館という感じですね。

河西さん:これからの美術館は、ご来館を待つだけではダメだと思うんです。情報発信は、美術館が市民の間に飛び込んでいくため手段と言うか。皆さんの身近な存在になるには、まず作品の魅力を知っていただかないと。

-「市民に飛び込む」というのは、素晴らしいフレーズですね! ソーシャルメディアと作品データベースの公開をうまく融合できると、なおいいですね。

河西さん:そうそう、そうなんです。でも、そのための時間がなかなか取れなくて。ほかの館の皆さんはどうなさっているんですか?

-詳細な作品情報を大量に公開している事例は、やはりまだ少ないです。データが整ったものから少しずつアップしている館が多いですね。

河西さん:少しずつ、ですか。

-ええ。たとえば「今日は5点分のデータ整備が完了したのでアップしました」と、フェイスブックで告知するんです。アップするたびに「いいね!」がもらえるでしょうから、データ公開の作業自体が楽しくなるのでは?

河西さん:それ、いいですね! ぜひやりたいです。

-データを一度に公開するより、少しずつの方が、作品情報を丹念に見てもらえるはずですしね。ぜひチャレンジしてみてください。


楽しそうなイベントが目白押しです。

-作品情報をじっくり見てもらうためにソーシャルメディアを使うのは、新しい活用法になるかもしれませんね。

河西さん:そう言えば、先日もドイツの出版社から問い合わせいただいたんですよ。インターネットで作品の情報を発信すると、思わぬチャンスも増えてくると思います。

-I.B.MUSEUM SaaS なら、英語で発信する機能もありますから。

河西さん:え、そうなんですか?

-つい先日、新機能としてリリースしました(笑)。

河西さん:うわあ(笑)。頑張らなくっちゃ。

-では、後に続く館の皆さんに、アドバイスがあれば。

河西さん:「このシステムをうまく使いこなせば、職員1人分くらいの働きはしてくれますよ」という感じでしょうか。時間を空けることができるので、その分を企画やイベントづくりに使えますよね。使ってみると、システムって、情報を残すこと以上に、館を元気にするためのものなのかもしれないな、と。

-……(メモ中)。

河西さん:最近、当館に遊びに来てくれた子どもたちを見ていると、美術館という施設の敷居を低く感じてくれているような気がするんです。中には、大きくなっても美術館好きでいてくれる子もいるんじゃないかな、と。

-……(メモ中)。

河西さん:彼らが大人になった時、「システムで検索して、お目当ての作品を見に美術館に通う」人が増えているはずです。そう考えると、私たち学芸員がシステムを使いこなすことこそ、日本中に美術館好きを増やすことに繋がるはずだと思うんです。

-(メモ終了)いまのお話、そのまま全国の館の皆さんにお話しして、仲間を集めたいと思います。本日は元気の出る話をたくさんお聞かせいただき、ありがとうございました。

<取材年月:2013年4月>

MUSEUM PROFILE

イルフ童画館
「子どもの心にふれる絵」の創造を目指して『童画』という言葉を生み出した岡谷市出身の武井武雄の童画・版画・刊本作品を中心に展示する美術館。イルフという名称は、武井武雄が「古い」という言葉を逆に読み、新しいという意味をつけたもので館の愛称です。大正から昭和にかけてのレトロで心に染みる武井の世界を堪能でき、毎週末に催されるイベントもいつも大賑わい。街じゅうに「ラムラム王」が飾られた童画の街・岡谷のランドマークです。

フェイスブック:https://www.facebook.com/ilfdougakan
ホームページ : http://www.ilf.jp/
〒394-0027 長野県岡谷市中央町2-2-1
TEL:0266-24-3319
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